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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
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祭りは終わらず……⑤


「だから、何度も言うけど、あたしは無実だってば……」


 サラは、心外そうな顔付きでしらを切る。


「じゃ、その配当金は何なんだ?」


 サラの後ろに立つワークが、お金の入った小袋をたくさん抱えて身を縮込ませている。


「ん~? 偶然、勝っただけさ」


 怪しい……絶対に怪しすぎる。


「じゃあ、今までオレに賭けてたのに何で今回に限って相手に鞍替えしたのか、その理由を聞きたいね」


「え~と……たまたま?」


「ほお……たまたまで、この賭けを勝ち抜けるとは、たいした勝負師だな、あんた」


 クレイの口調は、どこか面白がっているようにも聞こえたが、サラを見つめる目は鋭かった。


「あはは……みんな目付きが怖いよ。楽しく、祝勝会……いや残念会か、とにかく明るく楽しく飲もうじゃないか」


 サラが一人盛り上がって見せるが、オレ達の目は冷たい。


 オレ達をざっと見渡すと、サラは観念したように嘆息した。


「……わ、わかったよ。本当のことを言うから、そんなに睨まないでくれ」


 己れの不利を悟ったのか、渋々重い口を開く。


「それじゃ言うけど、あたしは神に誓って彼らに情報を売ったりなんてしてない、本当さ…………ただ」


「ただ?」


「とある酒場で、ワーク相手にリデルがお酒にめちゃ弱いって話をしてやったことがあったような、なかったような……」 

  

 サラは悪びれない様子で、さらりと問題の核心を言ってのける。


「ソフィア……」


 サラを睨んだまま、オレは問いかける。


「はい、リデル様。サラさんの足取りの記録によると、それは『勝利の女神亭』と思われます。ちなみにルビシール傭兵団の行きつけの店です」


 さすがソフィア、打って返すように返答が来る。


「だそうだけど、サラ?」


「後をつけるなんて、ひどいなぁ。でも、そいつは偶然さ。そんなこと、全然知らなかったよ」


 にこにこしながら、しれっととぼける。


「サラさん、あんた!」


「リデルさん、もういいんです。やめてください」


 思わず、声を荒げるとネフィリカが割って入ってくる。


「でも、ネフィリカ。サラのせいで負けたかもしれないんだよ。せっかく優勝狙えたっていうのに……」


 オレが悔しそうに言うと、ネフィリカは首を横に振った。


「ありがとうございます、リデルさん。そこまでアルサノークのことを真剣に考えていただけて……でも、もういいんです。正直言うと負けて、ほっとしてるんです」


 ほっとしてる?


 思わぬ言葉に、オレが怪訝な顔をすると、ネフィリカは慌てて言い訳する。


「あ、ごめんなさい。負けたことは本当に悔しいんですよ。でも、私これまで何もしてこなかったから、このまま優勝しちゃっていいのかなって、ずっと考えていたんです」


 ネフィリカ、そんな風に考えていたんだ。全然、気がつかなかった。


「せっかく、リデルさん達に頑張っていただいたのに、こんなこと言うのは失礼だと思うんですが、リデルさん達におんぶに抱っこのまま優勝しても、アルサノーク傭兵団として……団長として胸を張れないんじゃないかって思ったんです」


 ネフィリカの気持ちが痛いほどわかった。


 オレもルマの武闘大会の時、この化け物じみた力で優勝していいのかって、すごく悩んだのを覚えている。自分の力以外のところで評価をされるのは、何とも面映いものなのだ。


「こんなこと言っても今更ですよね」


「いや、気持ちはよくわかるよ」


 オレの言葉にネフィリカは目を見張る。そんな風にオレが言うとは思わなかったようだ。


「でも、たとえ紛い物の力で勝ったとしても、勝ちは勝ちだと思うよ。それにネフィリカだって、十分頑張ってたと思う」


 だから、あまり気にしないほうがいい――ネフィリカだけでなく自分にも言いきかせるオレだった。



「さて、リデルが落ち着いたようだから、今度は俺が聞くが、サラあんたの真意は、いったいどこにあるんだ?」


 クレイは先ほどと打って変わって、興味深げな瞳でサラに問いかけた。


「はて、どういう意味かな?」


 サラは『意味がわかりません』という顔で、はぐらかす。


「あんたが賭けに一喜一憂して見せるのは、たぶん本当の姿じゃない。本音は違うと俺は思ってる。そのあんたが、俺達が負ける算段を労するには、何か理由があるのだろう」


 クレイは笑みを浮かべつつもサラから目を離さない。


「それを教えてもらえると有難いんだが……」


 クレイの言葉にサラは、また一つため息をつくと、オレ達を見回した。


「賭けに勝ったのは本気で嬉しかったんだがなぁ…………まあ、あれだ。簡単に言えば、君達は目立ち過ぎたのさ」


「目立ち過ぎた?」


 オレが呟くとサラは頷いた。


「でも、サラさん。勝ち進めれば、目立つのは当たり前じゃないですか」


 ネフィリカが不満そうに反論する。 

 

「いや、そういう目立つのとは、ちょっと違うんだ……そうだな、そいつは『人気を集める』とか『注目を浴びる』に近いだろう? あたしが言っているのは……」


「『目障り』か」


 クレイが苦々しく言葉を吐き出す。


「ご明察だ……拠点を構える傭兵団は縄張り意識が強い傾向にある。カンディアの傭兵団から見れば、君達はよそ者だ。連戦連勝、それも完膚なきまでの圧勝では、面白く思わない者が多いのは当然だろう」


 そういや、不平不満を抱える傭兵崩れが、あちこちで騒ぎを起こしてるって聞いたっけ。


猛暑が和らいで、ほっとしていますが、お天気がはっきりしませんね。

気温の寒暖差のせいか、少し体調不良気味です。

みなさんも、お気をつけくださいね。


サラさん、絶好調ですw


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