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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
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祭りは終わらず……①

 突然のロスラムの申し出は、オレ達を含め関係者を慌てさせたが、規定に従ってなされたことを止める手立てはなかった。

 辞退の理由は主要な出場者の怪我によるとのことだったが、団の規模が大きく、登録人数も多いロスラムとしては、理由らしい理由とは言えないものだった。

 けれど、出場者の申し出を無下にすることはできず、結果アルサノーク傭兵団は不戦勝となり決勝へと駒を進めることとなった。

 観衆の多くは、優勝候補筆頭のロスラムと彼の古巣であるアルサノーク傭兵団との因縁試合を楽しみにしていただけに、大いに落胆した。


 そして、急に試合が無くなって時間を持て余したオレ達は、現在『桃色の口付け亭』で今回のロスラムの行動に対し意見を交わしている真っ最中だ。


「ロスラムの奴、いったい何を考えているんだと思う?」


「リデルさんに負けるくらいなら、試合を辞退した方がマシだと思ったのではないですか」


 オレの質問に対し、ネフィリカが答える。


「私も同意見ですね。ロスラム団長はああ見えて頭が回る人物です。何の考えもなしに辞退するとは思えません。不甲斐なく負けてロスラム傭兵団の印象を落とすくらいなら、いっそ出場しないほうが良いと判断したのかもしれません」


「そうかな? 俺は奴にしては潔すぎる決断な気がしてならないんだが……」


 ヒューがネフィリカの意見に賛同すると、クレイは「何か引っかかる」と相変わらず慎重な意見を述べる。


 ちなみに、オレの部屋で話し合っているのは、オレ・クレイ・ヒュー・ネフィリカの四人だ。


 ユールは別室で休んでおり、ソフィアは街へ出て情報収集を、サラとワークは不成立になった賭け金の払い戻しのために、ぶつぶつ言いながら出掛けて行った。

 どうやら、今回の試合中止はそっち方面の業界には、かなりの波紋を呼んでいるようだ。

 サラも、よく騒ぎが起きなかったものだと苦笑していたっけ。


 実際の話、もともと傭兵の多かったカンディアだが、大会期間中はより多くの傭兵が集っており、治安の悪化は目に見えてわかるほどだ。

 グビル団長のグレゴリ傭兵団が治安維持に一役買っていたが、その人員で捌けないほど状況は悪くなっているのだとディノンがぼやいていた。

 


「クレイの言う通り、オレとしては、奴らがこのまま何もして来ないとは信じられないんだけど」


「果たして、そうでしょうか? 今回の一件でグビル団長も伯爵様もアルサノーク寄りだと彼らも思ったでしょう。アルサノークはともかく、あの二人をカンディアで敵に回すとは計算高いロスラムからするとありえないことだと思いますが」


 ヒューの意見にも一理あると思うけど、オレとしては、あの執念深そうなロスラムの目を思い出すと、このままでは済まないような気もしていた。


 そんな風に考えていると情報収集に行っていたソフィアが戻って来る。よくない情報でもあったのか、表情が曇って見えた。


「リデル様、街で由々しき噂が流れています」


「由々しき噂?」


「はい、時期と動機から考えると、ロスラムが広めたのではないかと推察されます」


「わかった。それで、どんな噂なの?」


 オレの求めに応じ、ソフィアは説明を始める。


「アルサノーク傭兵団がグビル団長と通じているという噂が(まこと)しやかに流れています。今回のロスラム傭兵団の突然の試合辞退の裏側にも、この影響があったと囁かれています」


「グビル団長と通じてる? オレ達がまた不正してるとでも言いたいのかな」


「恐らく、辞退の理由を私達と大会運営のせいにしたいのでしょう。実はロスラムもまた被害者だと…」


 ヒューが呆れた思いを言葉ににじませる。


 でも、ロスラムのことだ。奴の反撃が噂を流す程度とは考えにくい。きっと二の矢、三の矢を用意しているに違いない。


「とにかく、奴らの報復がそれだけとは限らないからな。決勝が終わるまで用心に越したことはないだろう。特にリデル、単独行動は厳禁だぞ」


「わ、わかってるって。信用ないなぁ」


 あれ、オレ以外の全員が疑惑の目でオレを見てる……。

 し、信用ないんだ、オレ。


「で、でも、公衆の面前でロスラムの連中を叩きのめせなくなって、ちょっと残念だったよね」


「そうですね、とても残念です」


 慌てて話題を変えると、ネフィリカが、すぐに同調する。


 確かに、散々悪さをしてきたロスラム傭兵団に対して、物理的なダメージを与えられないのは、少々癪に障る。あ、別宅の地下牢は壊したけど、あれは不可抗力だから。


 まあ、ネフィリカの気持ちを考えれば、釈然としないのも当たり前だ。

 大切な傭兵団は解体寸前に追い込まれ、彼女自身が数々の嫌がらせを受け、その上で助力を依頼した元団員達も殺されているのだ。

 いくら、温厚なネフィリカでも許せないだろう。


 それに、このままお咎めなしでは、あのロスラムが反省するとは思えないし、ネフィリカに再び魔の手を伸ばす可能性も高い。


 大会が終わったとしても、ここを出るまでに何らかの手を打つ必要があると、オレはひしひしと感じていた。







何とか更新できました。ちょっと短めですが……。


なるべく週二更新を確保したいのですが、なかなか難しいですね。

無理のない範囲で頑張ります!


最近、右脳開発の成果で、ほんの少し絵がましになった気がしています。(微妙)

いつか、お披露目できれば良いのですが……w


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