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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
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襲撃の顛末……②


 いきなり扉を開けて機先を制する方法もあったけど、中の様状況が掴めないので、気づかれないよう音を立てずに扉を開ける。

 そこで目に入ったのは、思いもよらない光景だった。


 てっきり、オレは傭兵団の連中がアエル達を追い詰めていると思っていたのだが、状況は違っていた。部屋の中にいるのは、屋敷の主人であるアエルの他に執事のジルコークと侍女のマルシェラ、傭兵団の方は団長に村長の息子君と別の団員の計3名だったが、ジルコークさんは腕に怪我を負っており、侍女ちゃんは健気にもアエルを護るように立っている。


 普通なら危機的状況にあると言っていい。

 けど、先ほど言った傭兵団の内、立って剣を構えているのは団長さんだけで、村長の息子を含むあとの団員は床に手を突いて蹲ったり、尻餅をついていたりで明らかに戦えない様子だった。


 なんだ、この状況は?


「どんな魔法のアイテムかは知らんが、そんな子供だましは俺には通用せん」


 団長の睨む先には、例のカタツムリの目のような帽子の飾りが怪しく虹色に光っていた。


 幻惑の魔法でも付与されてるのだろうか。オレは平気だが、見た者の平衡感覚を阻害する効果があるらしい。


「まずは、その鬱陶しい小細工を叩き切ってやる」


 団長がじりじりと間を詰める。


 と、その時、不意にアエルが嬉しそうに声を上げた。


「……リデル……マタ、キテクレタ?」


 アエルが、団長達に気付かれないように音を立てずに部屋へ忍び込んだオレを真っ先に見つけて、声をかけてきたのだ。初めて聞くアエルの肉声は、とても愛らしかったが、どこかぎこちなく、何だか作り物めいた音に聞こえた。

 突然の彼女の声に、ぎょっとした団長は振り返ってオレに気付き、さらに驚いた顔をする。


「な、何で……お前が、ここにいる?」


 はい、本当は今ごろ温泉に浸かっているはずでした……。


「もしかして、貴女もアエル様を討伐に?」


 執事のジルコークが悲しそうな目でオレを見たので、慌てて否定する。


「いやいや、違うんで。村長との契約はとっくに切れてますから。……あ、それでですね。提案なんですが、今ちょうど暇なんで、もし良かったらオレ達を雇いません?」」

  

 オレが笑顔で発言すると、ジルコークさんは一瞬呆気に取られた顔をしたが、すぐさま即決する。


「リデル殿、貴女達を雇おう。アエル様を護って欲しい」


「じゃ、契約成立!」


 オレは合意の意を示すと、団長に対しテリオネシスの剣を構えた。




 突然のオレの登場に事の成り行きを窺っていた団長は、オレと執事さんのやり取りを聞き、一瞬だけ驚いたように目を見開いたが、すぐに余裕の表情を見せ、鼻で笑う。


「ふっ、無駄なことを……」


 確かに熟練の傭兵である団長から見れば、オレは年端のいかない華奢な少女にしか見えないわけで、仮に加わったところで戦況が変わるとは思ってもいないのだろう。


「あれ、急に眩暈が治ったぞ」


「あ、俺もだ!」


 間が悪いことに、オレの登場でアエルの集中が途切れたのか、はたまた元々の魔法の効果時間が終わったのか、息子君達も身体の自由を取り戻していた。


「お前ら、この傭兵気取りの女を頼む。好きにしていいからな。俺は、この得体の知れない女の方を相手をする」


 オレを一瞥すると、団長は改めてアエルに向き直った。


「団長、ありがてぇ。一目見たときから、絶対に俺の物にしてぇと思ってたんで……」


 村長の馬鹿息子はオレの身体を露骨に嘗め回すように見ながら、にやけ顔を露にする。


「へへっ、そんなに怯えんなって。可愛がってやるからさ」


 いやいや、怯えてなんかないから。

 ただ、気持ちの悪い顔を近づけて来るんで、鳥肌が立ってるだけだから。


「よしよし、大人しくしていたら、気持ち良くさせ……ごはっ!」


 あ、しまった。あんまり気色が悪いんで、反射的に剣の平で思い切りぶっ叩いちまった。


 いつぞやの武闘大会の時のように横殴りにしたので、横にいたお仲間の団員を巻き込みながら盛大に吹き飛んで、部屋の隅にあったソファーをぶち壊して、やっと止まった。

 ちょっと、やりすぎちゃったけど、ソファーがあったから、きっと大丈夫のはずだ。


 オレがほんの少し反省していると、団長は今の一撃を見て表情を変える。


「な、何なんだお前? どんだけ馬鹿力なんだ……ま、待てよ、今のはどこかで見覚えがあるぞ」


 ま、不味い。この人もカンディアの傭兵だったっけ。


「そうだ、思い出した。そんな無茶苦茶な奴はあいつしかない。……あんた、あの『白き戦姫』だろう?」


 うぎゃあ、その名前を出すなぁ。黒歴史なんだよぉ。


 オレが地味にダメージを受けていると、団長は剣をアエルへ向けてオレに言い放った。


「剣を捨てろ。この女がどうなってもいいのか」


 やはりと言うか、この男はオレの技量や性格を瞬時に見抜いて、卑怯と言われようが勝てる最善の手を確実に打とうとしていた。

 戦場において、正義も悪も関係なく勝ちを拾うために非道な行為も厭わない典型的な傭兵タイプの男だ。


 本来であれば、オレに対して非常に有効な手だったかもしれないが、今回は相手が悪かった。

 団長はオレに注意を払うあまりに、その他の警戒が疎かになっていたのだ。


 にゅっと細く白い手が伸びる。


「ああ?」


 団長が驚いて見下ろすとアエルのか細い手が、剣を握る団長の右手首を掴んでいた。


「いったい何のつもりだ?」


 団長は困惑しながら手を引き抜こうする。

 だが、握ったアエルの手を外すことができなかった。驚愕の表情を見せた団長は渾身の力を込めるが微動だにしない。

 団長の手首にアエルの指ががっちり食い込んでいた。


「お、お前何だ、本当に人間か?」


 瑞から見ると、屈強な大男が小さな女の子に腕を引っ張られている微笑ましい光景なのだが、男の方は化け物を見るような目付きで少女を睨んでいる。


 どうにも握った手が外せないことを悟ると、団長は右手に持った剣を左手に持ち帰ると頭上に振り上げた。


「危ない!」


 咄嗟にオレは剣の軌跡からアエルを押しのけようと手で押したが、団長の手首をしっかり握っていたことが災いして、少ししかアエルの身体を動かせなかった。

 そのため、何とか紙一重で避けることはできたが、残念なことに例の帽子がアエルの代わりにざっくりと斬られる羽目に陥る。


 と、次の瞬間、団長の手首を掴んでいたアエルの手が力なく離れ、団長の身が自由となった。


 すかさず、アエルに止めの一撃を加えようと団長が剣を振り上げたので、オレは剣の柄で団長を思い切りぶん殴って阻止を狙う。

 オレの剛打が見事に決まり、団長が先ほどの村長の息子君達と同様にソファーに向かって、一直線に激突するのを見届けて、オレはアエルの無事を確かめようと振り返り…………。


 そこで固まった。


お久しぶりです。

更新、お休みして申し訳ありませんでした。

忙しさのピークは過ぎましたので、たぶん来週末には落ち着くと思います。

ご迷惑をおかけします<(_ _)>


いよいよ、今章のまとめに入り、次はアリスリーゼです。

長かった……本当に長かった(大事なことなので二度言うw)


こでれ、本作も後半戦に入れます(え?)


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