いざ、山荘……①
結局、亡霊の出現を待っていても埒が明かないことが判明したので、オレ達は昼食を軽く取ってから、件の山荘へ向かうことにした。
ちなみに昼食はワークが用意してくれて、しかも思いのほか料理も上手だった。戦闘力は高いし、動物の扱いも上手かったので、何気に優秀なんだが、寡黙で地味すぎるのが玉に瑕だ。
そして、もちろんサラはここでも食べる専門だった。というか、料理するという選択肢は始めから彼女には無いのだと思う。
まあ、オレも他人のことをどうこう言えるレベルではないので何も言えないが……え? やる気はあるんだよ、ただ時間が足りないだけで……その、これから精進します。
村から山荘までは一本道だが山道であり、半時ほどの距離ということもあり、オレ達は徒歩で向かうことに決めた。馬車やリーリム達は村長宅で預かってくれている。
天気も良かったし、ちょっとした行楽気分に浸れる道程で、とくに熟睡した約二名は当初とても元気に出発したが、だんだん雲行きが怪しくなっていった。
「とにかく、まずは様子見だ。相手が話し合いに応じるなら、極力戦闘は避ける。万が一戦うことになっても、明らかにこちらが不利とわかったらすぐに退却すること。依頼の達成より自分の生命を優先することを念頭において行動してくれ」
クレイが山荘までの道中で皆にパーティーの行動方針を述べる。
これは、期待に満ちた目でわくわくしているサラと、目を不安げに泳がせ、びくびくしているオレに向けた言葉だ。
どちらにしても極端な行動を取ることによる不測の事態を避けるため、注意喚起の意味合いを含んでいるのだろう。
実際、昼間だからいいけど、夜だったら絶対に泣きそうになってたと思う。
元々は整備されていたであろう山荘へと向かう道は、木々が鬱蒼と生い茂り、わずかに道である痕跡が残っている程度で、もはや獣道に近い。
おかげで、草むらから野兎が飛び出すだけで、オレは危うく悲鳴を上げそうになっていた。
おかしい。
普段だったら、別にどうってことない道のりなのに、山荘に近づくにつれ、漠然とした不安がどんどん増していくような感じがする。
この先に、何か良くないことでもあるとでもいうのか?
他のみんなは何も感じていないようなので、オレの取り越し苦労かもしれないと楽観的に考えようとしたけど、上手くいかなかった。
ヒューは、そんなオレの様子を心配してくれていたが、クレイは何だかちょっと嬉しそうだ。
オレのビビリ具合がおかしいのだろうか?
「リデル、こんな明るい内から亡霊なんて出ないぞ。そんなに警戒しなくても大丈夫だ」
半分、泣きべそをかきながら周囲を警戒しているオレにクレイが笑いを堪えながら、それでも安心させようと声をかけてくる。
「わ、わかってるよ、そんなこと。別に怖がってなんてないし……」
「それならいいんだが、何だか見ていられないんでな」
「大丈夫だって。いくらなんでも、こんな昼間っから出るわけ……」
「おんやぁ、あんたら……」
「ひゃあっ!」
いきなり横合いから声をかけられて、オレは可愛らしい声を上げ尻餅をついた。
「だ、大丈夫だか、あんた?」
座ったまま、恐る恐る声のした方を見ると、人の良さそうなおじさんの顔が見えた。
あれ? 何だかデジャヴュが……。
あ、そうか。見覚えがあると思ったら、昨日のおじさんだ。
昨日、オレ達を村まで案内してくれたおじさんが昨日と同じようにオレを心配そうに覗き込んでいた。
「なんだ、おじさんか。驚かせるなよ」
「勝手に驚いたのは、そっちの方だべ」
相手が亡霊でないとわかると、とたんに強気になったオレにおじさんは戸惑い気味だ。
「そんことより、何であんたらが、こげなところに?」
「ちょっと、村長に頼まれごとをされてね……そういうおじさんこそ、何でこんなところにいるんだ?」
質問を質問で返すと、おじさんは怪訝そうに答える。
「もちろん、仕事さ決まってる。猟師が森の中にいるのは当たり前のことだべ」
「猟師?」
そういや村長の話で、最初に山荘の住人に気づいたのは猟師だって聞いた気が……。
「おじさん、もしかしてこの先の山荘のこと知ってたりしない?」
「もちろん、知ってるべ。この辺りは、おらが狩りをする縄張りだで」
「それじゃ、山荘に住んでる女の子のことも知ってるの?」
「あんれ、あんた。あのめんこい嬢ちゃんの知り合いかね」
「いや、そういうわけでもないんだけど……」
オレが口ごもると、すかさずクレイが口を出す。
「猟師さん、狩りの途中で申し訳ないんだが、俺達をその娘さんのところまで案内してもらえないだろうか」
おじさんはオレからクレイに視線を移し、警戒する素振りを見せる。
「あんたら、村長に頼まれたって言うたが、もしかしてあの嬢ちゃんに悪さしようと企んどりゃせんか?」
図星を指されて、オレはどぎまぎしたけど、クレイは平然と答える。
「そんなこと、思ってもいないさ。俺達は彼女と話し合いに来たんだ」
本当け? という目でオレを見たので、こくこく頷く。
「まあ、あんたがそう言うなら、一応は信用するべ」
こういう時、美人は得だと改めて実感する。見た目の印象は信頼度にかなり影響すると思う。
おじさんは、完全には納得していないようだけど、オレに免じて山荘まで案内してくれることになった。
やはり、心配したとおり金曜日の夜から絶不調です(>_<)
寒暖差にやられたようです。
けど、三連休何かと忙しいんですよね。
月曜日はゆっくり休みたいなぁ。
最近、少しづつ読んでいる「なろう小説」が面白くて、急にSFが書きたくなった作者でしたw




