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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
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出会いと再会 ①

ずいぶん、更新をお休みして申し訳ありません。

5月末までは、忙しい状況が続きますので、更新が不定期になるかもしれません。

なるべく週一更新したいと思っています。

み、見捨てないでくださいね(汗)

 ジュバラクから出てしばらくは、すこぶる順調な旅であったのだけど、次の目的地である『シトリカ』に近づくにつれ状況は一変した。


 この地方特有の天候で、季節の変わり目によく見られる……長雨である。


 雨が小降りになる合間を縫って馬を走らせていたが、旅程は遅々として進まない。けれど、人間もそうだが、馬の疲弊を考えると無理強いは禁物だ。

 替わりの馬も用意していなかったし、何よりも大好きなリーリムを手放す気など毛頭なかったからだ。

 自然と、移動より待機する時間の方が多くとられ、日ばかりがいたずらに過ぎていく毎日となっていた。


 

 ところで話は戻るけど、馬という動物は案外と雨に強い生き物だったりする。雨に濡れると、一番外側を覆う長くて硬い毛が束になって雨をまとめ、地面へと落とす。さらに、体表の皮脂が水分をはじき、地肌を覆う柔らかい毛が空気の層を作って体温を維持するのだという。

 なので、馬は雨の中でも体温を維持して、ある程度は走り続けることができるのだそうだ。


 ただ、人間もそうだけど、馬にだって好き嫌いはある。リーリムは意外にも雨が嫌いではないらしい。というより、じっとしているのが苦手で雨の中でもいいから、ずっと走っていたい性格のようだ。

 逆にクレイの馬は雨が好きではなく、雨の中へ走り出そうとすると明らかに尻込みするし、走行中に少しでも顔にかかると首を振って雨滴を飛ばし、濡れた状態になるのを嫌がった。


 そんな両極端な二頭のご機嫌を窺いながら、オレ達は現在小雨の降る中、旅路を急いでいた。


 おや、どうやら少し雨脚が強くなってきたか。


 オレは併走するクレイに声をかける。


「クレイ、少し雨宿りするか?」


「そうだな、そろそろこいつも限界のようだしな」


「リーリムは、まだ平気みたいだけどね」


「乗り手に似て、神経が図太いんだろう」


「その台詞、そっくりお返しするよ。その馬、誰かと一緒で神経質過ぎると思うぞ」


 クレイは苦笑いでそれに答えると、視線を前方に移して言った。


「まあそう言うな、ちょうどいいし、今夜はあそこで一泊するとしようか?」


 クレイの目線を追うと、道から少し入ったところに小屋があるのが見えた。


 雨風が凌げるなら、異存はなかった。


 遠目には今にもつぶれそうな外観に見えたが、近づいてみると意外にも造りはしっかりしているようだ。元々は狩猟小屋か何かだろうか。


 裏手に回ると幸運にも厩も立派にある。

 これで、リーリム達も雨風を凌ぐことができて、オレは正直ほっとした。


「俺は馬を繋いでくるから、お前は中の様子を見てきてくれ。ついでに先に着替えておいてくれると嬉しい」


「了解。リーリムを頼むね」


 恐らくは、オレを冷たい風雨から一刻も早く遠ざけようとするクレイの気遣いなのだろうと少し照れくさかったけど、この際遠慮なく甘えることにする。


 だって、ずぶ濡れで本当に寒かったんだもん。


 決して口に出して言ったりしないが、内心クレイに感謝しながら、オレは扉を開け小屋の中へ一歩入り……そして、そこで固まった。


 中には先客がいたのだ。




 こんな小屋に先客がいると思わなかったオレと同様、相手も雨の中を強行してくる酔狂な者がいるとは思っていなかったようで同じく動きを止めていた。


 一瞬で我に返ったオレの次の行動は、念のため手にしていたた愛剣の柄を握ることだった。

 何故なら、中にいたのは20代前半ぐらいの綺麗な女性と人相の悪い大男の組み合わせだったからだ。


 どう見ても犯罪現場に遭遇したとしか思えなかった。


 オレの行動を見て、目を見開いて固まっていた女性が慌てて口を開く。


「ま、待ってくれ。この男はあたしの仲間だ。悪人じゃあない」


 何度も間違われた経験があるのだろう。オレの表情を見て、すぐさま誤解を解こうと声を上げた。


「そ、そうなの?」


 オレは二人に視線を固定したまま、雨除けのマントを外し警戒しながら、ゆっくりと部屋の中へ進んだ。


「ああ、誤解させてしまったようで悪かったね。ワーク、強面で大男のお前が近くにいると、誰だって警戒してしまうよ。少し後ろに下がっていてくれないか」


 言われた男は大きな身体を一生懸命縮みこませると、部屋の隅へしおしおと引き下がった。

 尊大な口調の小娘とうなだれる大男の対比が何だか笑えた。


 オレの表情が和らいだのに気づき、相手の女性も安堵した様子で話しかけてくる。


「あたしは『サラ・エリュート』、あっちのでかいのは『ワーク』」


「あ、初めまして、オレはリデ……」


「おい、リデル。中の様子はどうだ?」


 オレが自分の名を言おうとしたタイミングで、クレイが無造作に扉を開け入って来る。


 大方、いきなり入ってきて着替えているオレを驚かそうと目論んだのだろうけど、意外な状況に面食らう。


 けれど、部屋の中央にいるオレとサラ、遠巻きに見ているワークに目を向け、すぐに訝しげな表情になる。



「いやいや、君もずいぶんと見目麗しいと思ったが、君の連れも実に良い男ぶりじゃないか。雨に降られて往生していたが、これは眼福、眼福……」


 クレイの鋭い視線にどこ吹く風で、サラさんはのん気な感想をつぶやく。


 見た目に反して男っぽい性格のようだ。

 でも、嫌いじゃない。むしろ、好ましく感じた。


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