表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
256/655

ロスラム傭兵団……①

「おい、てめーら。街の往来で何を騒いでいやがる」


 ドスの利いた低い声があたりに響いた。


 視線を向けると、見るからに品の悪そうな猪のような男が配下を引き連れて、こちらを見ている。

 けれど、その声を聞いたとたん、先ほどまでニヤニヤ笑って、だらしない感じだった男達が背筋をぴんと伸ばして、一斉に整列した。


 いったい、どうしたんだ?


「団長、お疲れ様です。アルサノークの団長の行いが目に余りましたので、少しばかり注意を……」


「ふん、親切もほどほどにな」


「はっ」


 鷹揚に言った男は部下の返事に満足そうに頷くと、オレ達に目を向ける。


「ネフィリカお嬢ちゃん、まだ性懲りも無く傭兵団ごっこを続けようとしてるのかい? 前にも言ったが、俺のところに来れば悪いようにはしないぞ」


 どうやら、あれがネフィリカの仇敵であるオダン・ロスラム団長らしい。

 アルサノーク傭兵団を乗っ取った男と聞いたけど、脂ぎった迫力のあるおっさんで言い方も態度もいけ好かない感じだ。


「お前のような下種げすの元に行くぐらいなら、死んだほうがましです」


「がはは、相変わらずな物言いだな。だが、気の強い女を屈服させるのは嫌いじゃない。どうする、今日はいつもの腕の立つ護衛もいないようだが……ん?」


 ネフィリカに冷たく拒絶されても、ニヤニヤと舐めるような目付きでネフィリカを眺めたオダンは、前に立ちはだかったオレとネフィリカを守るヒューの存在に気づき訝しげな顔になる。


「おめーら、いったい何者だ。その女の肩を持つと痛い目にあうぞ」


 典型的な悪人の台詞にオレは思わず吹き出しそうになる。


 けれど、オダンの脇に立つ人物に目をやり、表情を険しくした。

 髪を後ろに撫で付け、鼻の下に髭を蓄えた渋めの男……ドゴス・ベンゼルは、抜け目のない目付きでオレ達を興味深げに眺めていた。


 基本的にゾルゲンと似ているが、奴よりは幾分か頭が良さそうな……いや、ずる賢しそうな印象を受ける。着ている服装も洒落ていて、自分がどう見えるかを計算している風にも見えた。


 フードを被ったオレが、かつて同じ傭兵団に所属していて、弟が執着した挙句に戦争にかこつけて殺そうとしたリデルだとは思ってもいないようで、横に立つオダンに対し眉を顰めながら苦言を呈した。


「団長、そろそろお戯れが過ぎるのではありませんか? 白昼に大勢の団員を動かすとなると、往来の住民達をいたずらに怖れさせることになりかねません」


「ふん、怖がる奴は怖がらせておきゃいいんだ。どうせ何もできやしねえさ。それと、ドゴス。俺はいつだって本気だ。お遊びなんて無駄なことはしねえ」


 獰猛な野獣のような目付きでドゴスを睨む。


「これは失礼しました。前言を撤回します」


「それでいい。あんたは頭が切れるし有能だ。だが、俺は逆らうものには容赦しねえんだ。覚えていて損はねえぞ」


「もちろんです、団長」


 丁重に頭を下げるドゴスの目はすっと細くなるが、オダンの視界には入っていない。


 なかなか、緊張感のある関係のようだ。


「それでだ……話は戻るが、おめえらは何もんだ。俺に楯突くとは、ずいぶんと命知らずのようだな」


 歯をむき出しにして品悪く笑うオダン団長は、まさしく獲物を狙う猛獣に見えた。


 そして、オレは……おそらくヒューも、このけものの戦闘力の高さと何をしでかすかわからない狂気を純粋に理解した。


 運営所の職員も周囲にいる傭兵達も、関わりになりたくないのか遠巻きにこちらを見ているようだ。

 端から見れば、ネフィリカとオレ達は絶体絶命に見えたに違いない。沿道の市民達は「可哀相に」と目を逸らしながらも成り行きに注目している。


 オレとしてはこれ以上、事を荒立てたくはなかったが、降りかかる火の粉は払うしかないので、あえてのんびりとした口調でオダンに告げた。


「あの……オレ達、これから宿へ帰るところなんで道を空けてくれるかな」


「な、なんだと!」


「馬鹿にしやがって」


 努めて普通の調子を心がけたのだけど、取り囲んだ連中の気に障ったのか、いきり立って大声を上げ始める。

 けど、オレが少しも怖れていないことに気づいたオダンは訝しげな表情を見せ、同じくそれに気づいたドゴスは目を丸くしてオレ達を見つめていた。


「バルボフ! 前へ出ろ」


「へい、団長」


 オダンはオレ達を睨みつけながら、配下の名を呼ぶ。


 それに応えて大男が囲みの後ろから、うっそりと前へ出る。大きさだけならサラの連れのワークをも凌駕するほどだ。

 でも、オレから見れば動きは鈍重で、力はあるかもしれないが、たいして強そうには見えなかった。


「バルボフ、この坊主に大人の厳しさを教えてやれ」


「へい、わかりやした」


 オダンのニヤニヤ笑いを見た瞬間に、奴の心理が透けて見えた。


 たぶん、オダンはオレ達に本気で害をなそうとはしていないのだ。

 ただ、追い詰めるだけ追い詰めて、オレ達が窮する様を見て、加虐心を満足させたいだけのように思える。

 けど、奴の思い通りになってやるほど、オレは親切ではなかった。


すみません。昨日、更新できなかったので、本日更新しました。リアルがある事情で急に忙しくなったので、遅れる場合があるかもしれません。最悪、週一更新になったら、ごめんなさい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=687025585&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ