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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
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カンディア城塞都市……④

◇◆◇◆◇



「リデル、本当にあれで良かったのか?」


 クレイが物珍しそうに聞いてくる。


「何が?」


「いや、お前にしては、やけにあっさり引き下がったなと思って」


 どうやら、オレがアルサノーク傭兵団から大人しく立ち去ったのが不思議に思えたらしい。


 隣のヒューも気になるようで耳をそばだてている。


「ああ、そのことか。相手が話したくないことを無理に聞き出したって仕方ないだろう。それに大事な話だったら、なおのこと初対面の人間には話さないだろうし」


「それは、そうなんだが……」


 疑り深い目でオレを見つめる。


「何だよ、クレイ。それじゃオレがまるで自分のしたいことを押し通すだけの我がままな奴とでも思っていたのか?」


「違うのか?」


「…………クレイ」


 オレがリーリムに運ばせているテリオネシスの剣にゆっくり手をかけると、ヒューが慌てて、話に割って入る。


「リ、リデル! そうは言っても、確かにいつもと比べてあっさりしているように私も感じました。何か他に理由があるのですか?」


 仕方ない。ここは、ヒューの顔に免じて許してやろう。


 裏通りから表通りに戻ってきて、人通りも増えてきたので大立ち回りにも不向きだったし。


 ふん、クレイ命拾いしたな。


「まあね、口ではああ言ってたけど、ネフィリカは相当困っていたように見えたからね。もちろん、アルサノーク傭兵団自体もだけど」


「そうですね、何やら込み入った事情があるのは分かりました。では、もう一度機会を窺うのですか」


「うん、一応困ったことがあったら、宿を訪ねるように伝えたし、来ないようなら、もう一度顔を出すつもりだよ」 

 

「なるほど、得心しました。押して駄目なら引いてみるということですね」


「まあ、そんなところかな」


「へ~っ、お前にしては珍しく男女の駆け引きめいたことをするんだな。女になって、少しは成長したんだ」


 ふん、勝手にほざいてるがいい。


 オレだって駆け引きのひとつぐらいできるさ。


 いつか、オレが恋愛マスターになったら、吠え面かくなよ。


「そんなことはどうでもいい。それより、クレイ。この後の予定はどうなってるんだ?」


 クレイの冗談を無視して、オレは肝心なことを問いただす。


「そうだな、とりあえずリデルが恥ずかしがる例の宿屋に行ってソフィアと合流するつもりだ。馬もそこに預ける予定だったしな。市内を移動するとしても馬があると動きにくいからな」


「まあ、それはそうだね」


 オレはリーリムの鼻面を撫でて、「また、窮屈になるけどごめんな」と声をかけると、リーリムは黙って鼻を押し付けてくる。


 うん、可愛いなあ。


「そして、その後はカンディア神殿に赴こうと思ってる」


 クレイはオレとリーリムの様子を優しく眺めながら、これからの予定を告げた。


「カンディア神殿?」


「ああ、ケルヴィンとパティオからカンディアに着いたら、必ず神殿に寄るように言われてるんだ」


 カンディア神殿は帝国内有数の拠点神殿で、例のオレの身分を証明するというⅢ類神具『神位具現鏡』が設置されている神殿でもある。


 できることなら、近寄りたくはないんだけど。


 何となく嫌な予感がして……っていうか、オレの予感、けっこう当たってる気もするんだ。


「どうしても寄らなきゃならないのか?」


「あそこで、後半の旅程の路銀を調達する予定だからな。日程もシトリカのせいで延びたし、ヒューも増えたこともある。寄らないと少し心許ないかな」


「私の旅費については自分で出しますので、気にしないでください」


 ヒューがやんわりと辞退を申し出る。


「リデル、ヒューはそう言ってるが……」


「もちろん、オレ達の方から出すよ。わざわざ付き合ってもらってるんだから」


「ですが……」


「頼むよ、ヒュー。オレからのお願いだ」


「…………リデルにそう言っていただけるなら、承りましょう。その代わり、何でもお申し付けください。私の全力を持って、貴女の安全をお約束します」


「……わかった。よろしく頼むね」


 ヒューはそう言うけど、旅費を負担しなくてもヒューのことだから、オレのために身体を張って頑張ってくれるのは間違いない。


 そんなヒューに、少しでも報いたいと思うのはオレの自己満足だろうか。


 とにかく、今は旅費を負担させてくれるのだけで良しとしよう。


 そのためには、やはりカンディア神殿に行かなきゃならないようだ。


 オレは少し考え込みながら、当面の目的地である『絶対、口に出したくない宿屋』へと向かった。



◇◆◇◆◇


「そんなことが道中におありになったんですね……」


 アルサノーク傭兵団との話を聞いてソフィアが目を丸くする。


 続いて言おうとした言葉を素知らぬ顔で飲み込んだ。


 たぶん、それは(リデル様はどうしてこんなに厄介ごとにぶつかるのだろう?)に違いない。


 そんなことはオレの方が知りたいし、本当に勘弁して欲しい。


 ソフィアとくだんの宿屋で合流し、荷物を運び込みリーリム達を預けると、オレ達は予定通り大神殿に向かった。


 その途中で、今までの経緯をソフィアにかいつまんで説明したところだ。


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