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ケーキの為にと頑張っていたらこうなりました  作者: すみ 小桜


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第46話

 「うーむ。それは本当に風が出ているのかね?」


 きゃぁ。話しかけないで! もしかしたら今日達成できるかもしれないんだから!


 問いを投げかけて来たのは、ガムン公爵。なぜか急に魔学の授業を見学したいと言い出した。

 魔学の授業を始めてから二か月程経ち、教室を覗く生徒もいなくなり、見学者はクラスメイトだけになっていた。


 今日こそ、魔法を十分間出し続けてもらえると思ったのに。

 ガムン公爵がいたら緊張して続かないかもしれない。

 この授業の目標は、魔法を十分間出し続けられる事。

 そうすれば、授業は終わりなのよ!


 でもガムン公爵に言われて気づいたけど、風魔法はわかりづらいかもね。

 フロール嬢の火魔法なら見てわかるけど、風は普通の人には見えないし。

 私だって、魔法でなければ風なんて見えません。


 仕方ないわね。これ以上邪魔されたくないわ。

 ノートを引っ張り出すと一枚破り裂く。


 「ベビット様。集中なさっていて下さいね」


 そう声を掛けつつ、右手に持った裂いたノートをベビット殿下が繰り出している風魔法に近づける。

 ノートは、その風によって裂いた先がはためいた。


 これで文句はないでしょう。


 「なるほど。それならわかる」


 ガムン公爵も納得してくれた様子。


 「あぁ。今日もダメだったわ」


 チラッとフロール嬢を見ると、シュンとして俯いている。

 彼女、思ったより持続性ないのよね。不思議だわ。安定して魔力は出せているのに、いつもこれぐらいで精神力が切れてしまうみたいね。


 ベビット殿下は、安定感はフロール嬢よりはないけど、まあ一般的な感じかな。

 順調に伸びてきていて、今日こそは十分いくわよ!


 私は、砂時計に目をやる。

 この世界には、時計はあるけど高級品なのよね。だから時間を計る時は、砂時計を使う。

 この砂時計はもちろん、十分間砂時計。

 後少しで落ちきるわ!


 そして、とうとう砂時計が落ちきった!


 「やったぁ!」

 「おめでとうございます!」


 教室内に拍手が巻き起こる。

 ガムン公爵も満足そうに、拍手をしていた。


 「いやぁ。凄い物を見せて頂いた」

 「いやぁ。二か月は長かった」


 つい、本音が漏れる。

 だってやっと解放されるんだよ。


 「ファビア嬢は、どれくらいでマスターしたの?」


 ベビット殿下が、興味津々で聞く。


 「えーと、どうだったかなぁ。私達は、目標が一時間だったし」

 「一時間!? うわぁ。ただこれだけを一時間って拷問だね」


 そうなのよ! 集中云々より慣れてくると暇で。


 「まあね。私はどちらかと言うと、暗記に戸惑って」

 「え? 君が?」


 何せ五種類だからね。


 「もっと詳しく聞きたいなぁ」

 「それは……」


 そう言われましても。困ったなぁ。

 ガムン公爵もいるし、下手に話して五種類全部できますとかバレたらやっかいよね。

 本当に相手が王子様だと、断るのが大変だわ。


 「合格もしたようですし、やる気がないのならお帰りになったらいかがですか」


 ちょっとガムン公爵も居るのに、その言い方!


 「あ、すまない。授業の邪魔したね。ガムン公爵。私達、今日は切り上げていいでしょうか。彼女が帰るまでの時間、彼女と語り合いたい」

 「はい!?」


 まさかのバビット殿下の発言。超直球デスネ。

 しかもなぜ、トリカリト先生ではなく、ガムン公爵に許可を求めるのですか。


 「いいでしょう。頑張って成果を出したのだし。ご褒美として。宜しいですな。トリカリト先生」

 「も、もちろんです」


 そうよね。ガムン公爵が良いって言うのに、トリカリト先生がダメって言えるわけないわよね。


 「じゃ行こう」


 ガシッと腕を取られ、教室の外へとバビット殿下が、私を引っ張る。


 「ちょっと待ってください。私は……」

 「そ、それなら私達も今日は――」

 「私は、授業を続けたいです。レオンス先生」


 レオンス様に振り向けば、フロール嬢がレオンス様の言葉を遮った。

 もう止めてくれる人はいない……。

 仕方なくベビット殿下についてく。

 生徒会室の隣にある応接室。そこに連れていかれた。

 応接室だけど、ここは王族が使っている部屋だったはずだけど、私が入っていいのかしら。


 「どうぞ。そこに座って」


 応接室は、王族が使うだけあってそれなりの広さと逸品の家具が置かれていた。

 座ってと言われたソファーも、王宮で座ったソファーより質がいいのが見ただけでわかる。

 畏れ多いのですが!


 私が突っ立っているからか、ベビット殿下が私の手を引きソファーに座らせた。そして、自分も私の隣に座る。


 「あの、なぜお隣に」

 「ほらこのテーブル大きいでしょう。だから向こう側のソファーに座ると話が聞きづらくて」


 さいですか。

 護衛の二人が、紅茶を淹れてくれている。

 学園には、侍女も執事もいないからこれは彼らの仕事らしい。


 「あ、二人は、隣の部屋で休んでいていいよ」


 紅茶を置いた護衛にバビット殿下がサラッと言うけど、二人っきりはまずいのではないですか!?


 「では、控えておりますので、何かありましたらお声掛け下さい」

 「え! あの、別に二人がいてもいいのでは?」

 「君の話を二人が聞いてもいいの? 僕は結構、根掘り葉掘り聞きたいのだけど。もちろん、興味があるからで他言はしないから、ね」


 ね。って言われても……。

 ベビット殿下がじーっと私を見つめる。

 これって、話してくれるよねって事よね。


 うーむ。たぶん、他言はしないでしょう。ただ二人っきりになったのをレオンス様に知られると、いやリサおばあ様にも知られたら、大目玉なんだよねぇ。


 「大丈夫。ここにはずっと四人でいた事にすればいい」

 「わ、わかりました」

 「やったぁ!」


 護衛の二人は、私達を置いて隣の部屋へと行き二人っきりになった。

 そう言えば、レオンス様以外の男性と二人っきりなんて初めてかもしれない。

 だ、大丈夫よね? 魔法の話をするだけだものね。


 ――◆――◇――◆――


 まさかベビット殿下から話を持ち掛けて来るとは思わなかった。

 なかなかいい作戦だ。これで、ファビアもレオンスも私の手中となる。

 まあ、フロールの手に余る様なら、レオンスを権力で押さえつければいい。彼女もレオンスに惚れているようだからな。


 ファビアが、魔法博士でよかった。

――◆――◇――◆―― ガムン公爵

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