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残酷な描写があります。
苦手な方は避けて下さい。
「まずは、だ。自分及び他人のパートナーたる魔物をダンジョン以外で顕現させてはいけない!ダンジョン法第6章パートナーを得た者への制約1条!2条は罰則だが、三葉は罰則の対象外だから、三葉が6章1条を犯した場合、監督者に責任を負わせる事になる。
つまり、師匠がお前の責任を取るんだよ!」
あ、だから、師匠のフェニックスを顕現させた時、師匠がSSS級からA級に降格になったんだ。
理解したら気分が悪くなってその場でしゃがみ込んで吐いてしまった。
伊蔵じいちゃんが吐き終わるまで、背中を擦ってくれた。
「村雨様の事は気にする事はない。自業自得だからだ。あの人も少し痛い目に遭った方がいい。周りの人達にどれだけ自分が迷惑をかけてるか、一度しっかり自覚せんとな」
「三葉、水飲めよ。今日は、もう休め。顔色最悪だから。ここは片付けておくから、寝室へ行け。歩けるか?」
「大丈夫、です。片付けてから、寝ます」
伊蔵じいちゃんが僕をお姫様抱っこすると寝室に運びベッドに横たえた。
「明日、じいちゃんとダンジョンに遊びに行こう。パートナーさえ決まれば、自分の責任になるだろう?三葉はそこが気になるのだろう?」
伊蔵じいちゃん。わかってくれたんだ。
「じいちゃん、ありがとうございます」
「朝5時に出発するぞ?ゆっくり休め」
***side喜多***
びっくりした。
いきなり吐き始めたから慌てたら伊蔵さんが、対処してくれてる間に何とか落ち着けた。
三葉って、責任感強いんだな。
あんまり、強く言わない方がいいかもしれない。失敗した。
三葉のもんじゃ焼きを片付けると、伊蔵さんが寝室から出てきた。
「片付けさせて悪かったな。ハウスメイドを呼ぼうと思ったんだが、呼べば面倒な事になる。ちょっといいか?話がある。出来ればエミリエも呼んで私の書斎まで来てくれ」
「はい」
エミリエも呼ぶのか、何か大事っぽいな。
エミリエは他人の心が丸聞こえだから、先に知っていた方がいいんだろう。
内線をかけるとすぐに電話に出た。
「エミリエ、伊蔵さんが…」
[知ってるから、説明はいらない。寝るから邪魔しないで]
受話器を叩きつけるように置いた音が聞こえて、電話は切れた。
俺は三葉の部屋を出て、伊蔵さんの書斎に移動した。
ノックすると、ドアが開き伊蔵さんと紫乃さんが迎え入れてくれた。
紫乃さんがおしぼりを渡してくれた。
「ありがとうございます」
メイド長の柏木さんがレモンティーを入れて書斎から出て行くと紫乃さんから話が切り出された。
「…あの子ね、異世界の王子様だったけど、由乃が王様の愛を独り占めしてたせいで、妬まれて赤ん坊の時に熱湯で殺されそうになって、右側に酷い火傷の痕があったのよ」
髪と目の色を褒めたらすごく嬉しそうだったのは、初めて容姿を褒められたから?
異世界から来た王子様っていうのは聞いてたけど何かこの世界より陰惨だな。
「続けて下さい」
「ありがとう。喜多くん。
このままじゃ、殺されると思った王様は、由乃の側にいた女騎士に三葉を託したけど、女騎士は左遷されたと、三葉に怨みをぶつけて、下働きの子供と同じ扱いをしたの。それを延々7年もに渡ってよ?顔の半分が火傷だった三葉は下働きの子供達にも、使用人達にも、1年に1度来る同じ王族の異母兄弟達にも、イジメられて、和重が迎えに行った時には、こんな状態だったらしいわ」
震える手で差し出された写真には、今よりずっと小柄な三葉が、髪を皮膚から剥がれ、落ち武者のように矢が背中に無数に刺さり、それだけでも酷いのに、火傷がある右側の目はえぐられて血だらけの口に咥えさせられていた。
遊び半分に斬りつけられた下半身は大切なものがなかった。
「ハイポーションでも、失った部位は治らなくてね、あの子、子供が望めないの!!」
わっと、泣き出した紫乃さんの肩を抱き寄せた伊蔵さんが目に涙を滲ませながら、力強く言った。
「あの子は生きてる!それだけでいい!泣くな、紫乃さん。今から、辛いのは三葉だ!」
「それで、俺に何のお話ですか?」
伊蔵さんは俺に三葉の守らなくてはいけない場所を教えた。
「右眼と髪が人口部位だ。右眼は完全に機械だ。髪と地肌が簡単に言うと誰かに入手されたら困る。DNAなんぞ抽出出来ない素材だからな。一応、村雨様から魔力が低下するから髪は切るなと言ってある。もし、髪の毛のことで何か言われたら誤魔化して欲しい」
それはおかしい。
「三葉に正直に言うべきです!隠そうと思うからおかしな事になるんです!彼は生きてて、家族と温かい関係を築けたらそれで文句無いはずです!この寮の事もしきりに申し訳ないと謝ってるくらいですから」
「……わかった。髪と目の事は打ち明ける!ただし、冒険者には必ずなってもらわないといけない。ひと月1億出そう。三葉の専属になってくれないか?」
ひと月1億?! やりたいけど、あの妙な力が気になる。
「あの力は何ですか?」
伊蔵さんが口をつぐむ。
……なるほど、ヤバいんだ?
「力がはっきりするまで、お返事は致しません。それでは」
席を立つと同時に紫乃さんが俺にすがった。
「お願い!三葉には言わないで欲しいの!力の秘密は」
思ってたより胸クソ悪い答えだった。
もし、その力が王子様だった頃に発現してたら、三葉はきっと皆に大切にされて育っただろう。
しかし、発現の理由が、王子様として致命的な物だから、皮肉としか言いようがない。
「判りました。契約期間は5年間。俺の方針に口出ししない。それを守ってくれるなら、契約します」
***side三葉***
良く、眠れなくて自動撮影機能付きドローンに手を伸ばした。
スイッチを世界配信にして起動させたら、待っててくれた人達がいた。
ほのぼのQ: お、なんだ。眠れないのか?どうした。お話してみろよ。
じゅ*さ~さん命: 今、俺たちしかいないから言ってごらん。
「明日、呼び島ダンジョンに行くんだけど、僕でも捕まえられそうな有用な魔物を教えて下さい!」
じゅ*さ~さん命: 冒険者証を見せて。電気付けてからね。
ほのぼのQ: ドローンの上にボタンがあるだろ?そうそれ。電気付けたら魔石の減りが早いから、予備の魔石近くに置いとけ。
言う通りにして冒険者証をドローンにかざしたら、爆速でコメント欄が流れていく。
ほのぼのQ: 初心者でA級で監査役?!
じゅ*さ~さん命: ふぉっ!?マジか?!ちょっと待ってて、証拠消すから!監査役なのは、バラしちゃ駄目!冒険者証はダンジョン入り口と決済の時使うぐらいにしときなさい!
コメント欄が見る見る内に無くなった。
じゅ*さ~さん命: 呼び島でパートナーをgetするコツは自分の勘を信じること。この子でいいか、なんて妥協しないのがいいパートナーに巡り会う為のコツだよ。クローブ君なら頼りになるパートナーに巡り会えるよ。
ほのぼのQ: クローブなら30層以上に潜った方がいいと思う。妥協しないけど高望みはするなよ?
「ありがとうございます!やっと眠れそうです!」
ほのぼのQ: 聞きたいことがあったらまた、配信しろよ?おやすみ。
「はい!お願いします!おやすみなさい」
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