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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
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可愛い子には旅を…… ②

「それはそうと、ヒューがいない間に帝国参事会があったんだ」


 それを誤魔化すように違う話題に変える。


「ほう、それは興味深い。国の重要会議ですので無理ならけっこうですが、内容をお聞かせいただけますか?」


「もちろん、ヒューならOKだよ」


 一瞬、ケルヴィンの苦虫をつぶした顔が浮かんだけど、スルーする。


「近衛軍の再編成がね……」


 その後は、帝国参事会の報告と12班のお泊り会の話題で盛り上がった。




「そう言えば、ヒュー。お師匠さんってオレの親父の友人だったよね」


 話の途中で、ふと思いついたことをヒューに聞いてみる。


「ええ、そう伺っています」


「それじゃ、皇帝時代の親父のこと詳しく知ってるかな」


「ずっと身近にいらしたそうですから、おそらくそうでしょう」


「ふうん……オレも向こうで会えればいいんだけど」


「え?」


 しまった、話に夢中なったせいでアリスリーゼで会えたらいいなって、つい口走ってしまった。


 クレイが目線で『馬鹿』と言っているのがわかる。


「リデル?」


「いや、ヒューが向こうでお師匠さんに会ったら、オレが会いたがってたと伝えて欲しいんだ……」


「……わかりました、必ず伝えておきますね」


「うん、頼むよ」


 ふう、何とか誤魔化せただろうか。



 その足で出立するというヒューはオレ達との会話を終えた後、名残惜しそうな表情で部屋を後にしていった。


「ヒューにも向こうで会えるといいね」


「そうだな。まあ、共通目標のレイモンド氏に会いに行けば、自然と会えるだろうさ」


「うん」


 オレはヒューの退出していったドアを多少の罪悪感を感じながら見つめた。



 ◇◆◇◆◇



「アリシア殿下、出立の準備が整ったと聞き及びましたので、参集いたしました。我々からお伝えすべきことがございますので、何卒お聞きとどけください」


 応接の間にケルヴィン、デイブレイク、パティオが揃っていた。

 オレの他にはトルペンと、いつも通り脇に控えるシンシアがいた。


 クレイは他に済ませておきたい準備があるとかで、ここにはいない。

 大方、クレイの一族とやらと最後の打ち合わせでも行っているのだろう。


 あの密談からすぐに旅立ちの準備が秘密裏に行われ、あれよあれよと言う間に今日のこの日を迎えた。

 午後の一番にクレイと共に宮殿を出発することになっていたので、こうして帝都を実際に動かしている三人と最終調整を行っているのだ。


 トルペンがオレに化けることについては、『彼ならそういうこともあるだろう』とデイブレイクとパティオも、あっさり納得していた。

 それでいいのかという疑問を甚だ感じるが、気にしないことにする。


「まず、宰相補は皇女殿下と一人二役を演じるわけですので、両者が同時に参加する行事等に注意が必要となります。参事会の方は、私が殿下の名代として出席しますので、トルペン様は宰相補として出席していただきます」


 両公爵も内政官を代理に出席させているので、こちらも問題はない。


「謁見や晩餐会等には皇女殿下として参加願います。もともと、宰相補はそういった催しに参加することはなかったので、問題はないでしょう」


「……ううっ、我輩の研究時間ガ…………」


 トルペンがぶつぶつ嘆いているが、この際無視だ。


「また、道中での経費については各地の神殿を介してお渡しする予定です。それについては、後ほどパティオ殿から詳細の説明がございます。……殿下、後のことは我々にお任せくだされば、良きように取り計らいますので、ご安心を」


 ケルヴィンが自信たっぷりに断言する。

 まあ、もともとオレがいてもいなくても、あまり関係なかったしね。


 あれ、何だかちょっとへこむ。



 ケルヴィンが話しおわると、次にデイブレイクが前に出る。


「私の口からお伝えすることは、ほとんどありません。殿下ほどの武人が他にはいないことは、剣を交えたこの私が一番よく知っておりますので。しかし、敢えて苦言を呈するなら、相手が格下でもご油断なさらぬようご忠告いたします。卑怯な策を用いて殿下を陥れることもあります故」


 デイブレイクは、やはり真面目だ。


「クレイ殿が同道するので安心はしていますが、ゆめゆめ面倒ごとには近づかぬようお気をつけください」


 横でシンシアが大きく頷くのがわかる。


 まったく心外だ。

 どいつもこいつも、オレが必ず厄介ごとに首を突っ込むと思っているらしい。


「了解した。肝に銘じるから安心して」


 けど、デイブレイクの言葉に誠意が溢れていたので、反論せず頷いて見せる。


「それと、近々オーリエが護衛として配属されますが、どういたしましょう?」


「ああ、それについてはユクから内情を話すようにお願いしてあるから」


「それでしたら、私の方は構いません。ただ、オーリエも付いて行きたかったと、後でむくれるでしょうな」


「もし、追いかけるなんて言い出したら、そこはデイブレイクの魅力でよろしく頼むね」


「仰っていることの意味がわかりませんが、軍に入ったのですから我が儘は許されません。私情で公務を離れるなど、もってのほかです」


 この堅物ぶりにオーリエが愛想尽かさなければいいんだけど。


「アリシア殿下、殿下の道中が無事であられることを祈念しております」


 そう言うとデイブレイクはパティオと入れ替わるように下がった。


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