新しい自分を見つけませんか?①
あれ、何だろう?
宙に浮いてる感じがする……。
あ、この匂い、クレイのだ。
お互い迷宮に入って水浴びもしてないから、臭ぇから近づくなって言い合いしてた筈なのに、何故だろう? 今は気にならない……。
「えっ!」
そこでオレは目が覚めた。
そして愕然とした。
な、何だと~、このオレがクレイの奴にお姫様だっこされているなんて。
「お、目が覚めたか?」
「目が覚めたか――じゃない。何だこの状況は?」
「ん~?お姫様だっこしてる……」
ごすっ。
オレはクレイの顔にパンチを浴びせると、腕の中で暴れた。
「馬鹿野郎!気持ち悪い、離しやがれ……」
「痛っ!ちょ……待て、暴れるな。暴れるとだなぁ」
パラリ。
オレの上半身にかけられていた布がはだけた。
え? ええええええぇ――――!
オ、オレに胸の谷間がある……。
「な、何じゃこりゃ――!」
「だから、言ったのに」
クレイが、やれやれといった顔をした。
落ち着け……自分。
オレはパニクる頭を整理しようと必死だった。
何故?こんなことに……そうだ!聖石だ。オレが願いを言おうとしたら、クレイの奴が……。
どすっ!
オレはクレイの腕から逃れると、奴の腹に思いっきり蹴りを入れた。
「お、お前なぁ――! お前のせいで、こんな姿に」
と言って、自分自身の身体の変化に改めて気づかされた。
身体が今までよりずっと軽い。
背も一回り小さくなった気がする。
両手を目の前まで上げてみる。
腕が……白くて細い。
脚もほっそりして長い。
そして……胸が重い……反対に下半身がすっきり(?)している。
違和感なんてもんじゃない!
違う身体になったみたいだ。
試しに胸を触ってみると、柔らかくて弾力がある。
下半身は怖くて見られなかった。
オレが呆然としていると、蹴られて吹き飛んだクレイが瓦礫の山から起き上がって言った。
「おい、リデル! 俺を殺す気か?」
腹を押さえながら、クレイがぶつぶつ言う。
「とっさに防御したから良かったが、普通の人間なら、確実に死んでたぞ」
へっ?
確かに思いっきり蹴ったけど、オレの打撃なんてクレイにとって虫に刺された程度にしか感じないと思ってた。
いや、変わったのはオレの方か……。
試しに床に転がっている石を拾い上げる。
オレの右手は、指が細くて白磁器のようになめらかだった。
強く握ると硬い石が一瞬で砕け散った。
人間とは思えないパワーだ。
本当に世界最強になったのかもしれない。
オレが自分の手をじっと見つめていると、クレイがいそいそと手鏡をもって近づいてきた。
「ほれ、見てみな」
そこに映ったのは、自分に良く似た見慣れない少女の顔だった。
黒髪はつやつやと光沢があり肩口まで伸びていた。
瞳は大きく黒目がちで吸い込まれそうな深淵を湛えていた。
鼻筋がとおり、口は小さく桜色だ。
手足からも容易に想像できた白い肌は、すべすべして透きとおるようだ。
むぅ……確かに可愛いかも。
しかし、オレとしてはもっと大人の女性が好みだ。
これでは幼すぎる……っていうか男の時のオレよりずっと年下に見える。
正直13、14歳ぐらいと言っていい。
はっ……。
気がつくとクレイが間近で見つめていた。
「クレイィィィッ!この野郎、お前のせいで!」
オレが殴りかかると、それを避けながらクレイが反論した。
「そういうリデルだって、願いを独り占めにしようとしただろ」
「ぐっ」
確かにそれを指摘されると痛い。
だが、それを認めたら負けだ。
「オレが場所を教えたんだから、オレに優先権がある!」
少々セコイがこの際、仕方がない。
「ふ~ん、最後の守護者を倒したの、俺だけどな……で、どうでもいいけど、リデル見えてるぜ」
「え?」
羽織っていたシーツが、ほとんどずり落ちて……。
オレはあられもない姿を全開していた。
「#$%&@¥=XYZ?!」
オレは意味不明な言葉を叫びながら、目撃者を血祭りに上げた。
ゼェゼェと息を切らしながら、もう一度シーツで身を隠す。
「クレイ!何で、オレは上半身裸なんだ。答えによっちゃ、ただじゃおかねーぞ」
「そうか。それじゃ、答えられん」
顔に青あざをつくりながらクレイが即答する。
「何だと!」
「冗談だ。全くからかいがいのある奴だな、お前は」
こ、こいつは……いつか殺す!
「ナイスバディ手前の発展途上のお前の胸が、皮よろいにつぶされて苦しそうにしてたんで、脱がしてやったのさ」
「見たのか?」
「もちろん!……あ、しかし、お前を心配してしたことで、邪な気持ちは……」
「邪な気持ちは?」
「たっぷりあった」
オレは怒る気力を無くして、深いため息をついた。
「あのぉ……クレイさん? オレ、鎧の下にちゃんと布下着を着ていた筈なんですけど……」
「些細なことを気にかけるな」
「こら! 何だと、お前、どこが些細なことだ!」
オレの非難をどこ吹く風で、クレイは真顔で答える。
「前の闘いの怪我で、血が染み込んで汚れてたから脱がしたんだ。傷口の様子も心配だったしな」
「あ……ごめん。ありがと」
どうにもクレイの真っ直ぐな目にオレは弱い。
いつもそうだが、何だかオレの方が悪かった気になる。
「それがな、リデル! 傷口は跡形もなく、白くて綺麗で、すべすべで手に張り付くような肌なんだよ」
「お、おま……何でわかるんだよ!」
「そりゃ、触ったからに決まってるだろ。見ただけで感触なんてわかると思うのか? 馬鹿だね、お前……」
前言撤回!
こいつが全て悪い!
オレの的確なパンチを受け、再びクレイは綺麗に吹き飛んだ。