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ケーキの為にと頑張っていたらこうなりました  作者: すみ 小桜


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第43話

 「それでは始めましょう」


 次の日の放課後になり、土属性のトリカリト先生の始まりの合図で、魔学の初授業が始まった。


 トリカリト先生はイルデフォンソ殿下、レオンス様はフロール嬢を。そして、私はベビット殿下をマンツーマンで教える。

 見学は、クラスメイトだけ認められているが、廊下から覗き込む生徒が伺えた。


 そりゃ気になるわよね。

 生徒が先生として教えるなど前代未聞。しかも相手は、王子様なのだから。


 生徒の三人には、魔法の教科書と魔法陣が描かれた紙が渡された。


 「この教科書を使って授業を行いますが、これは授業が終わった都度回収します。それとこの魔法陣は、この後使用時に使い方を教えます」

 「うぉ! 魔法の教科書だ!」


 トリカリト先生の説明が終わると、ベビット殿下は嬉しそうに教科書を手にした。

 彼を見ていると何だが、魔法学園に入学したての自分を思い出すわね。魔法の事が載っている教科書を手に浮かれていたっけ。


 「では、ベビット様。まずはこの魔法陣に魔力を流して頂きます」

 「え? いきなり?」

 「大丈夫です。魔力を持っている者ならば必ずできます」


 教え方は、各々に任されているので、私は色々工程をすっ飛ばし、とりあえず実践で行く事にした。

 トリカリト先生が、私達を見てギョッとしている。

 で、レオンス様はと言うと。


 「それでは、とりあえず教科書の火の呪文を暗記してくれるかな? あ、口に出しても大丈夫だから。一時間後、実践ね」

 「え……」


 驚くフロール嬢をよそに、レオンス様は魔法陣に魔力を注いでいる。

 私と同じスタンスで行くみたいね。

 という事は、考え方は私と一緒って事ね。

 学校で丁寧にならったけど、無駄が多い。魔力が安定などしなくても、呪文を口にすれば魔法は発動される。


 「ところでこれ、何の魔法陣」


 真剣な顔つきで魔法陣に魔力を流そうと頑張るベビット殿下が問う。


 「魔法を封じる魔法陣」

 「え!?」

 「フロール嬢の様に呪文を覚えてもらうけど、口に出して練習した方が覚えると思うのよ。でも魔力を持っている人が口にすると魔法が発動しちゃうからね。効果は一時間。見なくても言えるように頑張って下さい」

 「一時間で暗記しろという事か……あ!」


 魔法陣が光を帯びた。発動したようね。


 「これって魔力を流せたって事?」

 「はい。よかったですね。では暗記をお願いします」


 トリカリト先生が、私達を横目で見つつイルデフォンソ殿下に授業を行っている。

 イルデフォンソ殿下が前に魔法を使えると言った様に、二人の様に呪文の暗記などではなく、魔法陣の勉強をしている様子。


 この国で魔法を指導が出来る施設は、魔法学園と貴族学園、それと王宮だと聞いた。

 つまりは、王族達は属性を調べたのち小さな頃から魔法を習っていたのでしょうね。なんて羨ましい。


 初めは、ケーキの為に魔法をと思ったけど、習ったら魔法も結構楽しかった。

 イルデフォンソ殿下には、ここでの授業は必要ない。だから魔法陣を教わっている。

 自分が扱えない属性の魔法陣でも知っていて損はないわ。この前の様に回避できる。

 うん? でもそんなような事態は普通ないのか。


 「ところでさ。さっきから何を呟いているんだ?」


 教科書から顔を上げ私にベビット殿下問う。


 「これですか? 私もついでに呪文の復習をと思いまして」


 時間は有効に使わないとね。

 今は、考え事をしながらでも呟けるようになったわ。ちょっと危ない気もするけど。


 「復習?」

 「ベビット様もわかるようになると思いますよ。今日覚えたのに、明日には覚えてないってなる事を。呪文は中身が成立しないと発動しません。つまり言い間違いをすると、暴発するのではなく発動しないのです」

 「そうなのか。暗記は得な方だが、一字一句間違えてはいけないとは」


 うんうんと頷く。

 ベビット殿下は、真剣な顔で教科書を睨みつつぶつぶつと呪文を呟き始めた。

 見た目チャラ男だけど、中身は結構真面目なのね。


 「ベビット様、お疲れ様でした」


 一時間が経ち、暗記タイムが終了した。

 机の上に結界のアイテムを置き、魔力を流す。

 まあ教室にも結界が張ってあるから、まさかの一撃でも教室が崩壊する威力はないと思うけど、渡されたし使っておきましょう。


 「それってもしかして、結界を張るアイテムか」


 凄く物珍しそうにベビット殿下がアイテムを覗き込む。

 本当に、魔法が好きなのね。


 「えぇ。これがあってよかったわ。と言うぐらいの威力がベビット様にあれば、役に立つアイテムですね」

 「よし! やってやる!」


 嫌味っぽく言ったのに、ベビット殿下が意気揚々と呪文を詠唱する。

 突き出した右手からは確かに風が発動された。


 「………」

 「お見事です」

 「いや、これ発動したって言うの?」

 「もちろんです。魔力を持った人は呪文さえ唱えれば発動されます。威力は込めた魔力によります。また持続は、魔力をずっと放出する事で可能です」

 「え……それって、どっちも足りないって事では」

 「大丈夫です。私達は、魔力を安定して出せるようになってからこれを行いましたが、初めて魔法を発動した時と変わりませんでしたよ」


 やっぱりだったわ。

 何も聞かされず初めて発動する魔法は、持続性はない。魔力の込め方も知らないから、威力もない。


 「では、彼女は素質あり?」

 「え?」


 ベビット殿下が見る先に目線を移すと、フロール嬢だった。

 彼女の指先に、小さな炎が揺らめいている。


 たぶん、発動時は同じ頃。だったら30秒程持っている。魔力コントロールが出来ている? 凄すぎない? 私達より素質があるかもしれない!


 「あ、消えてしまったわ」

 

 周りから拍手が巻き起こる。

 教室内で見学していたクラスメイトに、廊下から覗き込んでいた生徒が口々に『凄い』と言って歓喜していた。

 トリカリト先生に至っては、目を丸くしている。


 「お前、……いや君は才能があるな」


 少し低い声で、レオンス様は目の前にいるフロール嬢に言った。その言葉に私は、ドキリとする。

 彼女が、レオンス様の関心を引いた。

 なぜだろう。なぜか不安になっている自分がいるのだった。

 

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