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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
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面談……②

「それについては、オレの方から何も言うことはないよ。パティオにとっての重要な理由なんて、本人に聞くしかわからないことだからね」


 強気で対抗するために、オレは今までの丁寧な口調を改めて、いつもの調子に戻す。


 クレイが何か言いたげな目をしてオレを見ていた。


 わかってるよ、クレイの言いたいことは。


 神殿長とは深く関わらないで、貰うもの貰ったら、さっさと神殿から退散するというのが、当初の方針だったからな。

 オレが神殿長に反論したのを意外に思ったんだろう。


「果たしてそうですかな。パティオをして、そこまでさせる貴方がその理由を知らないとは、なかなか信じにくいことですが……」


「神殿長が信じてくれなくても、オレとしては一向にかまわないんだけど。ただ、どうしても知りたいって言うんなら、別に話したっていいぜ」


「リデル……」


 クレイが驚いた顔をする。


「ほお……それはそれは」


 神殿長も、まさか素直に答えがもらえるとは思ってなかったようで意外そうな顔付きだ


「ただし……」


 オレはにやりと笑って念を押した。


「一般的に、悪巧みを知っていて加担するのと知らないで加担するのとでは、犯す罪の重さが全く違うってことだけは覚えておいてくれよ」


 オレの言葉に神殿長は呆気にとられた表情になる。


「警告はしたぜ。それに『仔細を問わず』っていう大神官の命にも背くんだ。それなりの覚悟をしてると理解していいんだな」


 オレが啖呵を切ると、神殿長は何ともいえない表情でしばらく黙した。

 が、次の瞬間、顔を歪めたかと思うと爆笑し始める。


 あれ、何で笑うかな?


 オレが憮然とした表情で神殿長を見ていると、一頻り笑った後、呼吸を落ち着かせ何とか会話に復帰する。


「いやはや、これは失礼いたしました。これほど笑ったのは久しぶりの出来事でしてな」


「どこにも笑う要素がないように思えるけど」


「いやいや、貴方は実に面白いお方だ。あの偏屈なパティオが肩入れするのも道理です」


「そりゃ、どうも……」


 何だか褒められてる気がしないぞ。


 オレの屈託に気づかず、神殿長が恭しく告げる。


「リデル様、カンディア神殿は親書どおり最大限の便宜を貴方のために図りましょう」


 そう言うと神殿長はオレに対し深々と頭を下げた。


 どうやら、弟子の性格は師匠譲りのようだ。




 神殿長との面談を終えたオレとクレイは、旅費や必要品の調達を神官とやり取りしていたソフィアと合流し、囚われ(?)のヒューの元へと戻った。

 廊下で立ち話していいような立場の人間ではなかったので、どうやら談話用の小部屋を借り切って話し込んでいたらしい。


「リデル、ちょうど良いところに来ました。これから本題に入るところです」


 オレ達を迎えたヒューの表情は心なしか、ほっとしているように見えた。

 ヒューは、どんな人との会話にも必ず益があるという信念を持っていて、会話中の感情をめったに見せない。


 そのヒューがわずかばかりの疲れを滲ませているのだから、なかなかの会談だったのだろう。


 すまない、ヒュー。あとで肩をもんでやるから。


「ヒュー殿、ありがとう。が、しかし、リデル殿には私から話すとしよう」


 伯爵はオレ達を椅子に座らせると、真剣な表情で言った。


「実はこのカンディアで『武闘大会』を開こうと考えているのだ……」


「は?」


 オレの返答は失礼極まりないものだったけど、伯爵は気づかぬ振りなのか、話を続けた。


「リデル殿はどう思うか、忌憚の無い意見を聞かせて欲しい」


 どう思うかも何も、何で今さら武闘大会なんだという台詞が口元まで出て、慌てて飲み込む。


 武闘大会として、最も有名なのはルマの武闘大会だが、他にもディグラの武闘大会など各地に大小様々な武闘大会がある。


 はっきり言って、娯楽としてはありきたりだったし、お客が集まる中心都市でもなければ、たいした興行収入も見込めないはずだ。


 そんな当たり前のことがわからないほど、伯爵は耄碌(もうろく)しているのだろうか。


 噂では軍事に長けた智将であると同時に内政も堅実にこなす優れた領主と聞いていたが、本当なのか少し不安になる。


 伯爵はオレの表情に気づき、苦笑いする。


「リデル殿は正直者と見える。なにか(ろく)でもないことを思いついて、困った質問をしてくる馬鹿な領主とでも思っているようだ」


 ぎくり。


 図星を突かれて、ちょっとばかり焦る。


「伯爵様、お人が悪いですよ。何の説明もせずに質問されたら戸惑うのは当たり前ではないですか」


 ニヤニヤしている伯爵を髭団長が軽く非難する。


「おや、そうであったか。それは悪かった」


 悪びれもせず、伯爵は笑う。


「では、何故今、武闘大会なのか、話を聞いてくれたまえ」


 伯爵は急に真顔になると、説明を始めた。



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