面談……④
すみません。いつもの日時に予約投稿したつもりが、消してしまっていたようです。
気がつくのが遅かったので、こんな時間の投稿になりました。
申し訳ありません。以後、気をつけます。
あ……せっかく前書きを書いてたので、ひとつお願いを。
か、感想とかもらえると凄く嬉しいです。
反応がないと気分が湿ってきてしまって……。
「とにかくだ。対決姿勢から対話姿勢に大きく舵を切った両陣営の前線は目に見えて落ち着いてきている。皇女様のご帰還からここ最近まで、大規模な戦いはおろか小さな小競り合いさえ起きていない」
へぇ、そうなんだ。ケルヴィンから、戦争状態が治まりつつあるとは聞いていたけど、最前線はそんな風になってたんだ。
「これにより、傭兵の需要が著しく下がっているのだ。各地で契約の見直しが相次いでいると聞く」
まあ、当然の話だ。
本来は、戦争の時だけに雇用されるのが傭兵の本質であり、戦争がなければ契約し続ける必要は無い。
一時雇いでなければ、それは傭兵ではなく通常は正規軍と呼ばれるだろう。
だが、今まで帝国はずっと内戦状態であったので、常時戦闘が起こる可能性を考慮して、各地の領主達は長期に渡り傭兵を抱え込んでいた。それは、戦いが勃発した際に雇おうとすると、契約額が高騰したり、敵方に雇用を独占されたりするケースがあるからだ。
けれど、内戦が終わるなら話は別になる。
生産性がなく消費ばかりする金食い虫の傭兵を、いつまでも雇っておくほど各地の領主は裕福ではない。もっと言うと、長引く内戦で疲弊しきっているとも言えた。
「そう、見直しというよりは契約の終了が各領主の間で取りざたされている。そして、ここカンディアも例外ではない。むしろ最前線であり、多くの傭兵を抱えているカンディアこそ、その影響をまともに受けていると言ってもよい。実際に、カイロニア公国からも資金援助の打ち切りの話が出ているほどなのだ」
確かに、防衛上カンディアに傭兵は不可欠だ。戦時であれば、とても正規軍だけでは守り抜くのは難しいだろう。
けれど、対話ムードが広がりを見せ、戦闘が回避される事態となると、話は変わる。
オストフェルト伯領単独で、多数の傭兵を維持し続けるのは、非常に困難と言えた。
「カンディアには大手の傭兵団の本部が設置されている関係で、私のところにも多くの相談が寄せられている。帝国内が平和になるのは好ましいことだが、仕事にあぶれる者にとっては切実な問題だ。そこで、考え抜いて導き出した答えが……」
「武闘大会ってこと? よく意味がわからないんだけど」
「各領地では傭兵契約の打ち切りと同時に、領主軍の再編成が行われている。それは、平和になれば、今までと比べ経済活動が活発になり、領内の治安維持が重要となってくるからだ。そのために優秀な人材をぜひとも確保したいと、どの領主も考えている」
「それなら、今抱えている傭兵をそのまま領主軍に取り立てればいいんじゃないの」
「なかなか、そうはいかんのだ。優秀で実直な者なら、当の昔に傭兵でなく領主軍に取り立てられているだろうさ。そうでないから、傭兵のままなのだ。したがって、両者の関係は芳しくないことが多い」
「でも、そこにいるグビル団長のように実績を上げている傭兵団だってあるだろう」
「大手はそうだろう。特にこの男のところは傭兵を募り、一人前に育て、各地に派遣し収益を上げている。領主などに頼らなくとも、生きていけるだろうさ」
「買い被りですよ、伯爵様。領主の皆様方があってのグレゴリ傭兵団です」
髭団長がにこにこしながら、訂正する。
けど、伯爵の言うとおり、グレゴリ傭兵団は治安維持や商隊の護衛など、戦争以外のところで業務の幅を広げ、着実に業績を上げていると耳にした。
たぶん、内戦が終わったとしても、グレゴリ傭兵団は生き残っていけるに違いない。
「だが、中小の傭兵団はそうはいかん。生き残るために名を広める必要がある。しかし、そもそも戦争が無ければ、武名を上げる舞台がないのだ」
そこで、やっと伯爵の企図が見えた。
「武闘大会で武名を上げ、雇用主にその存在をアピールする。上位入賞ともなれば、上手くいけば領主軍に取り立てられ、そうでなくとも新規の雇用契約が得られる……そういう話だ」
伯爵の表情は真剣だ。
傭兵の街と呼ばれるカンディアの領主たる伯爵の意思が伝わってくる。
「そして、良い成績を残せなかった傭兵団は、自己の実力を肌身で感じ、足を洗って、真っ当な職についてもらいたい。せっかく、世の中が落ち着くのだ。新たな生き方を模索して欲しいと願っている」
それで、傭兵のため……か。
まさか、伯爵が傭兵の行く末について、ここまで真剣に考えているとは思わなかった。
ずっと最前線で戦ってきたから、仲間意識があるのかもしれない。
ちょっと感動してしまう。
皇女のオレなんかより、よっぽど世の中のことを考えている気がして、自分が恥ずかしくなった。
「もちろん、綺麗ごとだけの話ではない。傭兵の街と呼ばれるカンディアなら、仕事にありつけるだろうとカイロニア中の傭兵達が続々と集まってきている。何とかしてやりたいが、新規雇用など当然あるわけもない」
伯爵は無念そうな口調で続ける。
「現在のカンディアは、そうした仕事にあぶれた傭兵達が街に溢れ、治安の悪化をたどっているのだ。領民を守る立場としては到底看過できない事態となっておる。このままでは、カンディアどころか、オスフェルト伯領自体が立ち行かなくなるのは明白であろう」
傭兵だけでなく伯爵領のためでもあるわけか……。
「まあ、武闘大会開催の目的はそんなところだ。そこで、ぜひルマの武闘大会に上位入賞者した貴殿に率直な意見をいただきたいのだ」
え、オレの意見ですか?