第22話
とうとう学年末試験の日が訪れた。
試験は、ペーパーテストの学力テストと魔法を使う実力テストの2つ。
ペーパーテストは、昨日全学年で行われている。その結果は、今日の午後にも出る。
魔法を使う実力テストは、今日と明日は一年次、三日目と四日目が二年次。三年次は、魔法のテストはない。あるのは、魔法博士になる試験だ。それは、後日行われる。
試験方法は、一年次は、直接魔法を一時間出し続ける事。一応、何個出すか昨日聞き取りが行われているので、私は2つと答えてある。
数が多い生徒から行われるので、私は一番最初の組。10名ずつ行う。
名前が呼ばれ、指定された場所へ立った。
全校生徒が見守る中、テストは合図と共にスタートする。
私は、呪文を早口で2つ連続で唱えた。
突き出した両手に、水の玉と渦巻く風が出現する。
周りがざわめいていた。そりゃそうだ。私は無属性で、一番最初のメンバーだからそれだけでも驚かれたと思う。2つの魔法を使うとわかるからね。
それが更に驚く事に、同時だ。
先生に聞いたら、出来るなら別に同時でもいいと言っていた。出来るだけ誤差が出ないように、早口で呪文が言えるように練習した。というか、二つ続けて唱える練習をしていたんだよね。
学園では、個室を占拠してずっと二つ同時に出す練習を密かに行っていた。倍の魔力を一気に消費するので、魔力量がない者には出来ないワザよ。
しかもこれを1時間行う事になる。
本当は、5つ全部披露して、『A』クラスになるつもりだった。
でもレオンス様に言われた言葉が気になって、もう一度歴史を調べてみる事にした。
そして、魔法博士の著名人を見て気が付いたのだ。属性を5つ扱う者がいない事に。最高で3つ。
私はそれに気が付いて身震いをした。
もし気づかずに5つ披露していたら大変な事になっていただろう。今は、魔物もいないので退治に駆り出される事はないにせよ、国の兵器として扱われる可能性もある。
先生は、一応私に5つの属性の魔法を教えてくれた。でも私が、どれも一時間出せるまでになっているのは知らない。
後は自主練習って事になったからね。
魔法は、呪文さえ唱えれば発動するのだから。
後でレオンス様に、お礼を言わないとね。
彼はきっと気づいていた。私が3つ以上魔法を使おうとしている事に。そして、その後どうなるかも察していたに違いない。
……本当に11歳なのかと、疑っちゃうわよね。
ふう。手が疲れてきた~。
練習時、一番きつかったのは腕なのよ。
魔力量は、最初からかなりあったので問題ない。しかも練習すれば、増えて行く。
それそれの属性も強化されていくので、一時間出しっぱなしも最後には出来るようになった。
なので、疲れた手の解決法を私は編み出した!
それはずばり、腕を動かす!
って、皆が唖然としている。そんなにおかしな行動だった?
突き出した腕の肘を折り、そのまま引き寄せる。
手を握ってこの動作をすれば、オッスっと言いたくなるかもね。
こうして、だるくなった腕をごまかしたけど、もう腕はプルプルよ。因みに足もだるだる。
いや耐えるのよ。今までだって、ダイエットだと思って耐えて来たじゃない。これ以上太らない為に、これからもケーキを食べる為に!!
終了の合図が聞こえ、私は安堵する。両腕がプルプルだ。
先生が近づいて来て、私を誘導してくれる。椅子に座った私は、ぐったりだ。
「大丈夫ですか? 本当にやりきるとは驚きました」
両手で行う人は、いなかったみたいだからね。
それに私は無属性だから。これで失敗して、両方とも途中で魔法が消えてしまえば不合格だ。
「あははは。私もちょっと意地になっていて。Bクラスになれますか?」
「なれますよ。筆記試験も合格点ですからね」
「よかった……」
私は、安堵する。筆記試験がダメでしただなんて言われたら立ち直れない。
「凄いよ! ファビア嬢!」
興奮して私に駆け寄って来たのは、レオンス様だ。
「2つ同時に魔法を使うなんて。学園では教わらない事をするなんて、天才過ぎる!」
うん? 習わない?
「いや、教科書に載ってますよね? 二つ同時にも発動できるって」
「載ってはいるけど、授業ではしないよ」
そりゃそうだ。ほとんどの人は、一つしか魔法を扱えないんだから。
「俺もした事ないのに!」
俺って言った? なんか男の子っぽい。いや男の子なんだけど、年相応って感じるわね。
かなり興奮している。なんか、かわいい。
「悪いわね。私も『B』クラス確定だって。レオンス様を追い越しちゃうかもね」
うんうんとレオンス様は頷いた。
「よく頑張りました。今度お祝いにケーキをごちそうしてあげるよ」
「え? 本当? やったぁ!」
「じゃ今度、エメリックと一緒においで」
え? 家にご招待? ないとは思うけど、ご両親変な勘違いをしないだろうか。
婚約解消後に女の子を招待して……ってないか。だって私、子爵令嬢だもん。




