エピソード5 8月9日②
達也が出発するのを見届けた後、美奈はずっと彼に取り付けたGPSを確認し続けていた。
そのGPSは、達也がいつも持ち歩いているキーケースに取り付けた超小型のもので、彼の動向をこっそり追うことができる。午前中、達也は仕事に集中しているようで、特に何の変化もなく、いつも通りに過ごしていた。それを確認するたびに、美奈は少し安堵した。
今朝感じた寒気は、気のせいだろう、そう思うことにした。無駄に心配しても仕方ない。
午後になっても、達也の動きに不審な様子は見られない。そしてとうとう、達也が仕事を終えて帰宅する時間になった。
しかし、その時、GPSが示した彼の位置は予想外のものであった。達也は、いつものように自宅に向かうのではなく、反対方向の電車に乗っていた。
その電車は、高田ビル方面へ向かっている。美奈は思わず息を呑んだ。高田ビル…。あの日、メールで見たあの場所だ。手が震える。これで確信が持てた。達也があの場所に向かっているということは、やはり何かがある。それは偶然ではない。
慌てて伊達メガネとマスクをつけると、玄関を出て近くのタクシー乗り場へ向かう。日が少し傾きかけていた。美奈は素早くタクシーを拾い、運転手に行き先を告げると、後部座席に身を沈めた。窓の外をぼんやりと眺めながら、車内で自分に言い聞かせた。
達也が何をしているのか、きちんと確かめなければ。
少し短いですが、きりが良いのでここで区切らせてもらいます!
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それでは、良いお年を。