表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ケーキの為にと頑張っていたらこうなりました  作者: すみ 小桜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/83

第30話

 私は今、大変困っている。クラスメイトのネメシオ様が、執拗にデートに誘って来て、やんわりと断っていたけど、今日は引く気がないようだ。

 その原因は、他のクラスメイトの煽り。


 「俺、伯爵令嬢と婚約した」

 「私も。あぁこれで気が楽だ」

 「ふふふ。俺は驚くなかれ、侯爵家の四女とだ」

 「マジか」

 「内緒だぞ。って、お前は? コルナッチ」

 「え……」


 婚約者などいないと知っていて、彼らはネメシオ様に話を振った。少し困惑気味のネメシオ様は、チラッと私を見る。私は、サッと目を逸らした。


 2年次になってから彼は、一緒にどこか行かないかとか、買い物に付き合ってほしいとか言って、声を掛けて来ていたのだけど、もちろん断っていた。忙しいと。

 嘘ではなく、そんな暇なかったからね。


 私は、ずっと勘違いをしていた。魔法博士になる貴族は、独身貴族を目指していたわけではなかったのだ。

 侯爵夫人になる為の教育に、経済学もあった。それは、子爵家では習っていない内容だった。


 平民には、税金か科せられない。そして領地を持たない貴族もだ。

 領地を持つ伯爵家以上が、領地の大きさによって最低額が決まっていて、国に治めている。あれだ、年貢よ。


 領地を持つ貴族達の収入源は、そこに暮らす者達からの賃貸と、店の利益。領地で経営するのは、傍系達が主になる。

 つまり、本家は傍系達を雇い給料を払って、売り上げの何割かを国に治めていた。あれよ、所得税ってやつ。


 さて、魔法博士も一応貴族扱いになる。土地を持たない彼らは税を支払う義務はない。しかも、お給料は国から支給される。

 つまりは、働けば働くほど儲かる仕事で、本家に搾取される事もない。


 私が驚いたのは、ここからよ。暗黙のルールが存在していたのよ。魔法博士が婚姻した場合、分家としてその貴族を名乗る事が出来る。

 自分の親と同等になれるって事よ。一代限りとはいえ、権力が手に入る。


 そういうわけでネメシオ様は、結婚相手を探しているわけ。

 クラスメイトに煽られ、引けに引けなくなったみたいね。

 彼らの前で、私にポロポーズ……。


 もちろんネメシオ様が、私に好意など持っているわけがない。まだ私は、12歳のガキンチョだ。しかも、平凡の顔つき。胸も残念ながら……。

 これ前世なら引くわ~ってくらいの行為よ。高校生が小学生に、お付き合いして下さいって言っているようなものだもの。


 権力的には、子爵家同士で対等だとはいえ、ここでズバッと断る事は忍びない。

 それに彼は、私に婚約者がいる事を知らないから、してきた行為でもある。

 困った……。


 「いいんじゃない? お似合いだよ」

 「そうそう。このままだとブレスチャ嬢も結婚できないよ。チャンスじゃん」


 全く酷い事を言う。

 まあ彼らがそう言うのもわかる。普通は、魔法学園を卒業後に貴族学園には通わない。となると、出会いがないのだ。

 だから、魔法学園に通う生徒は、学園にいる間に伝手で相手を探す。それで見つからなければ、結婚は遠のく。


 お金は手に入るが、権力は男爵家と同等になる。それが嫌なら、卒業前に婚約者を探さないといけない。

 この際、私でいいって事だろう。


 この国では婚姻は基本、15歳以上から出来る。ただし、爵位を持つ者は大人とみなされ、15歳以下でも可能だ。

 魔法博士になれば爵位を持つ事になるので、15歳未満の私も卒業後すぐに婚姻が可能となる。


 でもレオンス様との婚約の件がなかったとしても、受けるのには、私にメリットがないのよね。

 そもそも私は、結婚したくないから魔法博士を目指したのだし、ネメシオ様と婚姻しても子爵家のままだし。


 かわいそうだけど、お断りしましょう。


 「申し訳ありませんが、お世話になっているココドーネ侯爵家が、私の結婚相手を探して下さっておりますので……」


 全くの嘘ではない。リサおばあ様の協力のもと、私はレオンス様と婚約をしたのだから。まあ探している最中ではなく、すでに決まっているのだけどね。


 「でしたら、その方に僕を紹介してください!」

 「は!?」

 「マジか~。そこまでするか」


 あなた達が煽ったからでしょう。


 「会わせてやれば?」

 「お願いします。それで断られたらきっぱり諦めますから」

 「わ、わかりました」


 ここでスパッと断ったら、彼らがネメシオ様をもっと煽りそうだ。

 ごめんね。少しは期待していると思うけど、これリサおばあ様に断って頂く為に、了解しただけだから。


 「ありがとう」

 「う、うん……」


 はぁ。やっぱり貴族ってめんどくさい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ