奇妙な住人たち……②
それにしても、先端の球体が透明な部分と色の付いている部分との二重構造になっているので、何だか目の玉のように見えないことも無い。
というか、見ようによっては巨大なカタツムリの目がにょきりと生えているかのように見える。
いかん、変な想像をしたら怖くなってきた。
だって、何だかじっと見つめられているような気がして、鳥肌が立ってきたんだもの。綺麗かもしれないけど、これがお気に入りだと言うアエルとサラの感覚が、ちょっとオレにはわからない。
オレが密かに恐怖している内に、クレイとジルコークの間で話し合いが進められていた。
村長の言い分と要求を告げると、当たり前だがジルコークは即座に拒絶する。
まあ、アエル側としては『その山荘は村の所有物であるから、直ちに退去せよ』などと言うのは、言いがかりもいいところで、呑める要求ではないのは当然だ。
ただ、アエルが男爵家の血を引いていると言うのも、彼らが主張しているだけで確たる証拠がある訳では無いようだ。
エルトヴァイトが『私が保証するのだから間違いない』と断言しているが、果たしてどうなんだろう?
確かに聖騎士の言葉は重きを置かれるものだが、この坊ちゃん女の子に甘いからなぁ。
そもそも、巡検使でもない聖騎士がこんな山奥に単独でいること自体、信用されないと思う。むしろ、胡散臭さが増してアエル側の心証を悪くすることになりかねなかった。
「ところで、この広いお屋敷に住まわれているのは、ここにいる方達と外にいる門番だけですか?」
互いの主張が平行線を辿り、話し合いが暗礁に乗り上げたので、クレイが場の雰囲気を変えるため話題を転じた。
「ええ、この屋敷には主のアエル様、騎士エルトヴァイト様、それに使用人として執事の私、侍女のマルシェラ、庭師兼門番のラスバル、料理人のギャスピーの6名が住んでおります」
簡単には答えてくれないかと思ったら、執事のジルコークが素直に話してくれて少し驚いた。
屋敷の護りを考えれば、人員数の情報は重要なことだからだ。
「この砦のような屋敷をそれだけの人数で賄えられるんですか?」
クレイも、ちょっと驚いたようで、思わず聞き返す。
「使う場所は何とか手入れしたのですが、残念ながら大部分は手付かずのままなのですよ」
どうやら、屋敷の一部を使用してるだけで大半は放置してあるようだ。
「なるほど、アエル様。ちょうど良い機会です。こちらの方々に例の部屋の件について尋ねてみたいのですが、よろしいでしょうか?」
唐突に何かを思い出したようなジルコークがアエルに提案すると、彼女はこくりと頷く。
「実は、あなた方にお願いしたいことがありましてな……」
「ちょっと待ってくれ。話を聞くのは構わないが、オレ達はすでに村長の依頼を受けているんだ。依頼者と利害で敵対している相手と重複して依頼を受けるのは、傭兵としての信義が問われる行為だと思う」
クレイが難色を示すとジルコークは柔らかい笑みを浮かべる。
「大丈夫ですよ、クレイさん。今回の件とは直接関係ない話ですし、内容も簡単なことですから」
納得しがたい表情をしながら、クレイが先を促す。
「この屋敷の元の主人である男爵様の寝室があった場所近くに開かずの間があるのです」
ジルコークは一旦、言葉を切るとオレ達を見回してから、ゆっくり続けた。
「どうやら、豪奢な扉の造りから判断して男爵様が使っておられた『宝物庫』だと思われます」
サラが『宝物庫』というワードを聞いて、とたんに目をキラキラさせている。
ホント、わかりやすい。猫じゃらしに飛びつく子猫みたいだ。
伝説の宝でも眠っているとでも思っているのだろうか。
けど、夢を壊すことになるけど、所詮は男爵クラスの貴族が収蔵していた宝だ。伝説級の価値を持つ宝が出てくるとは、到底思えなかった。
「どうして『開かずの間』に?」
「ええ、残念なことに肝心の扉の鍵を紛失してしまっていましてね。頑丈な造りでとても壊せそうにもないのです。なので、部屋の中の確認も使用することも、ここに来て以来ずっとできないままでいるのです」
「何故、それを俺達みたいな部外者に?」
「傭兵団には荒事を行う以外に盗賊紛いのことのできる人材も揃っていると聞きましたので」
なるほど、オレ達の中に鍵開けが出来るものがいると思ったのか。
それだったら、タイミングが悪すぎるよ。
「引き受けてやりたいのは山々だが、ちょうどその手のことが得意な者が同行していなくてね。ご期待には添いかねる」
案の定、クレイは申し訳無さそうに断った。
本当にソフィアがここに居なくて残念だ。彼女なら、きっとその開かずの間だって、簡単に開けてしまうような気がした。
「そうですか、それは残念です。しかし、突然の申し出なので、お気になさらないでください。もしやと思って提案したことですので……」
その後、再び村長の要求について話し合われたが、結局のところ結論が出ないまま交渉は時間切れとなり、オレ達はいろいろな疑問を抱えながら、村への帰途につくことになった。
何とか復帰しましたが、体調は依然、低空飛行です(>_<)
天候もはっきりしないし、気分が滅入りますね。
インフルも、ぼちぼち出始めたし、気をつけないと……。
お知らせですw
この章は短くなる予定です……も一度言います。短くなる予定です(震え声)




