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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
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奇妙な住人たち……①

「お客様方、当家の主人がお会いになります。なにぶん繊細なお方ですので、不用意なお言葉などなさらぬよう、お気をつけ願います」


 部屋に入るやいなや、ジルコークはオレ達に自重を求めた。


「なお、お嬢様はご病気の関係で、お帽子を被っておられますが、気になさらないでください」


 舞踏会などで凝った帽子を室内でも被ったままの貴族令嬢もよくいるので、それほど驚くことではないけれど、執事があえて口にするということは触れて欲しくない話題ということだろう。

 頭部に疾患等があって、帽子を被らなければならない理由とかがあるのかもしれない。オレ達は大丈夫だけど、好奇心旺盛で自重という言葉を知らないサラの行動に注意しないと……。


「それではアエル様、どうぞこちらに……」


 執事が扉を開けると先ほどの侍女と一緒にくだんのお嬢様がゆっくりと入って来る。


 一見してわかるのは、年端のいかない少女ということだ。

 10代前半ぐらいだろうか?

 色白というより透き通るような白さで、きめ細やかな肌は、さながら青白な陶磁器のようだった。


 眼は村長の言うとおり閉じていたが、整った顔付きは無表情な雰囲気が影響して、どこか人形めいて見える。服装も黒のシックなドレスで、仕立てから高級なものとわかるが、年相応の明るさが見られない。


 そして、一際オレ達の目を引いたのは、さきほど説明のあった帽子だ。 


 一般にキャベリン(つば広帽)と呼ばれる帽子で、パーティードレスに合わせて凝った形状や装飾をふんだんに施した造りのものが多く見られる帽子だったが、彼女が被っているものは何とも形容しがたい代物と言えた。


「なあ、クレイ。あれって……」


「しっ、黙ってろ」


 オレが困惑した目でクレイを見ると、クレイは慌ててオレの口を閉ざす。

 発言を遮られたオレは黙ってアエルという少女をまじまじと見つめた。



「※※※※、※※※※※※。※※※※※※※※※※※」


 オレ達の前に立ったアエルは何事かしゃべったが、声が小さすぎて聞き取れない。


「『ようこそ、いらっしゃいました。まずは席におかけください』と主人は申しております」


 脇に控えた執事のジルコークが彼女に代わって話した内容を伝えてくる。


 あんなかすかな声で、よくわかったなと感心しながら席に座ると、クレイが許可を得てオレ達がここにやって来た理由を簡単に彼女へ説明した。


 一通り聞いたアエルは軽く頷くと、再び口を開いた。


「※※※※※※※※。※※、※※※※※※※※※※※」


 やはり、聞き取ることができない。


「『貴方達を歓迎しましょう。ぜひ、ゆっくりしていってください』とのことです」


 ジルコークが再び補足する。

 どうやら、話し合いに応じてくれるらしい。


 思っていた以上に好意的に対応してくれて、オレとしては少し意外だった。


 周りの配下の者はともかく、アエルさん自身は村に対して、それほど悪感情を持っていないように感じる。ただ、会話自体は万事その調子で、アエルの肉声を直接聞き取ることは適わなかった。

 そのため、当初考えていた女主人と直接やり取りすることは困難と判断し、執事のジルコークと話し合う形に予定を変更した。


 が、しかしである。ここで思わぬ横槍が入った。


「あの~ちょっと聞いてもいいかなぁ?」


 お約束のサラである。


 オレがまずいと思ったときには、すでに遅かった。

 サラはニコニコしながら、次の質問をする。


 いや、オレもずっと気になってはいたけど、最初に執事のジルコークさんから釘を刺されてたから、あえて触れないようにしていたのに、サラには通じなかったようだ。


「ねえ、アエルさん。その頭に被ってる変な帽子って何なの? お気に入りなの?」


 一瞬にして、その場の空気が凍りついた。


「サラ、あんた……」


「貴様達!」


 エルトヴァルトが険しい表情でオレ達を睨む。


「先ほど、ジルコーク殿がお願いしたはずだ。まさか、忘れたとは言わせないぞ」


 お怒りは、ごもっとも。

 あいにく、うちのパーティーには三歩歩いただけで忘れるトリ頭な奴がいるんで……。


「本当に申し訳ない。悪気はないんだが、文芸家というのは好奇心の塊みたいなものでね」


 クレイが謝罪するが、彼の怒りは収まらない。

 お嬢様に会わせる算段を取り付けた手前、責任を感じているのだろう。


「お話にならん。このような失礼極まりない連中は、すぐにでもここを……」


「エルトヴァイト様、お嬢様が『問題ないから声を荒げてはなりません』と仰せられています」


「しかし、それでは……はい、承知いたしました」


 納得はしていないようだが、エルトヴァルトの剣幕は、みるみる内に収まっていく。


 何とか、場が収まりつつある状況で、事の発端のサラは困ったようにアエルを見て言った。


「……えと、まだ返事もらってないけど?」


 オレ達もエルトヴァイトも、ぎょっとしてサラを見つめた。


 サラ……先ほどのオレ達の会話を聞いてなかったの?

 呆れると同時に羞恥や怒りの衝動がこみ上げてくるが、ふと小さな笑い声に気づき我に返る。


 振り向いて見ると、アエルお嬢様が可愛らしい表情でくすくす笑っていたのだ。


「アエル様?」


 エルトヴァイトが珍しいものでも見たような様子で見つめていると、アエルは例の調子で何事か答える。


「お嬢様は『人前に出るのに必要なものですが、お気に入りでもありますよ』と仰っています。お答えになりますか?」


 ジルコークが丁寧な口調でサラに伝える。


「ありがとう。その帽子、とても綺麗で素敵だと思う。あたしも持っていたら、きっとお気に入りになるよ」


 サラがニコニコしながら礼を言うと、アエルも笑顔で応えた。


 オレは二人の様子を見ながら、改めてアエルの被っている帽子に目を向ける。

 帽子自体は一点物で洒落てはいるが、特に目新しい意匠ではなかった。


 目を引くのは、まるで昆虫の触覚のように帽子の側頭部から左右に二本飛び出している飾りだった。しかも、その先端には半透明の球状の物体が取り付けられていて、虹色の光をほんのり灯している。

 人形めいた美しい少女が被っているのも相俟って、何とも不思議な情景に見えた。


案の定、金曜日の夜から寝込んでいます。

土曜日は、ほぼ一日寝てました。

日曜日一日で復調しなければ……。


台風も来てますし、皆さんもご注意くださいね。

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