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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
323/655

襲撃の顛末……①

「クレイ――ッ、大丈夫か――?」


 風を切って走りながら背中のクレイに声をかけるが返事はない。

 たぶん、返事する余裕がないのだろう。


 現在のオレ達の様子を誰かが見たら、物凄く違和感を覚えると思う。少女のような背丈のオレが長身の男性のクレイを背負っている……いや、体格差から背負うと言うより、かろうじて乗っかっている体勢で、森の中を全力疾走しているのだ。


 まさしく目を疑う光景と言って良い。


 オレは、進路に現れる木々の枝葉や路面の凹凸に注意を払いながら、速度を落とさずに最短経路で山荘へ向かっていた。

 後ろのクレイも、とにかく振り落とされないように必死で捕まっているようで、ずっと黙ったままだ。乗り心地は最悪だろうから、申し訳ないと思うけど、『俺を置いての単独突撃は許さん』と言ったのはクレイ自身なので自業自得だと思う。


 おっと、でかい岩だ。


 飛び越そうと思って跳躍すると、勢いあまって弧を描くような大跳躍となる。

 気にせず、華麗に着地すると後ろで「ぐむっ」と何か蛙がつぶれたような声が聞こえたが、気にしない、気にしない。

 そうこうしている内に、昼間に訪れた山荘が目に入って来る。


 オレは状況を把握するために、走る速度をゆっくりと落とした。そして、山荘の門が窺える位置に近づく頃合で完全に足を止める。

 すると、それと同時に後ろの荷物(?)がどさりと地面に落ちた。


「クレイ、静かにしろ。敵地だぞ」


「……」


 クレイは地面に突っ伏したまま、呪詛のよう何かぶつぶつ呟いていたが、よく聞き取れなかった。


 あれ? 戦う前なのに酷くダメージを受けてるような気が……。

 まあ、いいか。それより、山荘の様子を確認しないとね。


 そう思い注意深く観察すると、塀の外に例の傭兵団の姿が見えず門も開け放たれている状況から、奴らはすでに山荘内部へと侵入しているのは確実だった。


「クレイ、急ぐよ。奴ら、襲撃を始めているようだ」


 クレイは無言で頷くと、立ち上がって剣を抜いた。


 門前に着くと、扉は開いているが壊された形跡がない。

 周囲を見てみると、少し離れた塀の上から先端に鉤爪の付いたロープが垂れ下がっていた。


 どうやら身軽な者が塀を越えて潜入し、内側から門を開けたらしい。

 なかなか手馴れている。

 傭兵団と言うより、ますます盗賊団っぽく感じた。


 とにかく、思っていたよりずっと巧妙に襲撃を開始したようで、アエル達の安否が気がかりだ。


 門を抜けて屋敷に向かうと、入り口に誰か倒れているのが見える。静かに近づいて確かめると、門番さんだった。


「酷いことを……」


 可哀相なことに口を塞がれた上で刺し殺されていた。

 おそらく、かすかな物音や話し声を耳にして、不審に思って見回りに行こうと外へ出たところで、奴らと鉢合わせしたのだろう。


 お気の毒に……。


「リデル、先へ進もう」


 手を合わせて祈っていたオレにクレイが先を急がせる。


 奴らは、話し合いではなく本気でこの山荘の住人を殲滅しようと考えていることが、これでわかった。

 一刻の猶予もないことは明らかだった。


 屋敷に入って奥へとしばらく進むと、金属がぶつかり合う音と荒々しい男達の怒号が聞こえてくる。

 どうやら、戦闘の真っ最中のようだ。


 急いで、音のする方向へ向かうと、果たしてそこにエルトヴァイトがいた。

 奥まった狭い廊下の先に陣取り、極力一対一になるような戦闘を繰り返し、多人数の敵に相対していた。

 さすがは騎士様。ちゃんと頭を使って戦っている。けど、圧倒的な不利な状況で何とか均衡を保っているのに、表情に焦りの色が見えた。


 そうか、ここにはあの団長と村長の息子がいない。たぶん、エルトヴァイトの相手を部下に任せて先へと進んだのだろう。

 アエルの騎士を自負する彼としては、我慢ならない状況に違いない。


 そして、その騎士様は、遠くからオレ達がやって来るのを見て絶望の表情を見せ、一方の傭兵団は歓声を上げた。

 どうやら、オレ達を援軍と勘違いしたようだ。


 まあ、それは当然だ。実際、先ほどまで村長に雇われていたのだから、そう思い込むのは当たり前と言っていい。


「リデル、ここは俺に任せて、お前は先に行け」


 そう言いながら、クレイは剣を構えて、喜色を見せている傭兵団に突っ込んで行く。


「ありがと、クレイ」


 オレもそれだけ言うと、踵を返して団長達が通った経路で奥へと向かった。




「ここは食堂か」


 先へ進んだ連中のあとを追うのは難しくなかった。部屋伝いに奥へと向かったようで、通った部屋の扉が開けたままだったからだ。

 オレも彼らに倣って各部屋に次々と入る。


 そして、今度入った部屋は何人もの人間が席につける長テーブルが中央に置かれた食堂のようだった。今、入ってきた扉の他に二つの扉があり、屋敷の奥に向かっている反対側のある扉へとオレは進んだ。


 ふと、かすかな物音に気づき、もう一つの扉――おそらく厨房に続く扉に目を向ける。忍足で近づき、いきなり扉を開けた。


「ひえっ、どうかお助けを!」


 隠れていたらしい男が悲鳴を上げ、土下座で許しを請う。


「もしかして、料理人さん?」


「え? は、はい。料理人のギャスピーです」


 髭を生やした背の高い痩せた男はオレの質問に恐る恐る顔を上げ、答える。


「安心して、オレは賊とは違うから。それより、アエルのところまで案内してくれる?」


 彼女の場所がわかれば、探している連中より先回りできるかもしれない。


「か、勘弁してください。やっとの思いで隠れていたんですから……」


 身体を震わせて尻込みするギャスピーは、オレの案内を拒絶した。

 問答無用で連れて行きたかったのが本音だったが、騒がれても困るので居場所と行き方で聞き、そのまま放置する。

 他の傭兵団の連中は、クレイとエルトヴァイトが倒してくれそうだから、ここに隠れていれば、きっと安全だろう。

 それより、アエルの下に辿りつくのが先決だ。


 オレは料理人から聞いた経路を、ひたすら走った。



 そして現在、使われている部分では一番奥まった場所にある本来は屋敷の主人の奥方が使用する部屋の前にオレは立っていた。


 ノックしようとすると、中から会話する声が聞こえる。


 聞き覚えのある太い声……たぶん、あの団長のものだ。


 遅かったか。

 すでにアエル達と接触しているらしい。


 けど、激しい物音は聞こえないので、戦いの場にはどうにかギリギリ間に合ったようだ。

少し多めの更新です。

その代わり、前にお伝えしましたが、来週の水曜更新はお休みします。

申し訳ありません<(_ _)>


いよいよクライマックスです。

ね、短いでしょw

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