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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
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襲撃の顛末……⑥


「当時、すでに『呪われし血の一族』は絶滅の危機に瀕していました。当初、神殿は彼らの存在を是としていませんでしたので、一方的に迫害を続けていたのです。個々の力では人間に勝っていた彼らですが、人間の狡知と数の暴力により、その一族を減らす一途となっていました。そのまま行けば、本当に伝承や御伽噺の生き物となるところ、先ほど言った転機が訪れました」


「転機っていうのは、御落胤が大量発生して帝国が混乱に陥ったことだよね。そこに神殿が絡んでくる理由がわからないんだけど?」


「ええ、実はイオラート教神殿というのは、帝国が版図を広げるのに応じて、その勢力を拡大してきたのです。言わば、神殿と帝国は運命共同体と言ってよいでしょう」


 確か、皇帝の即位式を執り行うのは教皇が推挙した中央大神殿の聖神官が行うことになっていたっけ。

 持ちつ持たれつの関係にあるのは明白だな。


「そして、その状況に至って初めて、神殿は彼らの能力の有用性に気が付いたのです。血を司る彼らがいれば血統の証明はいたく簡単にできることに………。そこで、神殿は信じられないような策を考え出したのです」


 ジルコークは沈痛な面持ちで続ける。


「『血統裁定官』という貴族待遇の高位職を新たに設け、彼ら『呪われし血の一族』を、その職に任じたのです」


 魔族を神殿に属する高位の職に就けただって? 無茶苦茶にもほどがある。

 まさに逆転の発想だ。


「神殿の研究機関により、彼らが当初考えていたような生き血を啜る野蛮な魔物でないことは解明されていました。ですので、人間と同等に扱うことに一定の理解を示し、また新興貴族として遇することも帝国と深く繋がった神殿には造作もないことでした」


 その研究機関とやらが、どうやって彼らの生態を解明したかは、ジルコークの沈んだ顔を見れば一目瞭然だった。

 どちらが悪しき存在なのか、正直オレには答えられない。


「そして、神殿の申し出を結局、彼らは受け入れます。他に選択肢が残されていなかったことも事実ですが、彼らが反発や抵抗を見せることはありませんでした。もちろん、人間に対してどのような感情を持っていたかは知る由もありません。しかし、彼らは血統裁定官の職務を忠実にこなし、帝国の未曾有の危機を防ぐことに成功しました。こうして、『血統裁定官』……彼ら『呪われし血の一族』は帝国運営になくてはならない存在となったのです」


 あれ、でもオレは皇位継承者だけど、そんな一族の話なんて聞いていないぞ。

 それより、そもそもそんな便利な存在があるなら、あんな面倒なことしないで、皇女候補を集めて、血統裁定官が見極めるだけで皇女が見つかったんじゃないのか?


 オレの疑問を余所にジルコークは話を続けた。


「けれど長い間、帝国運営に貢献してきた『血統裁定官』は次第に疎まれていきました。と言うのも、彼らと契約し実質的に管理下に置いていたのは教皇であり、やがて宗教界への政争の道具と化したためです。各大神殿は教皇から『血統裁定官』を借り受ける立場となり、教皇との関係が悪化すると貸与を断られる事態になったのです」


 血統裁判において、その切り札が有るのと無いのとじゃ、大神殿の威信に関わるのは当然か。

 大神殿トップである聖神官の推挙と併せて、教皇の神殿支配には無くてはならない存在だったのに違いない。


 でも、現在それが廃れているってことは、きっと何か原因があるのだろう。


「次第に各大神殿は極力『血統裁定官』の力を借りずに済むように継承に関する法令を整備し、貴族の血統の管理を徹底していきました。その甲斐あってか、彼ら『血統裁定官』の裁可を仰ぐ事例は滅多にないこととなったのです。つまりは形骸化したわけです。そして、さらにそんな状況に拍車をかける事態が起こりました」


 ジルコークは眉根に皺を寄せて話した。


「デュラント三世の即位です」


 それって、オレのお祖父ちゃんのことだよね。

 確か我がまま放題……もとい強力なカリスマで帝国の武威を高めた人物だ。


「強い帝国の復活を目指す三世にとって、教皇の帝国に対する過干渉は非常に目障りなものでした。また、大神殿側も教皇の頸木から脱したいと常々願っていました。両者の利害が一致し『血統裁定官』の職は廃されることとなったのです。ただ、法の不遡及性から、その時点にいた裁定官の職は辞さないことが決められました。そして本来なら、罷免された彼らは教皇領に戻るところなのですが、神殿は……」


 ジルコークは目を閉じ、声を落とす。


「彼らを秘密裏に抹殺したのです」


 神殿の非情な選択にオレは言葉を失う。

 そして、彼らの末路に深い哀悼と強い憤りを感じずにはいられなかった。


「この一連の仕儀により、『呪われし血の一族』は、それまでの考えを改めたのか、教皇との関係を白紙に戻し、何処かへと一族全てが立ち去ったのだそうです。ですので、事実はわかりませんが現在の彼らの行方を知る者はいないとされています」


 オレはジルコークの説明に納得しながら、どうしても腑に落ちない点が気になってしまう。

 そこで、オレは思い切ってジルコークに問いかけた。


「じゃあ、アエルは、いったい何故ここにいるんだ?」


今回も短めで、すみません。

返信にも書きましたが、ちょっと家族間でトラブルが発生しております。

簡単に言いますと、夜遅くまでパソコンの前に座ってないで早く寝ろ!ってことですね(>_<)

自分は、寝る前の時間を使って文章を書いていますので、筆が乗らないと睡眠時間が減りますw

そこが気に入らないようです。

まあ、見方を変えれば、身体を心配してくれているとも言えますが……。


そういうわけで、いきなりお休みするかもしれませんので、よろしくお願いします<(_ _)>

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