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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
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呪われし血の少女……①

「アエル様は最後の『血統裁定官』なのです」


 血統裁定官……って、それが事実なら制度が廃されたのはオレの生まれる以前の話だから、いたいけな少女に見えるアエルはオレよりずっと年上ってことなのか。

 いや、見た目が変わらない種族なら何百歳ってことも有り得る。


 でも、待てよ。

 オレはジルコークに視線を向ける。


「ジルコークさん、そういうあんたは何者なんだ? 今まで聞いてきて、やけに事情に詳しいように思えるんだけど」


 オレの疑問にジルコークは驚いたように言った。


「おや、最初に話しませんでしたかね。それは申し訳ないことをしました」


 ジルコークは姿勢を正すと告げた。


「私は元々中央大神殿で正神官の職に就いていました。さらに『血統裁定官』を管理する部署の統括する立場にあった者です」


 正神官だって……?

 それって、大神殿の上から3番目の役職じゃなかったっけ。


 確か、帝都で会ったパティオが現在の大神官に就く前の役職で、けっこう地位の高い役職だったはずだ。大神官はもとより、上手く推挙されれば大神殿トップの聖神官になることも夢じゃないポストだと思ったけど。


「何で、そんな偉い人がこんなところに……」


「決まっています。アエル様のためです」


「え?」


 ジルコークの言っている意味が理解できず、オレが更なる説明を求めると、彼は懐かしむような口調で話してくれた。


 要するに『血統裁定官』の抹殺を大神殿上層部が決定したとき、自分の管理下にあったアエルを策略を用いて逃がしたのだそうだ。

 そして、時期を見て円満に職を辞すと北方大神殿と密かに接触を図った。アエルの身柄を中央大神殿から護るには、どうしても北方大神殿の庇護が必要だと思ったからだ。


 と言うのも、当時の北方大神殿は『血統裁定官』の抹殺には反対の立場を取っていた。国際貿易港があるという立地と自由な気風から他民族との混血が多かった当時のカンターレ市(現アリスリーゼ市)では『血統裁定官』の有用性が重視されていたせいだ。

 にも関わらず、北方大神殿はある事情により『血統裁定官』を失っており、一人の『血統裁定官』も有していないという状況に陥っていた。


 なので、彼らが『血統裁定官』の廃止に否定的なのは当然と言えた。

 そんな経緯もあり、表向き中央大神殿の意向に従う素振りを見せながら、ジルコークの提案を歓迎し、ジルコークとアエルを密かに匿うことを了承したのだ。


 そうか! それで北方大神殿の聖騎士であるエルトヴァイトがここに派遣されていたのか。

 やっと、理由がわかってスッキリした。


 おそらくアエルの正体は知らされていなくて、ただの要人警護の任務とエルトヴァイトは信じているのに違いない。


「私とアエル様が潜伏生活を続けていたのは、私も北方大神殿上層部も、帝国のこの血統裁定官廃止の施策は長続きしないと判断していたからです。教皇が自分の大事な手駒を失わせた帝国をそのままにしておくとは思えませんでしたし、主導したデュラント三世の健康状態も危ぶまれていましたので……」


 ジルコークは北方大神殿に与した理由を述べるが、話が進むに連れて、だんだんと表情が険しくなる。


「世継ぎである四世は温厚で理知的な人物と知られていましたし、『血統裁定官』はすぐに復権するだろうと安易に考えていたのです。もし、そうなればアエル様は北方大神殿の管理下に入り、帝国唯一の『血統裁定官』になる予定でした。実際、三世が崩御した際に、そうした動きがあったのも事実です。それが……」


 ジルコークは残念そうな表情で嘆息する。


「四世とアリシア皇女の遭難で、すべて無に帰しました」


 なるほど、皇帝も聖神官もいなけりゃ『血統裁定官』制度の復活も有り得ないって訳だ。


「それじゃ、それからはこうやって隠れ住んでいたの?」


「ええ、北方大神殿の庇護を受けながら、あちこちを流離って参りましたが、少し前にやっとここへ落ち着いたのです」


 そいつは、難儀なことで……。


「しかし、ここもまた離れなければなりません」


「まあ、村との関係も最悪だし、襲撃を受けるようじゃねぇ」


「いえ、そうではありません。今回の件がなくても、我々はここから旅立つつもりでした」


「え、どうして?」


「アリシア皇女が、ご帰還なさかったからです」


 ぶふっ…… 思わず変な声をあげるところだった。


「皇女様がいらっしゃれば、『血統裁定官』の復活がありえるかもしれません」


 自信有りげにジルコークは言う。


「何故なら、皇女様ご自身が今回の皇女認定にご苦労なされたからです。『血統裁定官』さえいれば、あのようなご苦労はなかったでしょうから」


 確かにジルコークの話にも一理ある。

 その制度が存続していたら、もっと早く効率的に皇女を探し出せたかもしれない。


 もっとも、つい最近までオレは男だったから、いくら『血統裁定官』が優秀でも、オレを皇女と断言するのは難しかっただろう。

 

 それにしても、そもそも『試練』と称して竜によって皇女を確認しようっていう方策自体が相当無理があると思ってたんだ。何故、こんな無茶なこと考えたんだろうと思っていたけど、人外に血統を判断させる『血統裁定官』制度という前例があった訳だ。


寒い日が続いていますね。

私は、まだ大丈夫ですが、時間の問題な気がしますw

皆様も風邪等にお気を付けを……。

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