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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
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結局……やっぱり……②

 正直な話、実はこのおっさんのことをオレは苦手としていた。

 一挙手一投足をじっくり見られ、あれこれ注意されそうな気がするからだ。

 オレの妄想なのだろうけど、厳しい教育者オーラをひしひしと感じる。出来れば、極力近づきたくないところだけど、その能力・実績を考えるとアルサノークを託せるのは彼しかいないと思っていた。


 でも、この人選を思いついてクレイに相談した時の反応は芳しいものではなかった。能力的には申し分ないが、グビル団長が彼を手放すはずがないだろうとの見解だった。

 グビル団長にとってジェームスはグレゴリ傭兵団の創成期から苦楽を共にした親友であり、彼のことも彼の傭兵団のことも隅々まで知悉ちしつしている人物だ。


 ジェームスがいれば、グビル団長を……ひいてはグレゴリ傭兵団を出し抜くことも可能だろう。そのような人物の、商売敵である他の傭兵団への移籍をグビル団長が認めるとは、とても思えない。

 クレイは、そう結論付けたが、オレはダメ元だからと説得して、グビル団長に会いに行った。


 そして、意外にもグビル団長は簡単に了承してくれたのだ。

 オレ達が驚いていると、逆に団長の方から頭を下げて懇願してきた。くれぐれもジェームスのことをよろしくお願いすると……。

 

 こうして、ジェームスはアルサノーク傭兵団の相談役となり、新体制が完成した。ジェームスとドゴスが居れば、ロスラムと言えども迂闊に手を出すのは不可能に違いないだろう。

 これでオレ達も、ようやく後顧の憂いを絶ったと言える。

 武闘大会も模範試合を持って終了したし、明日にはいよいよカンディアを出発することになった。


 今夜は『桃色の口付け亭』でお別れの宴だ。



◇◆◇◆◇



「ぐすっ……お名残惜しいです」


「そ、そんなに泣くなよ、団長さんがそんなんじゃ示しがつかないぞ……ぐしゅ」


「リ、リデルさんだって泣いてるじゃないですか」


「オ、オレのは心の汗だ!」


 カンディア市の城門で、オレとネフィリカは手に手をとって目を潤ませていた。


 いよいよ出発の時が来たのだ。

 昨晩の別れの宴は……何も言うまい、言わない方がみんな幸せだ。

 決勝戦の醜態に懲りたオレは断固として酒を飲まなかったので、いたって体調は良好だ。

 けど、お酒の強いネフィリカやヒューも顔には出ていないが本調子ではなさそうだ。


 その他の面々は押して知るべしと言っていい。

 特にクレイは悪友のディノンと飲み比べをしたせいで、死んだ魚のような目をしていた。


 これから出発というのに大丈夫だろうか?


 ちなみに見送りに来ているのは、ネフィリカにユール、それにドゴスとジェームスの四人だ。ディノンやアルサノークの新人たちは『桃色の口付け亭』泥のように眠っている。


「とにかく、ロスラムの奴らには気をつけるんだぞ。何かあったら、ジェームスさんやドゴスに任せれば間違いないから」


「はい、そうします!」


 元気に答えるネフィリカに、団長としてどうかと思わないでもなかったけど、彼女はまだ若い。

 これから経験を積んで、良い団長になればいいと思う。


 えっ、ネフィリカより若いお前が言うなって?


 う~ん、確かにそうだし、皇女としてどうかと言われれば、他人事とは言えないかも。

 経験を積んでがんばります……。



「そうそう、リデル君。少し待ってくれたまえ。実は君に渡さなければならない物があるのだ」


 出発しようとするオレをドゴスが呼び止める。


「渡さなければならない物?」


「そうだ、屋敷から脱出するときに思い出したのだが、あの時は時間が無くて見つけられなくてね。後で届けてもらう手筈になっていたのだが、あのような事態になって渡すことができなかったのだ」


 ドゴスの弁によると、毒を盛られて神殿に担ぎ込まれたせいで渡すタイミングを逸してしまったのだと言う。


 ドゴスがオレに『渡したい物』のではなく『渡さなければならない物』……いったい何だろう。

 オレが不思議に思っていると、ドゴスは一振りの抜き身の剣を箱から取り出した。


「そ、それは……」


 その剣には見覚えがあった。

 いや、決して忘れることのできない、よく見慣れた剣だ。


「親父の剣……」


 それは、オレの父親がセンテネクワス動乱まで愛用していた剣に間違いなかった。


 ドゴスが黙って差し出してくれたので、オレは親父の剣を手に取り、しげしげと眺める。

 何の飾りもない質素な拵えだが、実は銘のある剣であることをオレは知っていた。


 口に出しては言わなかったが、親父がとても大事に扱っていたのを覚えている。

 けど、あの戦いの最中、敵を多く斬りすぎて斬れ味が悪くなった上に、指を負傷して剣が握れなくなった親父は撤退の際に止むを得ず捨てていくことを決断したのだ。


 剣に注意を向けると、確かに刃こぼれが酷く、滑り止めのためにグリップに巻いた布は親父の血で茶色く変色していた。


「これは?」


 どうしたのだと、ドゴスに目で訴えると彼は頷いて答える。


「あの戦いのすぐ後に、ファベリオ団長や君たちの消息を探すために戦場を探し歩いてね。その時に偶然見つけて、私が回収したのだ」


 そうか……ファベリオ団長が死んだのは想定外だったから、ドゴスとしても行方を確認したかったんだな。


「生きていればデイル……君の親父さんに返そうと思ったのだが、残念なことになってしまい、真に申し訳ない。ただ、君が生き延びたことは耳にしていたので、いつか君に渡せればと思い、ずっと保管していたのだ。だから……」


 ドゴスは深々と頭を下げ、言った。


「こんな形になってすまないが、ぜひ君に返したいのだ」


 オレはドゴスの気持ちを感じ、何かが吹っ切れたような気がしながら、ほんの少し笑って答えた。


「ありがとう、ドゴス」


な、夏休みが終わったせいなのか、それとも作品がつまらなくなったせいなのか、アクセス数が激減しております(ToT)

このままでは作者のモチベが……。

テコ入れ回でサービスシーン満載の温泉回を(嘘ですw)


冗談はともかく、ちょっと凹んでます。

でも、そういうことは気にせず、頑張って更新していきたいと思ってます。

今後ともよろしくお願いします!


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