神々による星の造成
はじめて小説を書いてみました。
すでに1章14万文字分は書いてあるので、毎日更新していく予定です。
天の川銀河の片隅にあるとある恒星の第2惑星のはるか上空から、大地を眺めながら、4つの顔を持つ創造神ブラフマーの4つの口がぶつぶつとつぶやいていた。
『もう少し亜大陸をユーラシアにめり込ませた方がよいのではないか。』
『いや、あと数百万年して、魂を送るころにはいい感じの山脈になるはずだから今はこの程度で良いだろう。ただガンジスの川幅が大きくなりすぎてしまったな。』
『そうだな。これでは洪水が頻発するんじゃないか。』
『ふむ、なかなかうまくいかぬものだな。これでどうじゃ!(ぬぅうん)』
『こんどは干上がってしまったな。』
『さじ加減が難しいのぅ。』
そこから少し離れた場所で、善神スプンタ・マンユが、地母神アールマティに話しかけている。
『ここら辺、草原にしたいのに僕がつくるとどうしても森になっちゃうんだよなぁ』
『スプンタ様は善神だから、どうしても命を与えすぎてしまうのではないでしょうか。しばらくして準氷河期になったら、いい感じの草原になるかもしれませんし、とりあえずはこのままでもいいのでは?』
アールマティは、スプンタ・マンユがどうせ最後は投げ出すのがわかっているので、いつものように適当に答えた。
『まぁ、いざというときはアンラにたのんで命を刈り取ってもらうよ。』
やはり、最後まで自分で面倒を見る気はないらしい。
『スプンタ様とアンラ様は、よく喧嘩をするわりには仲いいですもんね。』
『べ、別に仲がいいってわけじゃないんだからねっ。』
『(……。日本のアニメに影響され過ぎ…。)』
さらに東へ遠く離れた海上にわずかにつくられた島々の上空では、夫婦神が長い棒を使って大地をこねくりまわしていた。
『イザナギ、さっきからちょっと強引に地形変動させ過ぎじゃない?』
『しょうがないだろ。この辺はプレートがいくつも重なってて、大陸の神たちみたいに大雑把につくってたら陸地なんかなくなっちゃうんだから』
イザナミは夫であるイザナギの腕を信じてはいるが、以前の災害が起こりまくった大地の嫌な記憶が甦り、以前にも増して複雑な大地の重なりに憤然とする。
『前もそうだったけど、うちの島国って大陸のしわ寄せ受けまくりよね。』
『地球ではしわ寄せで地震と火山ばっかりの島国になっちゃったわりに資源もろくにとれなくて民が苦労したからな。今度はこっそり資源をねじ込ませてあげないと』
よく見ると、イザナギが天沼矛で、なにやらプレートの奥の方を怪しげにこねくり回している。
『ちょっとそれ大丈夫?鉄鉱石どころか石油まで大量に埋蔵させちゃってるじゃない。』
『し~っ、こっそりやってるんだから大きな声で言わない。』
ここに至って、イザナミも、地球と同様プレートの重なった場所になってしまった腹いせに、イザナギがその愛し子たちにプレゼントを与えているようだと気づいた。
『でもそれじゃ埋める位置が深すぎない?これじゃせっかく資源があっても気がつかないんじゃない』
『他の神に見つかっても文句をいわれないようにするにはこのくらいの深さにしとかないとね。それに、まだ魂を送るまで時間があるから、これからマグマにつられて地表付近にまであがってくるはず。』
イザナミが、夫の天沼矛の絶妙な使い方に感嘆する。
『さすが地球で一番複雑なプレートをうまくまとめ上げて続けただけはあるわね。』
『まぁね。地球では地震の被害を最小限にするのに神経すり減らし続けたからね。地殻の細かい変動については他の神の追随を許さないレベルにいると自負してるよ。今度も入り組んでて大変だけど、このままいけば地震と火山の被害は地球のときよりかなり減るはず。』
イザナミは、自らの夫を尊敬と敬愛の眼差しで見つめた。
『さすが、私のダーリン。大好き』
『……。(うちの嫁が可愛すぎる)』(デレッ)
そこで、神々の頭の中に直接響く音声ガイダンスが流れだした。
【みなさま、あと1000万年でタイムリミットです。】
【タイムリミット以降は、生態系が大幅に変化するような地形変動は禁止となります。仕様書に書かれたルールに記載された細かな変動のみ可能となります。】
夫婦神の隣の大陸の上空では、龍の化身であり巨人へと変化した創生神盤古が、その子である黄帝と、元気のない声で話していた。
『盤古さま、大陸の形はなんとか形成されておりますが、このままだと不毛の大地になってしまいますぞ。』
『黄帝よ。地球のわが民たちは数こそ多かったが、我に対する信仰がほとんどなかった。ゆえに神気が足りないのじゃ。』
『確かに。最後まで大量の神社に詣でられまくった日ノ本の神がうらやましいですな。わが民が比較的多く信仰していた仏教の神々の力を借りたくても、彼らは大地をつくった経験などありませんし。』
2柱は目を合わせ、示し合わせたかのように肩を落とした。
『そういうことじゃ。わずかな力を振り絞ってでも、我が民が他の民らとの争いに負けない大地を作らなければ。』
そのとき、一人の美麗な衣に身を包んだ女神が現れた。
『あら、盤古さまに、黄帝さま、私も精一杯お手伝いさせていただきますわ』
『『女媧…。(こいつすぐに飽きて遊びはじめるんだよなぁ…)』』
2柱は、再び目を合わせ、今度は示し合わせて、女神を無視した。
また、遠く離れた大陸につきささる半島の上空では、主神ユピテルが、その妻である女神ユーノーと近く形成を終えて雑談をしていた。
『ユピテルさま、半島の形が綺麗な長靴型になりましたね。さすがです。ただ、このままだと人類が登場するまでにアルプスが形成されませんよ。』
『うむ。まぁ、しかたあるまい。大陸の民と交流がはかどっていいじゃろ。ただ、シチリアの形がうまくいかんの。丸くなってしまった。』
大陸から突き出た人間の足のような半島のつま先の先端に少し離れて丸い形のシチリア島が形成されている。
『ユピテルさま、これだと、サッカーしてるみたいじゃないですか?』
『うむ、ワールドカップ制覇を目指す民になってもらうためには、このくらいの形の方がよい。なにも問題あるまいて。』
『(何いってんの、この親父…?)いえ、この星で、サッカーっていう競技が生まれるのかも、ワールドカップが開催されるかもわからないですねけどね。』
『むぅ、神気を使い尽くしてでもルールについての天啓をあたえるか…。』(ブツブツ)
『カルチョ中毒が過ぎる…。』
その向かい側の大陸の上空では、ハヤブサの頭をもつ太陽神ラーが、豊穣の女神イシスと談笑していた。
『ラー様、ナイル川の周辺が植生豊かなりっぱな森になりましたね。』
『そうだな。地球では我が民が文明をもつのが早すぎて、環境保護の知恵を持つ前に全部伐採してしまったが、今度はそう簡単には伐採できぬであろう。打てるだけの手は打ったしな。ふはははは。』
ラーが、自信ありげなドヤ顔をイシスに見せながら高笑いする。
『確かに森にも川にもとんでもない量の猛獣を放ちましたから、人類が踏み込んだら危ないですし、そう簡単に伐採されることなさそう…ですけど、こんなに猛獣が多くて大丈夫なんですか。』
『わ、我が民であれば、猛獣などものともしない…はずだ。』
『(それはそれで、猛獣が駆逐されて、また伐採が進んじゃいそうですけど…)』
どうやら絶対的な力をもつ神たちにとっても、神の手を離れた後の星で、自由気ままに動き回る人類発展のさじ加減は難しいらしい…。
再び、神々の頭の中に音声ガイダンスが流れだした。
【みなさま、タイムリミットの時間です。これ以降の地形変動は禁止となります。】
【なお地球人類の魂を送るのは、現時刻からおよそ300万年後の統一歴元年からになります。それまでに各地域の仕様書に記載された内容を確認の上、地球から送る魂の選定しておいてください。新たな星に送られる魂は地球での記憶を完全に失いますので、天界にいる魂が記憶の消去を拒否した場合には送ることはできません。】
【また、地球の魂をもつ人類に与えることになった『錬成術』に関しては、脳内にレベル1の情報のみが生存本能として与えられますが、それ以外の情報を与えることはできません。】
【最後に地球からの人間の転移に関しては各地域一人のみとなります。転移者には錬成術の能力は与えられず、満年齢25歳の状態でその年齢までの記憶を保持したままの転移となります。時期に関しては独自に決められますが、転移先は各地域内の陸上でランダムな位置となります。時代が進んだ後の人間ほど転移後の世界に与える影響が大きくなるため、砂漠や山奥などへ転移し、既存人類と出会う前に死亡する可能性が高まります。それらの点をふまえて,人選はよくよく考えられますようお願いします。その他、不明な点に関しては、共通仕様書をご確認ください。】