表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神々の箱星で  作者: テンスケ
1章 西美濃
6/18

5話 統一歴1216年 秋 町への出立

 二段の錬成術ができるようになってからは、岩から鉄鉱石をつくって、鉄鉱石と炭から鋼をつくるという順で錬成を行うようになった。もとの縞々の岩の上に炭をのせて、いきなり鋼を作れないかと思って錬成陣を2枚重ねてやってみたけど、縞々になっている赤い鉄を白い縞をさけて移動させて、炭の黒い部分と混ぜて錬成するのはすごく難しくて、一気に神気がなくなっちゃうから、爺さまが教えてくれた通りに二回に分けて錬成した方が効率がいいみたい。初段の錬成では、一回で爺さまの頭くらいの大きさの鉄鉱石を抽出できるようになった。鋼の錬成の方は、その半分くらいの量しかつくれない。二段の方が錬成にたくさん神気をつかうのかな?


 鉄鉱石を含んだ岩は家の裏の崖からいくらでも取れるけど、たくさん錬成できるようになってきて、家の中まで大きな岩を運んでくるのが大変になってきたから、崖の下に初段の錬成陣が描かれた大きな木の板を置いておいて、日中にそこでこぶしくらいの大きさの鉄鉱石をたくさんつくっておいて家に運んでる。一度、外で神気を使いつくして眠っちゃってからは、外で頑張りすぎないように気を付けて、寝る前にふとんの近くで錬成して神気を使い切るようにした。鉄以外に爺さまが水晶と呼んでいた透明なものも錬成できたんだけど、鋼に比べると使い道が少ないみたいだから、いまは鋼の錬成ばかりをやっている。


 鋼の錬成では、赤い色の鉄に対して、黒い色の炭を少しだけ混ぜて錬成する。だいたい赤を百に対して黒が一から二か、それよりも少ないくらいにする。黒が多すぎると柔らかくなっちゃうから、微妙な調節をしなくちゃいけなくてなかなか難しい。


 爺さまによると、三段になると、鋼の形を思うように変えられるようになるらしい。三段にあがって形がつくれるようになったら、自分で手裏剣や狩猟刀をつくってみたいな。爺さまが三段に上がったのは四十歳のときだって言ってたから、いつになるのかわからないけど…。ちなみに今使っている棒手裏剣は、全部爺さまが作ってくれた。ただ、爺さまが錬成できる量だとあんまりたくさんは錬成できないから、棒手裏剣もちょっとずつしか作業を進めらなくて、一つ作るのに半月はかかるんだって。失くさないように大切に使わないと。



 そうやって錬成を続けながら、夏の間は、だいたい同じような毎日を過ごした。


 まず、朝起きてから柔軟体操をして、山に行かない日は田畑のまわりを十周走る。もう爺さまや婆さまに三周遅れくらいで回れるようになってきた。走り終えたら田んぼや畑の雑草取りをして、畑に実っている野菜を収穫してから、水を撒く。農作業が終わったら、朝ごはんにおにぎりを食べて、爺さまたちはちょっと休憩。俺は爺さまたちが休憩している間に手習いと算術の復習をする。秋までに割り算ができるようにならないと町に連れて行ってもらえないからね。


 休憩の後、爺さまか婆さまのどちらかが山に様子を見に行く。爺さまが家に残ったときは、爺さまとの組手をする。防御はかなり身についてきたから、次の段階に進むって言われて、今は相手の力をうまく使って戦う方法を教えてもらっている。


 俺が爺さまに突きや蹴りを入れようとすると、するっとかわされて、いつのまにかこっちがひっくり返されて倒されてしまう。この倒し方を習得するのが最初の目標で、爺さまが言うには、相手の動きをよく見て、相手の力が乗った瞬間にその力を加速させる向きにちょっとだけ力を加えてやるのがコツだっていうんだけど、いつどんな力を加えればいいのかまだ全然わからない。爺さまは、何度も経験して覚えるしかないって言うから、もう何百回も爺さまに転ばされているけど、技を自分のものにするまで、まだまだ先は長そうな気がする。


 婆さまが家に残ったときは、棒手裏剣と弓の練習をする。棒手裏剣はもうかなり上達したから今は走りながら正確に的を当てる練習をしてる。走りながら、婆さまが投げる的を狙って棒手裏剣を投げるんだけど、止まっていても動いている的に当てるのは難しいのに走りながらだとさらに難しくなって、十回に一回くらいしか当たらない。お手本で見せてくれる婆さまは百発百中だし、努力すれば誰でもできるようになるって言われているんだけど本当かな?


 爺さまもできるの?って爺さまに聞いたら、できるけど今日は疲れるから見せるのはまた今度じゃなって言われちゃった。手裏剣はあまり得意ではないって言ってた爺さまでもできるってことは、やはり努力すれば誰でもできるようになるみたい。がんばらないと!


 弓の修練は、力が足りなくて硬い弦が引けないから子供用の小さい弓をつくってもらってそれを使って練習してる。矢は、手裏剣よりも遠くの的を狙えるから、警戒心の強い動物を遠くから狙ったりできるんだけど、本当に強い熊とか狼とかを相手にしたら遠くからだと威力が足りなくなるし、訓練を積んだ人間は矢が近づく音を聞かれて、簡単に避けられちゃうんだって。でも、小さな動物を相手に狩りをするには、十分に役に立つし、大人になって強弓が使えるなったときに備えて、頑張って練習してる。


 弓は相手を遠くから狙って、止まったまま打っていいから、棒手裏剣に比べると簡単で、五十歩くらい離れた的ならほとんど当てられるようになった。でも実際の相手は動いているからって、婆さまの投げる的に当てる練習を始めたら、やっぱりあんまり当たらなくなった。実戦で弓を使えるようになるまではまだまだ時間がかかりそう。


 婆さまはこれができるようになったら合格だよって言って、高いところを飛んでた鳶を一発で射落としてみせてくれた。婆さまがいうには、力のある男ならもっと高いところを飛ぶ鷹も落とせるんだって。俺も男だからいつかできるようになるかな?って爺さまに聞いたら、いつか鷹が飛んできたら、男が使う強弓を見せてやるからなって言ってたんだけど、こないだ鷹が飛んでたときは、殺しちゃいけない善い鷹だったみたいで強弓は見せてもらえなかった。あんなに遠くの鷹の善悪がわかるなんて爺さまはすごい。鷹の善悪を見分けるのは大人になっていろんな経験を積み重ねないと無理なんだって。いつか善い鷹と仲良くなれるといいな。

 

 そんな夏の日々を過ごしていたら、段々暑さが和らいで秋の収穫の時期を迎えた。俺も力がついてきたから、三人で稲刈りの競争して頑張ったから一日で全部終わった。ちなみに、一番が爺さまで、俺がビリだった。鎌の扱いと稲束のまとめ方が神業過ぎて永遠に勝てる気がしない。


 今年は、去年よりも豊作だった。三人で暮らす分としては去年なみでも十分すぎる量だけど、婆さまは俺が大きくなってきてたくさん食べられるようになるから、お米はいくらあってもいいって笑ってた。ただ、これから脱穀や精米する手間を考えるとちょっとげんなりする。


 今年は俺が山の狩りに付いていくようになって、山から持ち帰ってくる獲物の量も増えたし、錬成で鋼もたくさん作れたから、町に物々交換に持っていける物がたくさんある。俺が一緒に荷物を背負って町まで行けたらいいんだけど、まだ割り算がちゃんとできなくて、百の位の割り算だとしょっちゅう計算を間違える。二百三十五割る四十七みたいな難しい計算は、途中で混乱してわからなくなっちゃうし、今のまま町へいっても育ててくれている爺さまや婆さまに恥をかかせちゃいそうだから、とても町に行きたいとは言い出せない。


 爺さまが町に持っていくものを整理する手伝いをしながら、町中で、同じ年頃の子供たちがうじゃうじゃと死骸になった爺さまに集まっているようすを思い浮かべていたら、爺さまから話しかけられた。


「太郎は、町に行きたいか?」

「うん…。行ってみたいけど、俺まだ割り算ちゃんとできないから…。」

「そうじゃの。割り算ができるようになったら町へ行く約束だったの…。(難しい割り算じゃなく、簡単な一桁の割り算ができたらそれでよかったんじゃが…。)」


爺さまが奥歯に何か挟まってるかのようにモゴモゴ言っていると、いつも修練には厳しい婆さまが思わぬところから助け舟を出してくれた!


「太郎は、毎日いい子にしてるし、町に出ても爺さまの言う事を聞いて自分勝手に動かないって約束できるんなら、そろそろ連れて行ってあげてもいいんじゃないですか?」

「えっ、いいの!それなら、約束するよ!俺、町に出ても爺さまの言うこと守って絶対にちゃんといい子にしてる!」

「そうじゃのう。それが約束できるんなら連れて行ってやるかの。」


 爺さまが町に連れて行ってくれるって!うわっ!嬉しい。あれっ、でも婆さまは…?


「うしれいけど、でも…、婆さまは一人で残って大丈夫?」

「あれ、わたしの心配をしてくれるのかい。優しい子だねぇ。」


 婆さまが目を細めて、優しく微笑んで俺を見る。なぜか爺さまは呆れた顔をしている。


「心配いらん。熊が群れで襲ってくるくらいのことでもなければ…、いや、それも皆殺しにしそうじゃの。」

「あらまぁ、わたしももういい歳ですから、それはさすがに追い返すくらいしかできませんよ。」

「まぁ、婆さまを心配する必要はあるまい。」


 爺さまがこれだけ安心しているってことは、婆さまは一人でも身の安全は心配ないみたい。まぁ、婆さま強いから大丈夫なのかな。


「でも、婆さま、ずっと一人は寂しいだろうから、なるべく早く帰ってくるね。俺、頑張って急いで歩く!」

「……。(なんで修羅の道を歩いてきたわしらから、こんないい子が育ったんじゃろ?いい子すぎて、涙が出そうじゃ…。)」

「……。(ほんとに、私に似て優しい子に育ったこと…。愛おしくて涙が出そう…。)」


 二人に、何とも言えない表情でじーっと見つめられて、なんだか居たたまれなくなって、恥ずかしさを隠したくて声を張った。


「爺さま、町には、いつごろ行くの!?」

「そ、そうじゃのう。夕方の空の様子を見て、晴れが続きそうになったら出かけるかの。」

「じゃあ、いつでも出かけられるように背嚢の準備しないと!ふふふ。」

「あらあら、太郎は半兵衛とちがって嬉しいとすぐに顔に出ますねぇ。可愛らしいこと。」


 それから二日ほど過ぎてから、ウロコ雲の広がる空が真っ赤な夕焼けで染まったのを見て、その翌日に町に行くことが決まった。


「忘れ物はないね。山道で踏み外さないように気を付けて歩くんですよ。町に入ったら、爺さまの言う事をよく聞くんですよ。」

「はいっ!それじゃぁ、婆さま、行って来ます。」


 翌朝、夜が明け始めた薄暗い中、婆さまに見送られて家を出て、爺さまの後ろについて田んぼの下に続く山道を歩き始めた。鋼とかの重いものは爺さまが背負ってくれてるから、俺は兎や猪の皮とか干し肉とか軽いものだけ背負ってる。爺さまは、夜通し歩いて一日で町まで行けるみたいなんだけど、俺が一緒だと夜歩くのは危ないってことで、一日目は途中の山小屋に泊まって、二日目のお昼ごろに町に入る日程を立ててくれた。途中で獲物を狩れたらそれもさばいて持っていくから、背嚢には少し余裕がある。町の人は猪とかを食べる機会が多くないから、肉を持っていくと喜んでくれるんだって。半兵衛様の鼻がヒクヒクするかな?あれ?嬉しいときは眉があがるんだっけ?また教えてもらわないと…。


 町には子供たちがたくさんいるんだよね。同じ歳くらいの子供に会うのは初めてだから楽しみ。えっと、喜兵衛様の子供が、源三郎くんと源二郎くん、二人と一緒に学んでるのが小四郎くんと五郎くん。名前に数字がついてるから覚えやすい。友達になれるかなぁ、なれるといいなぁ。


 そんなことを考えながら歩いていると、ふいに前を歩いている爺さまが立ち止まったので、俺も足を止めて、息をひそめた。立ち止まった爺さまが指さした先を見たら、前方右側50歩くらいのところに野兎がいた。爺さまがささやく。


「太郎、やってみるか?」

「うん。そのために弓も持ってきたからね。」

「あの婆さまが、太郎の弓の腕が上がってきたと言ってし、腕前拝見といこうかの。」

「まかせて。」


 弓の練習はいつも婆さまとやっているから爺さまに腕前を見せるのはこれが初めてだ。俺は、音を出さないように背嚢を地面において、そこから弓矢を取り出し、弦を引きしぼって野兎に狙いをつけ、集中する。

 

 ビュッ!


 手元から放たれた矢は狙いを違えずに野兎の頭に刺さった。命中だ!その音でビックリしのか、さらに右手の藪からガガァーと鳴きながら鳥が飛び出してきた。急いでもう一本矢をつがえて鳥めがけて放ったら、うまいこと羽にあたって失速した鳥が地面に落ちた。もし外れてたら矢を失うところだった。慌てないで、もっと慎重に矢を射ないと。危ない、危ない。


「……。(なんだ、この弓の腕は…。婆さん、鍛えすぎだろ…)」

「どうだった…?やっぱり2本目は慌てちゃったから、もっと落ち着いて射れるようにならないと駄目だよね。」


 手裏剣も弓も慌てて狙ったらほとんどあたらないって婆さまにも言われてるのに。練習の成果が発揮できなくて、悔しくなった。


「い、いや。そんなことはないぞ。弓を習い始めてまだ半年にしては十分な腕前じゃ。よく修練した。」

「そうかな。二本目はほんとにまぐれなんだけどね。」


 爺さまが褒めてくれたので、いつまでもしょげてないで、気持ちを切り替えることにして、野兎とライチョウだったにとどめを刺しにいった。息の根を止めてから、その場に穴を掘って血を流し、ある程度血が抜けたら、頭を落とした獲物を背嚢にぶら下げて、先を急いだ。

 その後は、とくに獣に出くわすこともなく、夕方になる前には予定していた山小屋についた。


 今日使う山小屋は、佐助さんたちと連絡を取ったりするときに使ってるものだって教えてもらった。爺さまや婆さまだと山の家からここまで半日で行きかえりができるから、ここに欲しいもの書いた手紙を置いておいたら、それを見た佐助さんがここまでそれを持ってきてくれたりもするみたい。山には、この山小屋の他にも猟師さんたちが使う小屋がいくつかあるんだって。


 山小屋の中は六畳くらいの広さで、水甕があって、鍋、まな板、箸なんかもおいてあった。爺さまが近くの川に水を汲みにいってる間に、小屋のまわりを歩いて乾いた枯れ木の枝を拾ってきて火をおこした。爺さまが帰ってきたら湯を沸かして、まず狩った獣の処理と夕飯の準備を行った。普段、夕飯の準備は婆さまと俺でやってるけど、初めての長い山歩きで疲れているだろうからと、爺さまが夕飯を準備してくれた。爺さまはなかなかの手際の良さで、ここまで来る途中に摘んだ山菜やキノコで雑炊をつくってくれた。美味しかった。


 山小屋で一泊過ごした後、朝早くに起きて、昨日の残りの雑炊をあっためて食べてから、山小屋を出た。今日のお昼前には町につくはずだ。楽しみで足取りが軽くなった。

歩き始めてから二刻(4時間)くらいしたところで、斜面がなだらかになってきて、森の中の木々の間隔が広くなって歩きやすいところに出た。爺さまがいうには、ここらへん近辺の農民が里山として森を整備しているんだって。倒木もないし、山の家の近くの森とは全然違う。人の力だけでこんな森をつくるなんて町の人たちってすごい!


 整備されたその森を抜けると、今度は見渡す限りの田んぼが広がっていた。山の3枚の棚田の作業だけでも大変だと感じてたのに、その何倍、いや何百倍あるんだろう。


「うわっ……。」

「ふふっ。ビックリしたじゃろ。町は人が多いからの。わしら3人だけじゃ到底できないことでも人の力が集まるとできるようになるんじゃ。」


 爺さまが自慢げに説明してくれた。


「すごいよ!すごすぎる!これを全部人の手でやったんだよね。こんなに畑をつくるのにどれだけかかるの?」

「田畑をここまで広げたのは、半兵衛の父が領主になってからだからまだ二十年くらいかの。以前、ここら辺はよく川が氾濫する場所での、全部ジメジメした泥で覆われた湿地じゃった。それで、町の皆で堤防を作って川の氾濫を防いで、水はけをよくするために水路や畔をつくって、ちょっとずつ水田を増やしていったんじゃ。」

「ここらへん全部?!二十年もかけて!すごいなぁ~!」


 俺が感動して目の前にひろがる田んぼをいつまでも眺めていると、爺さまがさらに説明をしてくれた。


「田んぼを作り始めたのは、十二年くらい前かの。少しずつ田んぼが広がっていって、喜兵衛殿が来て、苗を作ったり、さっき通った里山の落葉を糞尿と混ぜて肥料をつくったりするようになってから三年くらい経つかの。」

「それじゃ、この後ろの森を整え始めてまだ三年くらいってこと?」

「そうじゃの。」

「すごい!爺さま、人の力ってすごいね…。みんなで力を合わせたら、こんなに広いところの風景が全部変わるようなことができるんだね。すごい!俺、感動しちゃった。」


 俺が、感動に浸って広大な田んぼを見て呆けていると、同じ風景を眺めている爺さまがため息をついた。


「じゃがの。この町が豊かになればなるほど、それを暴力で奪おうとする輩も出てくる。」

「前に山に現れた賊みたいな人たちのこと?」

「そうじゃ、奴らくらいの小勢ならよいが、もっとたくさんの人がよってたかって奪いに来たら守るのも大変じゃ。」


 初めて山に入ったときに出会った、隙のない鉢巻きの大男を思い出す。


「それでも爺さまくらい強かったら、なんとかなりそうだけど。」

「わしがいくら修練を積んで強くなっても一人でできる事には限界がある。相手もわしらに負けじと厳しい修練を積んどるでの。たとえば、婆さまくらいの手練れ5人に囲まれたら太郎ならどうする?」


 手裏剣を構えた五人の婆さまにぐるりとまわりを囲まれた状況を考えてみる。


「それは…、何もできずに一瞬であの世行くしかないね。」

「じゃろう、だから半兵衛みたいな領主は、民を豊かにするだけじゃなく、周りの悪い奴らから民を守ることもできないといかんのじゃ。」

「えっ、じゃあ、半兵衛様だったら、五人の婆さまに囲まれてもなんとかできるの?」


 五人の婆さまを早業で打ち倒す様子を想像……、できない。想像の中の婆さまが強すぎる!


「そうじゃのう…。半兵衛だったら囲まれそうになる前に、婆さまに負けないくらいの強い者を味方にして攻撃を防ぎつつ、五人の婆さまのうち三人くらいを良い条件で裏切らせて、最終的には相手の黒幕を突き止めて、その親族全ての命まで奪いそうじゃの。」

「すごいっ!半兵衛様すごい!婆さまがよく言ってる『来世に至っても逆らう気がなくなるまで心胆寒からしめる』ってやつだね。格好いい!俺も、頑張らないと!」

「いや、まぁ、太郎はそこまで頑張らんでもよいぞ…。」


 そんな物騒な話をしながら、長閑な田んぼのあぜ道を町へ向かって歩き続けた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ