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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

最強魔法騎士ジェラルディンは兜姫と婚約破棄したくない!

作者: 衛府 恵

実質的な主人公はヒロインなのですが、あえてその視点を外して書いてみました。

お楽しみいただければ幸いです。

※味方を見捨てる非情なシーンや死の描写など、一部に残酷な表現を含みます。苦手な方はご注意ください。

――またか。今日も彼女は勝負を挑んできた。

ジェラルディン・アズクロヌス、アズグロピア王国直轄軍第一機動隊の隊長にして、国内最強と謳われる戦士。だが今、その額には冷や汗がにじんでいた。


「セヤアァアッ!!」


「くぅっ……!」


裂帛の気合とともに突き出される槍――先端に綿を詰めた布が被せられた稽古用のものであるが――を反射の魔法で辛くも受け流す。


魔獣が跋扈する森と敵性の隣国に囲まれたこの国は国民皆兵を標榜し各地が自衛に努めている。機動隊は、領軍など各地の部隊では対応しきれない敵に対し、即座に駆け付けて自衛力を補完する存在だ。


その中でも最も練度が高い第一機動隊、その隊長である彼が戦ってきた、どの相手よりも彼女は手強い。


(……婚約破棄など……認めるものか!)


ジェラルディンは幻影魔法で自身の残像を残して一歩横へ。


シュン!


彼女はすかさず幻影に槍を突き入れる。その鳶色の瞳には間違いなく幻影だけが捉えられているようだ。


気配隠しの魔法で彼女の意識の外に逃れたジェラルディンはその隙を逃さず木剣で切りかかろうとしたが……


シュン!


(なっ!)


彼女は即座に手応えのなさに反応、ジェラルディンに向かって次の一突きを放ってきた。こちらの位置が分かったとは思えない。彼女の勘の良さに舌を巻きつつ、切り込みかけた木剣の位置を変えて何とか槍の軌道をそらす。


ジェラルディンが対戦しているのはグレーシュ・バイアトレス伯爵令嬢、彼の婚約者だ。


「またやってるよ……グレーシュさんも頑張るねえ」

「魔法なしであの実力なんだろう?もう魔法のことなんか気にしなくて良さそうなのになあ」

「隊長でも、魔法抜きだったら勝てなさそうだもん」


隊員たちはグレーシュの技量に感心しつつ半ば呆れている。


大きく後ろに飛んで間合いを離したジェラルディンに、凄まじい踏み込みで彼女が迫る。編み込んだ赤毛が後ろに置いて行かれるほどの加速だ。


「シイィッ!」


「ハアッ!」


ジェラルディンは木剣を跳ね上げようとする槍の軌道を読み切った。剣をくるりと回して逆に槍を跳ね除けようとするが、グレーシュもすぐに槍を引き、次の突きを繰り出す。が、ジェラルディンも次の槍が来ることは予想済み。励起し続けていた反射の魔法でそれをいなし、彼女の懐に飛び込んだ。


「……しまっ」


下がろうとしたグレーシュは体勢を崩して地面に倒れ込む。それを追ったジェラルディンが彼女の首元に木剣を突きつけた。


「それまで!勝負あり!!」


審判を務めるジェラルディンの副官ザックスが試合を止める。


先ほどまで彼女の足があった辺りには不自然な地面の凹凸。ジェラルディンが軟化の魔法を使った跡だ。


(これで何度目だ? いつになったら、彼女は、彼女自身を認めてくれるのだろうか……それにしても、こんな搦手を使わなければ勝てないとは)


胸の奥に痛みを感じながらも、ジェラルディンは木剣を納める。


「……また、負けたのね。これでも、まだ力不足だっていうの……」


額に玉の汗を浮かべた彼女は大の字に転がり空を仰いだ。


「もう、こんなことは止めるんだ、グレーシュ。俺は君を離したくはない」


「隊長の言う通りです、グレーシュ。魔法のことなど関係なく、あなたは彼の婚約者にふさわしい。それに、彼のことが嫌いなわけではないのでしょう?」


「嫌いどころか、好きよ。……好きだから、許せないの。自分が、こんな出来損ないで……。次こそ勝って婚約を破棄してもらうわ」


「強情だな。だが、今日も勝負には勝った。何度でも勝ち続けてみせるから、早く諦めるといい」


ジェラルディンは口にしながらも、内心は焦っていた。彼女の槍は勝負の度に冴えを増している。今は魔法を駆使してどうにか凌いでいるが、このままではすぐに圧倒されてしまうだろう。


(もはや普通の鍛錬では足りない。どうにかしなければ……)


最近の彼の鍛錬の必死さは鬼気迫るものがあり、それにつれて隊員たちの訓練も一層厳しくなっている。隊の練度は上がっているがケガ人も増え、隊員たちにとっては少々迷惑なのであった。



その夜、ジェラルディンは彼女の屋敷にもほど近い、機動隊の拠点内にある隊長室で副官ザックスと杯を交わしていた。


「またそれを持って来ているのですね。グレーシュさんに見せてあげたら喜ぶでしょうに」


「何だか照れくさくてさ」


言いながらジェラルディンは優美な造形の兜を布で愛おしそうに磨き、枕元に置いた。彼女から贈られたそれに、傷一つ付けたくないのだ。彼の心にそれを贈られた時のことが鮮明に思い出される。


「あなたのためだけに作り込んだ品です。他に多くの兜を召喚してきましたが、文句なく一番の出来です。ぜひ、使ってくださいね」


少しだけ日焼けした頬を赤く染めながら兜を差し出すグレーシュ――傍から見ればシュールな絵面であったが、ジェラルディンはその様子を非常に愛おしく思っているのだ。


鋼鉄製のそれは軽量ながら高い防御力を誇る逸品である。頂部に飾られたクレストは飛翔するハヤブサで、異様に造形が細かく、しかも中空になっているので首に余計な負担をかけない。


彼はこの兜をいつも荷物に入れて持ち歩いている。何とこの兜、クレストを分解してコンパクトに持ち歩きすることさえできるのだ。


「兜姫、か」


フェザーミッシュの兜姫――彼女はそう綽名されている。一見勇ましいその名は彼女の強さによるものではない。


この国の戦士の多くは魔法と武器を組み合わせて戦う魔法歩兵や魔法騎兵だ。次に多いのは魔法に特化した魔法遣いである。


一方で、彼女は珍しい純粋な騎兵であり、魔法を使用しない。


彼女は魔法が使えないのではない。使える魔法に制限があるのだ。


「こんな素晴らしい兜、やっぱり勿体なくて使えないよなあ……」


「国宝級の造形ですからね」


ザックスはジェラルディンの部下だが、実を言えばこの国の第3王子である。そのザックスの審美眼に狂いはないだろう。


彼が手にしている兜はグレーシュが魔法で召喚したもの。その魔法「兜召喚」は彼女が唯一使える魔法だ。つまり、それこそが彼女の綽名の由来なのである。


彼女が自分のことを「出来損ない」というのは、このような、戦闘には直接役に立たない魔法しか使えないことによる。魔法にも剣技にも優れたジェラルディンの妻には相応しくないと言うのだ。


「別に兜を出す以外に魔法ができなくても良いじゃないか。強いし、美人だし、あんな良い人他にいないのに……俺、本当は嫌われているんじゃないのかなぁ」


「今日、はっきりと好きだって言っていたじゃないですか」


最近、フェザーミッシュ領で魔獣の出現が増加している──そんな情報に接して調査のためにやって来た第一機動隊を、彼女は実に機嫌よく歓迎した。


だが、彼女は馬上のジェラルディンを何やら期待に満ちたような目で見たと思いきや、一転、落胆したように深い溜息をついてこう言ったのだ。


「ごきげんよう、ジェラルディン様。今回は魔獣の調査ということですから時間はありますね?今日こそ、わたしが勝って婚約を破棄していただくわ」


このような勝負をこれまで何度してきたことか。


勝って婚約を解消しようとするグレーシュと負けたくないジェラルディンは互いに張り合い、技量を高め合ってきた。


特にグレーシュの槍術の成長は著しく、最近になって機動隊への補給を担当する領軍の特別輜重(しちょう)隊、それを護衛する護衛隊長に任命されている。


脆弱な輜重隊を少数の部隊で援護する護衛隊員には一騎当千の技量が求められる。その隊長ともなれば国内でも指折りの実力者と言ってよい。


その高みに彼女は至っているのだ。



ジェラルディンら機動隊がフェザーミッシュ領に来たのは増加しているという魔獣の調査のためである。


この地は隣のタイファン国との係争が絶えず対人戦闘は多いのだが、魔獣被害は少ない。


敵兵とは異なり、魔獣は人間の魔力を求めて襲ってくる。そんな魔獣との戦いに現地の兵は慣れていないということも、機動隊が派遣されることになった要因である。


国境付近の森に調査に入って3日目、ジェラルディンはうんざりしていた。


「小型の魔獣ばかりだが、これほど数が多いと辟易するな」


副官ザックスも困惑顔だ。


「ええ、本当ですね……妙な地響きまで続いているので、隊員たちにも疲れが出てきています。一度、拠点まで戻った方がよいのでは?」


森の奥からは次々と小型の魔獣がやって来る。さらに、その方向からは不気味な地響きまでするのだ。


「いや、魔獣が来る方向からして、後退すれば拠点が危なくなるかもしれない。ここで頑張ろう」


魔獣は魔力を自ら汲み上げることができないので、人を襲うのはその補充の必要に迫られてのことである。それでも、小型の弱い魔獣が人を襲うということは本来めったに無いことだ。


弱い魔獣とはいえ、凶暴になっていて数も多い。ジェラルディンは、拠点にいる輜重隊にこのような魔獣を近付けることは危険だと考えていた。


「次から次へと、キリがないな。連中、余程魔力に飢えているらしい」


「一体何が起きているのでしょう?」


地響きがだんだん大きくなり、魔獣の様子は凶暴というよりは慌てふためいたように変わってくる。それに気付いた2人の目つきが変わった。


そう、小型の魔獣は何かから逃げて来ているのだ。


「総員態勢を整えろ!何か来るぞ!」


ズシン……ズシン……


森の木々をなぎ倒し、それはとうとう姿を現した。


「……嘘だろ……こんな所にアノーシェだと……しかもあれ程巨大とは……」


真っ黒な巨大なワニとでもいうべき姿の魔獣は、機動隊の姿を認めると前足を上げて立ち上がり雷のような咆哮を上げて威嚇してきた。その目は真っ赤で、憎悪に染まっているようだ。


王国東部で希に見られる大魔獣の姿に、ジェラルディンはしばし棒立ちとなった。王国の西の端であるこの森には小型の魔獣しかおらず、このような化け物が現れるなど思いもよらないことだったのだ。


荒涼とした岩山が多い東部と違い、このあたりは鬱蒼とした森になっている。そのため、随分近付かれるまでその姿が分からなかったことも災いであった。


「この隊の装備ではどうにもならん。やむを得ん。ザックス、青弾上げ、数、3つ!」


「グレーシュさん……済みません……」


ザックスが空へと青い煙幕弾を3発放つ。それは、前線が不意に強敵と遭遇した際に定められた手順だった。


これを合図に前線はごく少数の殿(しんがり)を残して撤退、後方拠点のさらに後方まで移動して態勢を立て直すのである。


拠点の輜重隊は騎乗できる者、若く体力のある者は撤退して前線部隊と合流する。一方、老いた者、体力のない者、ケガ人は拠点に残り、死兵となって遅滞戦闘を行うのだ。


これは、耕作や居住に適した土地が少ない上に魔獣や周辺国の脅威に晒され続けたこの国が、限られた人的資源を最大限に活かすために編み出した非情なドクトリンであった。


(グレーシュ、妙な気を起こしてくれるなよ……)


この撤退戦で、グレーシュら護衛隊は相当な数の輜重隊員を置いていくことになる。


直情径行の彼女のことだ。軍規通りに素直に撤退してくれればよいが――そんな不安を抑えつつ、ジェラルディンは再集結点へと馬を駆けさせた。


その後方では、殿の攻撃を受けた大魔獣の咆哮が響いていた。



(やはりこうなったか……間に合えよ……!)


数刻後、ジェラルディンは単身、輜重隊の拠点へと向かっていた。再集結点に合流した護衛隊員から、彼女が案の定、拠点に残ったと聞いたのである。


「これより護衛隊長グレーシュの救助に向かう。ザックス、後を頼む」


「了解しました。地形を利用して防衛ラインを構築し、足止めしつつ攻撃魔法と毒矢で対抗するよう準備します。領軍への伝令も出したので魔法遣いの補充があるはずです」


「俺を止めないのか?」


「止めて欲しいのですか?」


ザックスはニヤリと笑い、わざとらしく姿勢を正して言った。


「ではこうしましょう……アズグロピア王国第3王子、ザックス・アーク・ド・ターヴァが、王国軍第一機動隊長ジェラルディン・アズクロヌスに命じる。フェザーミッシュ領軍特別輜重護衛隊長グレーシュ・バイアトレスを救出せよ!」


ジェラルディンは一瞬呆けたように固まり、そして跪いた。


「心より感謝いたします、王子殿下。ご使命、必ずや果たしてみせます」


ザックスは懐から瓶を2本取り出してジェラルディンに渡した。


「隊長の彼女への想いは、理解していますからね。行かなければ、あなたは使い物にならなくなるかも知れません。ですが、それは国家的損失というものです。だったら、行かせて差し上げた方が良いに決まっています。


これは王族用に特別に調合された魔力回復薬です。1本あれば現場まで、身体強化魔法を使って馬より早くたどり着けるでしょう。この世のものとは思えない酷い味ですが……


隊長、必ず生きて帰ってください」


ジェラルディンはその瓶の1本を躊躇なく一気に飲み干し、駆け出したのだった。



ジェラルディンが輜重隊の拠点で見たのは輜重隊員の死体がそこここに転がる惨状であった。


彼らは大魔獣に殺されたのではない。このような事態に備えて支給されている「壊魂丹」を使用したのだ。


壊魂丹とは、魂に作用して、魔力の汲み上げ量を爆発的に増大させる魔法薬である。元々満足に戦える力のない彼らはこの薬を使い、大魔獣に普段は撃てない強力な攻撃魔法を放ち、やがて魂の崩壊により息絶えたのだ。


(彼らに、女神の導きがありますように……)


彼らの、まさに必死の働きの甲斐あって、魔獣はまだ拠点の先に足止めされていた。


「生きているものはいるか!!」


ジェラルディンが叫ぶと岩陰から応答があった。


「はい!グレーシュ様のお陰で!今、お一人であの化け物と戦っておられます!でも、もう馬が持ちそうにありません!」


大魔獣は首を振り、体の向きをあちこちに変えながら怒りの咆哮を上げている。よく見ればその周囲を駆け回り翻弄する騎兵が一騎――グレーシュだ。


ジェラルディンはその姿を認めて心底安心した。直ちにザックスから託されたもう1本の回復薬を呷る。


「再集結点での陣地構築は進んでいる!生き残っているものは散開して身を守れ!俺は彼女を救出して退避する!」


「了解!ご武運を!」


彼は、再度身体強化魔法を励起して大魔獣へと突撃した。


「グレーシュ――――――ッ!!」


剣に魔法を纏わせ、切りかかろうとした刹那、ジェラルディンとグレーシュの視線が交錯した。グレーシュの顔が「どうして」という驚愕に染まる。


脚に一撃を受けた大魔獣は絶叫する。すぐに飛び退き残心するジェラルディンが見たのは、振り回される尾に脚をすくわれて倒れるグレーシュの馬であった。


「きゃあっ!」


グレーシュは咄嗟に馬から飛び降りたが、ジェラルディンが来たことに驚いた隙を突かれる形となり、片足が馬の下敷きになってしまった。大魔獣はジェラルディンとグレーシュを交互に見たが、脱出しようともがくグレーシュを仕留める方が先決と判断したのだろう。片脚を大きく振りかざし、グレーシュに襲い掛かった。


ジェラルディンの判断は一瞬だった。大魔獣とグレーシュの間に割って入り、その爪を迎え撃とうとしたのだ。無謀だが、グレーシュが動けない以上、他にできることはなかった。


「ジェラルディン!!!」


反射魔法にありったけの魔力を注ぎ大魔獣を睨みつけた彼であったが、突然、視界が狭くなった。


「???」


覚悟していた衝撃が、ない。一体どうなっているのかと思っていると、


ズッシーーーーン


と地響きを立て、突然大魔獣が倒れた。呆然と、二人は顔を見合わせる。


「……何が起きた?」


「……魔法を使いました……兜、お似合いですよ」


ジェラルディンが頭に手をやると、確かに兜が被せられている。彼女が兜召喚の魔法を使ったらしい。


「それで、どうして魔獣が倒れたんだ?」


「分かりません」


魔獣はピクリとも動かない。突然、死んでしまったのだ。



「救援求む」の煙幕弾に駆け付けたザックスら機動隊により2人と生き残りの輜重隊員は助け出された。突然死した巨大アノーシェは有効利用のためその場で解体されたが、不思議なことにその血はほとんど透明で、肉も真っ白になっていた。この大魔獣が倒れると、周囲の魔獣の異常行動も収まり、事態は終息したのであった。


後日、グレーシュの魔法について徹底的に調べたところ、彼女は正確には兜を召喚しているのではなく、周囲にある鉄を集めて「生成」していることが分かった。大魔獣に強く意識を集中して魔法を励起したので、その体内の鉄を一瞬で奪って兜に変えてしまったのだ。


血というのは鉄の味がするものだが、その成分が抜けたので魔獣の血は透明になってしまったのだろう。


一方ジェラルディンは、それ以来、彼女が咄嗟に生成した、少し不格好な兜を愛用するようになった。彼が兜を被ってフェザーミッシュにやってきたのを見た彼女の喜びようは凄まじかった。


「ご、ごきげんよう。ああ、ジェラルディン様が、とうとうわたしの兜を使っています!


……うれしい……わたし、こんなにもうれしいなんて!


もう、婚約破棄などとは申しません。わたしの魔法だって、戦いのお役に立てると分かったのです。早く結婚してください!」


グレーシュにとって、ジェラルディンが自分の兜を使ってくれることこそが、自分自身が認められたという証だったのだ。


突然のプロポーズに、ジェラルディンは一瞬唖然とした。


「…………あ、ああ。元より君とは結婚するつもりだ。ありがとう」


ここにザックスが耳打ちする。


「いただいた兜を大事にしていたところ、やっぱり見せて差し上げればよかったじゃないですか」


全くその通りである。ジェラルディンがグレーシュの兜を大事にしている様子が分かれば、彼女はもっと早く結婚を承諾したことだろう。



グレーシュはジェラルディンの発案で、「小さな兜」を生成することで相手を殺すことなく極度の貧血状態に陥れて無力化することができるようになった。さらには軍団を相手にしても、兜生成で鉄分を奪い、集団を貧血にすることさえ可能になったのだ。


2人は長年紛争が絶えなかった隣国タイファンに攻め入られた際に協力して奮戦した。さらには逆にその首都に攻め込み全面降伏させる原動力ともなった。


降伏したタイファンを調べたところ、いつかの巨大アノーシェの事件はこの国の策謀によるものだと分かった。蹂躙されたフェザーミッシュ地方に兵を送り込む計画だったものが、思いがけず大魔獣が倒されたので中止されたのだ。


2人はその後も魔獣狩りや紛争で活躍し、今なお「フェザーミッシュの兜夫婦」として語り継がれている。


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