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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
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決着……②

「伯爵様、それについて心配はご無用です。すでに問題は解決済みでありますから」


「ほお、クレイ君と言ったかね。大会後のアルサノーク傭兵団の行く末について、君には何か解決策があると言うのだな」


 再び、話に割り込んだクレイの顔をまじまじと見つめた伯爵は、その答えを求める。


「ええ、すでに何人かの人間がアルサノークへの入団を希望しています。大会終了後はもっと増えるでしょう。さらに、スポンサーについても、とある商会からも支援を約束する打診を受けています。伯爵様のご心配は杞憂に過ぎません」


「ふむ、しかしそれは先ほど私が申したように、大会優勝に伴う一過性の人気によるもので、すぐに化けの皮が剥がれてしまうぞ。君達のいないアルサノーク傭兵団に失望して、退団する者が後を絶たない状況に陥るのが目に見えている」


 伯爵の懸念に対してのクレイの返答は、確かに妥当性を欠いていた。彼らを引き止める算段がなければ問題の解決は無きに等しいからだ。


「彼らは辞めたりしませんよ」


 クレイが淡々と言い切った。


「む? どういう意味だ」


「今度の入団予定者は、俺の知り合いのお子さん達でね。将来有望な若者達なんです。立派にアルサノークを盛り上げていってくれますよ」


 知り合いのお子さんって……絶対『流浪の民』の一族だ。

 クレイの指示でアルサノークに入るのだろうか?

 何だか、オレの無責任な行動のために、若い彼らが犠牲になるような感じがして、いたたまれない気持ちになる。


 つい、クレイを非難の目で睨むと、クレイは慌てて言い訳する。


「いや、リデル。彼らは元々傭兵になるために勉強していたんだ。俺が無理矢理、傭兵にさせた訳じゃないからな。そりゃ入団先は斡旋したけど……」


 どうだか……でも待てよ、『流浪の民』の教育機関には傭兵学校みたいなものがあるって、前にクレイが言ってたっけ。

 そこの卒業生か何かだろうか。


「それとスポンサーの件も大丈夫です。とある商会も、俺達が抜けたとしても支援を打ち切ることはないと断言できます」


 それもきっとクレイ絡みの商会に違いない。でも、クレイ……ちょっと肩入れし過ぎじゃないか?

 どれだけ、アルサノークに投資するつもりなんだ。



「そうか! ようやく思い出したぞ」


 今まで黙って聞いていた伯爵が、突然声を張り上げた。

 驚いて伯爵を見ると、しきりに頷きながらクレイを見つめている。


 ん、どういうこと?


「最初見たときから、どこか見覚えがある顔だと思っておったが……お主、ゴルドーのところの小倅だな」


 ゴルドー……?


 どこかで聞いた名前だぞ。

 そうだ、確かクレイのお父さんが経営してる商会だったような……。


「人違いだ。俺とは全く関係ない」


 珍しくクレイが動揺してる。


「いや、間違いない。お主がこの娘よりもう少し下の年の頃、父親のレオポルドと一緒に挨拶に来たことがあったでろう。忘れてはおらんぞ」


 十代のクレイか、ちょっと見てみたい気もする。 

 伯爵が覚えているほど、印象に残っていたということは、いったいどんな少年だったんだろう。

 かなり興味が沸いたぞ。今度、こっそりソフィアに聞いてみよう。


「はて、お主何故こんなところにいるのだ? 家を継いだのではなかったのか」


「オストフェルト伯爵様、その話は今回の件とは関わりの無い話です。どうか詮索はご容赦のほど願います」


 クレイは取り付く島も与えず、話は終わったとばかりに深々と頭を下げる。


 身分の高い人との話を一方的に切り上げるだなんて、とても失礼な行為だったけれど、伯爵は怒る素振りも見せず、鷹揚に頷いていた。


「なるほど、ゴルドー商会絡みなら合点がいった。アルサノークの名を残すことに決めたのだな」


「いえ、それは……」


 違うとクレイは言いたかったようだけど、伯爵は一人納得していた。


「言い訳せずともよい。確かに『流浪の民』の一族としては『アルサノーク』の名は重要であろうな。それなら話はわかった、アルサノーク傭兵団の進退については物申すのはよそう」


 クレイは何か言いたそうだったが、伯爵の様子を見て諦めたのか押し黙った。


 結局、どういう話か、オレにはさっぱり理解できなかった。後でクレイから、きっちり聞き出さないと。


「さて、それでは最後の質問だが……」


 伯爵は再度、オレへと向き直る。


「リデル殿……君はただの傭兵ではあるまい。本当のところ、いったい何者なのだね?」


「へ?」


 いきなりの問いかけに、オレはかなり間の抜けた顔をしてしまう。


「な、何を言ってるんですか! オレは、純情可憐な普通の女の子に過ぎませんから。ちょっと人より運動神経が良いだけで……」


 『普通の』という表現にクレイとグビルは「嘘付くな」という視線でオレを見た。

 けど、伯爵はオレの主張を意に介さず、確信に満ちた表情で断言する。


「君が普通の女性なわけがないだろう。考えてもみたまえ」


 伯爵は指を一本、立てる。


「一つに、群を抜いた戦闘力だ。ルマの武闘大会無差別級を準優勝、今大会でも破竹の勢いで勝ち進み優勝も視野に入れる状況にある」


 二本目を立てる。


「二つに、高名な『白銀の騎士』を従え、傭兵団の盟主と称されるグビル団長と親しくし、あまっさえ神殿にも顔が利くという」


 さらに三本目。


「三つに、帝国を陰から牛耳ると言わしめた『ゴルドー商会』の次期当主と仲睦まじく、その資産や配下も自由自在だ」


 伯爵は睨むように言った。


「これのどこが、ただの傭兵であるものか!」


 伯爵の言葉に、隣のグビル団長が無言で大きく頷いている。


 ぐぬぬ……反論できない。

 こうやって列挙されると、オレってやっぱり普通じゃないのかも……。

 いやいや、周りが凄いのであって、オレ自身が凄いわけではないから。


 そう思い込もうとしていると、伯爵は痺れを切らして再度、言う。


「それだけの物を持つ君は、いったい何者だと言うのだ?」


 何者と言われても困る。

 今、言われたことは(事実と異なる部分もあったけど)、ほとんど皇女になる前にできた関係で、その時は本当に一介の傭兵だったのだから。


「伯爵様、すみません。少しいいですか?」


 オレが返答に困っていると、クレイが横から助け舟を出してくれる。


三連休は、いかがでしたか?

私は、やりたかったことができて満足してます。

睡眠、家事、ゲーム!……有意義でしたよ。


ただ、凹んだのは最後の日に車をバックした際、電柱にぶつけて文字通り凹んだことぐらいですか(泣)

ええ、かなり凹んでます(物理的にも精神的にも)

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