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競技セブンスカイズ《死神と太陽》 〜7機vs7機! 撃墜を狙い合う人型装甲機兵《モービルギア》たちが翔け抜ける未来への切符〜  作者: 元毛玉
第一部 日食の空

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第二十三話 決勝の舞台

 各自、暫しの仮眠を取った後に控室入りを果たし、夜明けの時と打って変わり緊張感の漂う戦士の表情をしている。

 普段の緩い雰囲気はどこにもなく、集中が高まっている様子が見て取れた。

 口数少ない控室には秒針の音だけが響き、スタッフの大声がその静寂を破る。


「時間です!」


 無言で立ち上がり控室を出てハンガーへ進むと、続く仲間たちの足音も吹き抜け内に反響し始めた。

 気負っているのかも知れない。足音は普段よりも少し固く聞こえる。

 ハンガーで先ず目に飛び込んだのは緑を基調としたSK(セーフキーパー)のハーベスト機。

 隣には薄めの水色、BD(バックディフェンダー)のクロワ機が並ぶ。

 茶色と黄色の暖色系で纏まったMC(ミドルチェイサー)のウェハー機、チーザ機と続く。

 最後にFA(フロントアタッカー)

 キャメル機の淡い桃色は彼女の髪にささるカチューシャを思わせる。

 口やかましい暴言王、ソルティ機は夜の静けさを模した濃い紺色。

 足を止め、振り返ると頷く仲間たち。モービルギアへ乗り込んでいく姿にかつての仲間を想起した。

 救えなかった笑顔や声が鮮明に蘇り、暫しの間、動けなくなってしまう。


「どうしたナック?」

「何でもない」


 様々な思いを振り払い、銀の輝きを放つ愛機(ランツ)の脚部を軽く二度叩き、コクピットへ乗り込んだ。

 計器類が動くと共に駆動音が徐々に高くなっていき、振動がシートを揺らす。

 体へ血を巡らせるかの如くネオンラインが光を放ち、重い体躯を起こしていく。


「今日もよろしく。相棒(ランツ)


 腹の底に響く重低音たちを引き連れて、フィールドから差し込む光を目指し、暗い通路を進む。

 外が近づくほどに強く思う。

 墓標を刻むのなら空がいい。かつての仲間たちが散ったように。どこかの処分場ではなく、空に。

 そうした思いを胸に、決勝の舞台に着いた。


「まだ青いな……空も俺も」

『あ? 何か言ったかナック? ギャラリーどもがうるさすぎて小声じゃ聞こえねーぞ?』


 会場ではモービルギアが奏でる音や仲間たちの声も届かないほどに、歓声が沸き起こっている。



《ルシファーは、((FA)(MC)(BD)(SK))の編成です!》



 チームアナウンスや機体紹介も、今日は聞こえにくい。

 フィールドの遥か上空では花火が打ち上がり、カラースモークを炊いた演習生たちのモービルギアが色とりどりの雲で絵を描き、地上では興奮した観客たちが悲鳴に近い声を張り上げている。

 熱狂に負けじと必死に叫ぶ実況。


《さぁ! 途切れない連覇、もはや生ける伝説、黒雷の入場です!》



 漆黒の機体が悠然と現れた。

 これまでの相手とは次元の異なるプレッシャー。



《対するエクリプスのリーダーの死神も戦場では勇名を馳せ、当時は最強と呼ばれていたそうです!》



 観客を盛り上げるために色々と調べたのだろう。

 実況が、古い記録を引っ張り出しては語っている。

 ソルティはその内容に大爆笑していた。


『おい、ナック! お前とっくに終わった人扱いになってんぞ? 今日も負けた風なこと言われてるけど未来にいきすぎじゃね? カカカッ!』

「うるさいぞ暴言王。集中が途切れる、黙れ」


 恥ずかしい話題も多く、さっさと打ち切りたくて言葉を急いだ。


『ナックさん、私は貴方と共に戦えることを誇りに思います』

『あたいは、選手になってからの逸話が好き』


 仲間たちは知らないエピソードも多かったようで、褒め言葉が相次ぐ。

 嬉しさを噛みしめつつ、小さく咳ばらいをして緊張を取り戻す。

 ようやく長い語りも終焉を迎えた。



《黒雷と死神のどちらが勝ち星を掴むのか? 大注目の一戦です!》



 実況をBGMに、アイビスへプライベート通信を入れてみるも反応が無い。言葉ではなく拳で語れということなのだろう。


「あぁ、存分に語ろうか」

『は? 突然何言ってんだ、ナック? もう勝利者インタビューの内容でも考えてたのか? 気が速すぎだろ!』


 センチな気分が過ぎたのか、心で思ったことが独り言で零れた。

 仲間たちは、即座に反応したソルティがそう考えていたことを察し、囃し立ててご機嫌を取っている。


「そうか。ソルティ菌に感染したのかも知れん。お前も今日のインタビューはほどほどにしておけよ。それよりそろそろ気合いを入れろ」


 後は開始の合図を待つだけ。


「チームエクリプス、日食の時間だ」

『了解!!』



《全てが決まる一戦! 3、2、1……Break (試合)the sky(開始)!!》



 モービルギアが一斉に動き出し、ブースターが風を薙ぐ音が木霊していく。

 開幕直後、何故かソルティが地表スレスレを飛んで中央から急襲。

 あまりに定石外れな行動に、観客も選手も思考が一時停止した。


『何やってる! ついてこい! セオリーを守るな(・・・)! 今日は総攻めにしろ! 穴があったらいつでも突っ込めよ!』


 ソルティの声で冷静さを取り戻し、やや暴走気味のソルティを追って飛翔する。

 地表付近ではブースターからの衝撃で芝生が瞬時に波打つのが見え、体感としても普段より数段速い。

 敵機を追う上昇に合わせてシート側へ強烈に引っ張られる感覚を堪え、加重の負担に顔を歪めながら黒雷機を見やれば、困惑したのか逃げの一手を打っていた。

 加速して前に出るキャメル。


『あたいに任せて!』


 キャメル、チーザ、ハーベスト機は前のめり気味だが、それも功を奏して格闘で敵を捉えるところまで追い込んだ。

 戦闘の流れを見て得心がいった。

 地表に落ちれば失点になる競技において、なるべく高度を維持するのがセオリー。それを無視し、敢えて双方の逃げる余白にギャップを作ることによって、思考を追う者と追われる者に限定させた。

 呆れ半分で目を細める。


「思いついても普通やらないだろ……」

『あ? 何か言ったか?』


 騒ぐソルティを他所に、キャメルが敵バックス機と高速チェイスの螺旋を紡ぎ、無数の激突と衝撃波を撒き散らしていく。

 敵が逃げる方向はチーザの進路妨害や、クロワの援護射撃で阻止を続け、最後にキャメルのすれ違い様の飛び膝蹴りが炸裂、敵バックス機を完全に仕留めた。

 しかし、そう仕向けられた感もある。

 落下矯正の連携攻撃(キャリブレーション)まではさせて貰えず、点は取れたがオーバーヒート懸念を背負う。

 前方を飛ぶソルティ機からも火花が出ている。


「一先ずブースターを休ませ……」

『まだだ! 守んなっつってんだろーが!』


 窘めるどころか率先してソルティが切り込み、追走をヒートアップさせていく。

 理解が出来ない。

 例えるならば、マラソン大会で開幕スプリントをして先頭に立ってからさらに続けていく行為。最後まで持つ訳が無い。


『いいんだよ! リスクも採算も度外視で! その方が考える奴には利くんだよ!』


 理由を聞き、模擬戦でも意味不明な思考を押し付けられたことを思い出す。

 恐らく黒雷も混乱し、考える程に思考のループから抜け出せなくなるだろう。


『ナック! 合わせろ!』

「了解」


 フィールドを時計回りに逃げるバックスをソルティと連携して追い込んでいく。

 チーザとウェハーが敵キーパー機を追い回しているのも利き、こちらまではカバーできない状況を維持。

 この間に墜とすしかない。

 前方に捉える蒼色の敵機は上下に激しくスラロームを続け、追う方にもアップダウンによる負荷を強いる。

 墜ちる感覚、シートに引っ張られる圧迫感、頂点の浮遊感、それらが内臓と気分を蝕みながら断続的に襲う。

 蒼い敵機をフィールドバリア側に追い込み、逃亡スペースを潰す。敵はフィールド中央側へ逃げを図るも、既にクロワが銃を構えていた。


『フッ、中央に逃げるとは』


 クロワが射撃で敵の足を一瞬鈍らせたのを見計らい、ソルティと共にフルブーストで肉薄していく。


「充分だ」

『オラオラァ! 一時停車禁止だぜ!』


 敵機へ迫るほどにカメラに大きく映り、ディテールまでハッキリと見えた。

 逃げ遅れた敵機のバックパック部に殴打を叩き込み、グリップから伝わる反動の衝撃を力でねじ伏せる。

 間髪入れずソルティもタックルの追撃を行い、敵の体勢は完全に崩れた。


「全機、キャリブレ」

『あいよ!』


 眼前にビームが殺到し、さながら空の高速ビリヤードが展開される。雷鳴と紛うビーム音を引き連れて墜落音が轟いた。

 実況のゴールコールが耳にうるさい中、不満げな声も届く。


『んだよ。青かよ! もちょい急いでキツキツに振ればイケたんじゃね?』

「過ぎたことを言うなソルティ。切り替えろ」


 実際、あと少しで赤だっただけに悔やまれる。

 得点よりもオーバーヒートのリスクを大きく上げたことが懸念材料だ。

 仲間たちからも自己申告が相次ぎ、若干のペースダウンは避けられなくなった。

 そして息切れを待っていたと言わんばかりに、逆転を狙う黒雷と敵アタッカー陣からハーベストは強襲を受ける。

 高高度で逃げ回るも、3機同時は如何にハーベストでも厳しい。マイクロミサイル群は割り切る動きを見せているが、被弾時の軽いノックバック含め、あわや格闘戦という局面が増えた。


『クロワさん!』

『分かっています!』


 ハーベストがクロワの方へ飛び、クロワが位置を入れ替えて敵の前を立ち塞ぐ。

 典型的な最少失点の貢献(ブロックダウン)の形。

 しかし、二人は全く諦めていなかった。

 クロワは、殴りに来た敵にビーム射撃をお見舞いし、スラスターで半身ずらしつつショルダータックルの形で衝突。離れ際に追加ショットを叩き込んで、相手だけを錐揉み回転させる荒業をやってのける。

 凌ぐどころか、クロワは機転と技で切り抜け、ハーベストも蹴りを追加した。

 赤サークルを狙うも黒雷が身を呈して阻み、あと一射が足りず青止まり。


「よく凌いだ。各機、冷ませたな?」

『おう! 土産にドライアイスまで付けれるぜ!』

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