第四楽章~旅の余韻~
「私の三楽章、神がかってましたよね!」
「言わなきゃかっこいいのに」
「えー、でも最高だったでしょ。音が消えた瞬間、こう、シュッと!」
アイシャは興奮した様子で、その場に立ち上がった。
パレードを終えた一行は、広場から少し離れた場所にあるカフェ兼食堂へと移動していた。
店内は音楽祭を訪れた多くの人であふれていたが、その一角だけは、ひときわ賑やかだった。
「ライムちゃん、すごくよかったよ」
フルートのパートリーダーが声をかける。
「リーダーのソロもすごかった」
ライムも嬉しそうに答えた。
「小春、ばっちりだったな」
「はい。すごく気持ちよかったです」
トールの言葉に、小春は満足そうに笑った。
緊張から解き放たれ、堰を切ったように感想が飛び交っていた。
だが、料理が運ばれてくると、さっきまでの騒がしさが嘘のように静かになった。
皆、黙々と料理を口へ運んでいく。
興奮がまだ残っているのか、スプーンを持つ手がわずかに震えている者もいた。
いつもより長い一日を終え、一行は再び自由時間となった。
明日は、アンサンブルメンバーによる小ステージが開かれる。
街に残る音楽祭の熱気を感じながら、一行はひとまず宿へと戻った。
「あら、若菜さん、夏樹くん。今帰りなの?」
宿へ戻る途中、聞き慣れた声に呼び止められた。
「ミラーさん。はい、少し街を散策してました」
「先生は?」
若菜が尋ねる。
「私は少し隊のほうに顔を出してたの。最終日の打ち合わせにね」
そう言ってから、ミラーは夏樹を見る。
「夏樹くん。ソロ、期待してるわよ」
「はい。ここでなら、今までとは違う表現ができそうな気がします」
若菜が少し驚いたように夏樹を見た。
「日向くんがそこまで言うなんて、珍しいわね」
「そうですね。自分でも不思議です」
ミラーは二人の顔を見て、少しだけ微笑んだ。
「それじゃあ二人とも、明日のアンサンブルも頑張ってね」
「はい」




