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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
〇〇なんて今さらオレが言えるかよ!
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彼の想いとオレ 前編

 この段階においてもオレは完全に諦めてはいなかった。


 オレにあの不思議な光の存在があったからだ。

 ルマで瀕死だったソフィアがあの光で完治したことの記憶も新しい。

 毒物に効くかは不確かだけど、何にでも効果があるように感じられた。


 しかも、トルペンとの戦闘であの光を自在に使う感覚を覚えた気にもなっていた。

 多少、不安は残るけど、何とかなるだろう。


「敵はあらかた逃げました。リデル様、怪我はありませんか……そばに居られなくて申し訳ありません」


 隊長を倒したクレイが合流してきて、そう頭を下げた。


「ケルヴィン局長は無事です。こちらの被害は護衛が1人倒され、2人が重傷ですが、命には別状ありません」


「報告ありがとう、クレイ……こちらもユクが大変なんだ」


 クレイの報告で隊の状況がわかって助かったけど、今はそれどころじゃなかった。


 クレイとヒューを連れ、急いでユクの元へ戻る。


「リデルさん……」


 トルペンが真剣な顔付きでオレを見つめる。


「トルペン、ごめん。解毒剤は見つからなかった」


「そうですカ……」


「でも、ちょっと待ってくれ。オレに考えがあるんだ」


 クレイに目配せをすると、奴は懐疑的な目でオレを見る。


「大丈夫ですか?」


 オレの意図を正確に把握したようだけど。何だよ、その不安げな表情は……。


「ま、任せておけ……もう一刻の猶予も無いんだ」


 激しい息遣いだったユクのそれは、すでに小さく途切れ途切れになっていた。


「リデルさん……」


「リデル、お願いします」


「安請け合いは止めた方が……」


 トルペンとヒューはオレが何をしようとしているか、本当はよくわからなかったのかもしれない。

 でも、二人の懇願を受け、クレイの意見を無視し、オレは息を整えると精神統一を始めた。


 トルペンとの戦いを頭の中に呼び覚まし、今の自分とあの時の自分を重ね合わせる。


 確か、光が発動したのはトルペンとの戦闘中で、かなりヤバイ状況だったよな。

 光の力がなかったら、倒されていたかもしれない。


 そう……その時、不意に女の人の声が聞こえたんだっけ。


『二度目だから、きっと上手くいく』


 それからだ、光がオレの意思に従うようになったのは。

 あの時、出来たんだ……きっと今度も上手くいく。


 ユクのために成功しなきゃ。


 オレは白い光を放った……。





 …………つもりだった。


 けど、何も起こらない。

 息を止めオレを見つめるトルペン達を前にして、激しい焦燥感に襲われる。


「……リデルさん?」


 トルペンが心配そうに、そして思いを込めた目をしてオレに問いかける。


 な、何で何も起こらない……どうしてなんだ。

 あの時と、気持ちは同じなのに。


 『何故』という言葉だけが頭の中をぐるぐると空回りする。


「その辺にしておけ……無理は禁物だ」


 突然、優しく肩に手を置かれる。


 ぶっきらぼうに話すクレイに馬鹿をやってた頃の面影が見え、泣きそうになった。


「トルペン、リデル……様を責めないでやってくれ。奇跡の力っていうのは、人間が自由に扱える代物ではないんだ」


 そして、視線を落とすと沈痛な面持ちで言う。


「ユクのことは……すまない。これ以上の手は打てない、諦めてくれ」


 その言葉にオレは打ちのめされ、トルペンに抱かれたユクに縋り付いた。


「ごめん……ユク。オレのせいで……」


 ユクの顔色に生気が見えない。


 そんな……。

 ユクが……ユクが死んじゃうなんて。


 信じられない……いや、信じない。

 何か方法が……そうだ聖石だ。

 聖石を探して生き返らせてもらうっていうのは、どうだ?


 オレがそんな非現実な考えに囚われていると、トルペンが急に立ち上がる。


「リデルさんに一つお願いがありマス」


 トルペンは真剣なまなざしでオレを見下ろした。


「今から私が言うことをやっていただきたいのデス」


「トルペン……?」


 涙でぼやけた視界でトルペンを仰ぎ見る。


 次の瞬間、トルペンは元の竜の姿に戻っていた。


(姫よ、私の声が聞こえるか?)


「ああ、聞こえるけど。いったい何をさせるつもりなんだ。ユクを助ける方法があるのなら、なんだってするぞ」


(それは有難い、貴女に期待しよう)


 オレとトルペンの念話は、クレイとヒューには聞こえていないようだ。


 どうやら、周囲に聞かせたくない話なのだろう。


(私には再生能力があると先ほど話した。負傷はもとよりあらゆる疾病や毒物も治癒してしまう能力だ。恐らく、私の娘であるユクもその能力を引き継いでいる可能性が高い。ただ、活性化していないのだと思う)


「そうか、その能力があれば助かるんだな」


(そうだ……そのために私の再生能力の源をユクの体内に入れて活性化を促してやる必要があるのだ)


「再生能力の源?」


(わかるだろうか、私の顎の下に一枚だけ向きの違う鱗があるのが……)


 目を凝らすと、確かに逆さ鱗が一枚あるの見える。


「うん、わかるよ。一枚だけ、他のと違う」


(では、貴女が持つその竜殺しの剣でその一枚を叩き割り、中にあるコアをユクに飲ませて欲しい)


 鱗を叩き割る?


 オレの力ならできないことはないけど。


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