表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
327/655

襲撃の顛末……⑤

「もちろん、血に対する親和性から吸血を嗜好する者がいないわけではありません。また、先ほど御覧になったように、彼らは人間以上の能力を有していることも多く、過去において伝説の基となるような事件があったことも事実です」


 ジルコークは誤魔化そうともせず、はっきりと事実を口にした


「ですが、それは人間に狂気を宿す者がいて凶悪犯罪を繰り返すのと同じように、彼らにとってもそういう者達は異端な存在に過ぎないのです。少数の悪例をもって、すべてを同じと捉えるのは甚だ強引な考えと言わざるを得ません」


 確かに、その理屈で言えば人間という種族が、もし同様の立場に置かれていたとすれば、もっと酷い伝承が残り一人残らず駆逐されていたかもしれない。


 何しろ、人間と言うヤツは同じ種族間で反目し、殺し合いが絶えない生き物なのだから。


「とりわけ、アエル様の家系は一族の中でも穏健派で、これは後で述べますが人間に協力的な一派として知られています。……ちなみに、もうお察しかと思いますが、閉じているアエル様の目は擬態です。本当の目は、頭から突き出している器官がそれに相当します」


 ジルコークの言葉に反応したのか、突き出した二つの目玉がにょろりとオレの方へ向いた。

 どうやら、オレの様子を気にしているようなので、にこりと笑ってあげると、嬉しそうに左右に揺れる。


「アエル様の目は『真理を見抜く者』の名が示すように、我々に見えないものを見通し、先ほどのような不思議な力も持っています」


 幻惑する能力に加え、団長を掴んだ腕力も相当なものに見えた。アエル達が人間以上に強力な種族であることは間違いないだろう。


「しかしです、リデル様。それでもアエル様はそれ以外は、優しくて傷つきやすい普通の人間の少女と何ら変わらないのです」


 ジルコークの目は真剣で、彼がそれを信じて疑わないことは明白だった。


「……アエルや彼女達の種族についての誤解はわかった。ジルコークさんがアエルのことを大切に思っていることもね。それじゃ、肝心なことを聞きたいんだけど……何で、アエルはここにいるんだ?」


 ジルコークは、その質問は当然ですねと言いながらも即答は避ける。 


「もちろん、お話しするつもりですが、話を一旦戻しましょう。今までの説明の通り、彼らは血……実際はオドですが、血という物質に特化した生き物と言えます。その性質上、彼らは血の違いを極限まで認識できます。あたかもワイン利きの者が産地や年代を事細かにわかるようにです。このことに注目したのが……」


 ジルコークは一旦、言葉を切って目を伏せたが、再びオレを見つめると言った。


「……神殿です」




 ジルコークの返答に、正直オレは面食らった。


「神殿って、あそこは魔物の根絶を声高に宣言していなかったか?」


 神族と魔族は相容れない。不倶戴天の敵同士と言っていい。

 だから、吸血鬼を根絶やしにする組織は当然、神殿だと思い込んでいた。


 けど、ジルコークの弁によれば、そう簡単ではないらしい。

 そもそも神殿が、こともあろうに敵対勢力である吸血鬼の一族……『呪われし血の一族』の能力に注目していたこと自体が、俄かに信じられる内容ではなかったのだ。


 ジルコークはオレの驚く様を当然と言った顔付きで頷くと、話をさらに続けた。


「帝国の創成期のことです。初代皇帝は帝国を統一するほどの類い稀な武威がありましたが、その分好色な面がありました。正妃の他に数多くの側妃を娶っていたにも関わらず、それでも飽き足らぬのか、後宮だけでなく在野に至るまでたくさんの浮き名を流されました」


 『英雄、色を好む』って言うけど、初代皇帝のそれは、ほとんど病気と言っていい代物だったらしい。

 巷間では、他国の姫君欲しさに統一戦争を起こしたのではないかとさえ、疑われている。


 オレもレオンを最初に見たときに、やっぱり血は争えないものだと感心したのだけど、今はオレにもその血が流れていると知って、何ともやりきれない気分だ。

 もっとも、それらは与太話としてまことしやかに語られる類い(たぐい)の伝承で、公の場では決して話せない話だったりする。


 正史に記された皇帝は清廉潔白で情に篤く、正妻一途の浮いた話は一つもない名君なのだそうだ。


 これを否定しようものなら、どんな時でもどこにいようと官憲が現れて不敬罪で捕まってしまうという噂が流布されているほどだ。


「二代目の皇帝までは、それでも問題なく統治できていたのですが、三代目になる頃には多くの初代皇帝の御落胤が現れ、帝国は混乱を極めました。そして、当時の教皇は苦肉に策として一つの選択をしたのです。それが……」


「『呪われし一族』を利用しようと考えたんだな」


「ご慧眼の通りでございます」


 ジルコークは正しい解答を導き出した弟子を見るような表情で大きく頷いて見せた。


短めでごめんなさい。

月末は、ちょと忙しくて……(>_<)


前回のあとがきでいろいろ書きましたが、気にせずのんびりと書いていきたいと思います。

評価は大事ですが、それに捉われるのもどうかと思いますので……。

これからも無理せず頑張りますので、よろしくお願いします<(_ _)>

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=687025585&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ