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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
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ドゴスの助言……④

 そして、現在のオレはというと、ひたすら猛省中である。


 試合を終えて意気揚々とみんなのところへ戻ったところ、ネフィリカは大絶賛で迎えてくれたけど、クレイにはしこたま怒られた。


「何をやってるんだ、お前は!」


「え? 戦って勝っただけだけど」


「勝ち方ってもんがあるだろう。お前のはやり過ぎだ」


「でも……」


 勝ったんだから、そんなに怒らなくてもいいじゃないか。


 オレが不満そうな顔をしていると、クレイはげっそりした表情で続ける。


「いいか、お前はさっきの試合……それも優勝候補の一角だったチームの5人の内、4人もたった一人で倒してしまったんだぞ!」


 そうか、けっこう強いと思ったら、優勝候補だったのか。それを4人も倒した……って、ちょっと待て!

 オレは、やっと自分の置かれている状況に気付いて、真っ青になる。


「ようやくわかったか。いいか、たぶん武闘大会に関わってる連中はすべて、お前と単独で戦える者は皆無だと気が付いた、それどころか五人全員でかかっても勝てない化け物なんかじゃないかと疑り始めている」


 どうしよう……それは確かに不味い。


「さらに、このまま優勝したら、お前の強さばかり悪目立ちしてしまうぞ。その時になって、大会が終わったので、もうアルサノークを退団していて、所属はしてませんなんて言い訳が通じると思うか?」


 むうっ……それについては、クレイとヒューも同じ条件だと思うけど。


「つ、次の試合は大人しくするよ……」


 オレが神妙そうに言うと、クレイも語気を弱めた。


「わかればいい……それと、戦い自体はとても良い動きで良かったと思うぞ」


 クレイ……最後にぼそりと褒めるなんて、どこのツンデレだ。




 ちなみにオレ以外に武器を細工された者がいたかどうかは、結局はっきりしなかった。

 試合終了後にオレがみんなのところへ戻った時には、すでに模擬剣は大会係員に回収された後で確認のしようが無かったのだ。

 不正を訴えようにも、模擬剣が何かの拍子に折れてしまうことは往々にしてある上、前々回の試合でも剣を折っているオレとしては、信じてもらえる可能性は低い。

 なので、運営に声を上げるのは諦め、次回の試合で自分の剣に細工がされてないか事前の確認を怠らないようにすることを決めるにとどまった。


 とにかく次の試合に勝てば、その次はロスラム傭兵団が相手だ。奴らがなりふり構わず妨害してくることは必至と言えた。


 なので、お互いの身辺に十分、気を配ることを決め、それを心がけている最中に、その事件は起きた。


 例の『桃色の口付け亭』に潜入してきた人物が行動を起こしたのだ。


 新米のため下働きしか許されていなかったその男は、調理に使う水瓶に薬を混ぜたところを監視していた者に取り押さえられた。

 毒薬ではなかったが、食中毒に似た症状を引き起こす薬草らしく、気が付かなければオレ達以外にもたくさんの利用者が被害を受けるところだった。


 捕らえれた男は他の宿屋から『桃色の口付け亭』の評判を落とすように頼まれたと自白し、ロスラムとの繋がりは綿密な調査によっても見出せなかった。


 けど、どう考えても、奴らの企みに間違いないのは確信できたし、関係の無い人々を巻き込むそのやり口にオレは怒りを覚え、よりいっそう『打倒、ロスラム!』に燃えることとなった。



◇◆◇◆◇



 次の対戦相手は『イオソルツ傭兵団』に決まった。最近の情勢を踏まえ、団の縮小を図り少数精鋭に編成を変えている傭兵団とのことだ。

 それなりに実力のある傭兵団なのだけど、『ラチュロウ傭兵団』を倒したオレ達は、一躍優勝候補の一角に名を連ねることになり、オッズは互角となっていた。

 サラは渋い表情で「旨みが減った……」なんて言ってたけど、オレに言われても困る。


 とにかく、まずここに勝って、ロスラムと戦う権利を得なければ。

 オレ達は気合を入れて、対『イオソルツ』戦に臨んだ。



 今回の舞台ステージは、『攻城戦』をテーマにしているとの話で、闘技場には小さな砦を模した構築物が用意されていた。

 公正を期すために試合前にくじが引かれ、オレ達は攻め手に、相手方は守り手に決定した。


 双方が配置につき、試合開始が告げられると大歓声が上がる。驚いたことに、そのほとんどがオレに対する声援だった。


「どゆこと?」


 オレが訝しげにしているとクレイが、ご丁寧にも説明してくれる。


「お前、帝都の闇闘技場で『白き戦姫』として悪名を馳せただろう。あの話が、どうやらカンディアに伝わったらしく、今やお前の人気はうなぎのぼりだそうだ」


 うえっ……人の黒歴史をばらしやがって。


「その上、その仮面の下の素顔が本当に美人かどうかも賭けの対象になっているらしいぞ。負けたら仮面を剥がされるのは決定事項だそうだ」


 そ、そんな話は聞いてないぞ。これは絶対に負けられない。

 そうでないと、こんな恥ずかしい格好している奴だと日頃から思われてしまう。


「ネフィリカ! 今日も勝つよ」


「はい、リデルさん!」


 オレのいつも以上の意気込みにネフィリカも元気に答えた。




 一方、相手方の『イオソルツ傭兵団』はオレ達の予想に反し、守りやすい砦での防御を捨て打って出ようとしていた。


 5対1でもオレに敵わないとしたら、守っていても勝機がないという判断だ。アルサノークが分散して砦を攻めようとしているのを尻目に、大将を含む5人全員が後方にいるネフィリカに殺到し勝負を決めようとの作戦だったのだ。


 その策は完全にオレ達の意表を突き、思惑どおり5人がネフィリカと護衛一人を取り囲んだ。


 けど、たった一つの計算違いは護衛に付いていた一人が、今回は自重しようと後方に残っていたオレだったことだ。


不運な『イオソルツ傭兵団』の皆さんに幸あれ。

いよいよ『ロスラム傭兵団』との対決が……!?


3月は毎年の事ながら、忙しくなりそうです(涙)

更新、遅れたらごめんなさい。



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