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夜になって目が覚めた僕は喜多さんに伊蔵じいちゃんと紫乃ばあちゃんが呼び島と始まりの町の持ち主で世界有数のダンジョン長者だと教えてもらった。

「じゃあ、借金取りが毎日押しかけたりしないんですか?」

「あのなぁ、1日に何万人から入場料取ってると思ってんだよ!こんな家一軒ぐらい、1週間の入場料で建てられるわい!借金なんかするか!」

「僕、おじいちゃんとおばあちゃんが生きてる内にお金返せるかな?」

「孫にプレゼント、だから!返さなくて良いんだよ!金にセンシティブ過ぎるだろうが!誰が考えた教育プログラムなんだよ!いいか?!三葉。始まりの町と呼び島は、いずれお前の物だ!」

「和重おじさんの物だよ?」

「あ~ね。あの人はダメ!それはユグラシドルが認めなかったから、ハッキリしてんの!

それに、ダンジョン法7条に「ダンジョン所有者はB級冒険者以上であること」が義務付けられてるから、和重おじさんとやらは、資格が無い!」

「ユグラシドルって誰ですか?」

「世界冒険者機構が保有するスーパーコンピュータの事。……なあ、聞きたいんだけど師匠に座学教えてもらったんだよな!」

「魔法学なら教えてもらいました。ダンジョンの事は呼び島に行ってから教えてもらえるって聞いてます!よろしくお願いします!」

「丸投げしやがったぁあああー!師匠ぉおおおおめぇえええ!!」

フローリングの床を手足を目一杯伸ばしてゴロゴロ右に左に転がる喜多さん。汚いよ?

「あ~、明日から3ヵ月ダンジョン法の勉強な?」

ようやく床から立ち上がると、そう言って部屋から出て行こうとドアに手をかけ、振り返る喜多さん。

「ご飯だから、食堂行くぞ!」

生活魔法のクリーンを掛けてあげると、喜多さんに抱きしめられた。

「三葉、いい子。ありがと」

「いろいろ教えてくださってありがとうございます」

「お前の目と髪、綺麗な色だな?サムライが羨ましがってた」

僕らは並んで歩きながら屋敷のほぼ真ん中に位置する食堂までたわいない話をした。

目は火傷の影響で良く見えなかったからどんな色か、知らないけど、髪はカビが生えてるみたいだといつもイジメられてたから、ほめられて嬉しかった。

 怖がりの僕は火傷の治った今でも鏡が見られないでいる。


食堂はお座敷で驚いた。

かなり広くてこの屋敷に住む人皆が食べていても広すぎるぐらいだ。

 昼間僕を眠らせた長髪の女性も食堂に来ていて、僕を見て微笑む。

「やっとうるさくなくなったわね」

別にイヤミを言われた感じではなかったので会釈した。

「エミリエだ。エミリエ、三葉。よろしくな」

「座学教えるのね。お気の毒さま」

「うっせぇわ!三葉、ここら辺座るぞ」

意外!外国の人なんだ。しかし綺麗な人だな。

「はい、お箸持って来ますね」

「あ~、いい、いい!気になるならお茶入れてくれ」

「喜多さん、新人?今晩わ。頼光よりこうです。コーちゃんって呼んで」

こういう人をチャラ男というのだろうか?参考資料で見た芸能人に似てる。

「グフッ」

エミリエさんがむせている!お茶、お茶!

光さんにもお茶を渡す。

「おーっ!気が効くじゃね?ちょっと話して行こうかなあ」

「三葉、監査委員だからな?変な話ならよそでやれよ」

「またまたぁ!喜多さんにはいつも脅される!冒険者証出してみな、三葉」

ネックストラップに付けた冒険者証を光さんに見せると光さんとエミリエさんが覗き込んで来て2人同時に立ち上がり座敷から降りたと思ったら、爆走して食堂から出て行った。

「僕、監査委員とか師匠から聞いて無いんですけど?」

喜多さんは僕に箸を取ってくれながら片手で冒険者証の銀の線を指差す。

「この銀色のラインが監査委員の印。師匠にカメラが何かの使い方教わらなかったか?」

あ?!あれかぁ!

「自動式ドローンの使い方を少し」

なんか、社内配信が公式配信になってて、師匠も僕も、めちゃくちゃ怒られた事件ね。

 すぐに削除して何もなかった事にされたんだけど、52人だかが視聴してて師匠も僕もドン引きしたんだよね。

2人とも公式配信されるの初めてだったから、どこぞの冒険者とその弟子が、ダンジョン配信の練習してるって好意的に受け止められたみたい。コメント読んでホッと一安心してた。

 それが監査につながるとは思わなかったけど、ね。

「いつから始めるんや!」

短髪細身の日本人青年が必死の表情で僕に詰め寄って来るのだが、赤いトレーナーの前身頃に「わて、アホやねん!」と書いてある文字から目が離せなくなってた。

「わて、ってどういう意味ですか?」

「これか?!ええやろ!わて、は、自分の事で、やねん、はだからって意味!つまり、【俺、アホだから!】って自分をディスってんねん!」

「それは、可哀想です。さらし者じゃないですか」

「喜多さん、哀れまれとる。どないしょう?」

「三葉、これは周りの人達に溶け込もうと努力してる証だから哀れまなくていい。気にするな。コイツ、星野流星。流星って呼んでやって」

「はい。流星さんよろしくお願いします!古舘三葉です」

「ああ、そういやぁ伊蔵さんのお孫さん来る言うてたな!よろしゅう!…じゃなくて、いつから監査始めるんや?!」

「えっと、撮影は、機材が手に入り次第です」

流星さんはにっこり笑って黒いジャージのズボンのポケットに手を入れて肩で風を切って食堂から出て行った。

 今のやり取りを聞いてた師匠の弟子達もゆっくりご飯を楽しんでる。

「今日のおかず、丼に盛って食べるのが、正しいんですか?」

喜多さんに聞くと単品でも楽しめるようだが…

「あいつら野菜嫌いだから、天丼にして食べてんだよ。三葉も作ってやろうか?」

食べたいの見透かされてる!恥ずかしい!!

 僕は顔を熱くして頷いた。


天丼、美味しかった!

 部屋までの道は覚えたから食堂で喜多さんとは別れた。

自分の部屋に着くまでの間に何にもない部屋に監禁されたり、師匠の弟子達の部屋に軟禁されたりして、自分の部屋に帰ったのは喜多さんと別れて3日後の夕方だった。

 部屋では伊蔵じいちゃんと喜多さんがご飯を食べていて内線で僕の分も持って来てもらった。

 ご飯には困ることは無かったけど、何で皆が軟禁したりするんだろうか?

 オムライスって甘くて美味しい!

結局2皿平らげた。

「荷物を整理しなさい。三葉」

クリーンを自分に掛けてベッドの上に置いたアイテムバッグから退院祝いのプレゼントを取り出す。ん?何?この入れ口につっかえてるの。

僕が両腕で抱えるようなデカい箱が出て来た。黒地に金のピンストライプが入った包装紙を剥がすと超精密記録機器と師匠が筆ペンで書いた文字が目立つ段ボール箱を開けると師匠に使い方を習った自動撮影機能が付いたドローンだった。

僕は撮影開始のボタンを押して手を放すと、ドローンが勝手に頭上に浮き、撮影し始めた。

 僕はドローンの方を向き冒険者ネームでの自己紹介をした。

「師匠観てますか?クローブです。早速、監査を始めます!」

コメント欄にお便りが来る。

[師匠:遅い!3日も何してた?!]

頑張るお姉ちゃん: そうだ!何してた!

ダークハンター: そうだ!何してた!

ほのぼのQ:……へぇ、綺麗な顔してるな。観に来た甲斐があったぜ!

じゅ*さ~さん命: ↑お巡りさんこの人です!

ほのぼのQ: 何、通報してんだよ?!俺は最年少冒険者観に来ただけだろ!

変態魔神: 3日の全裸待機は厳しかった!

ほのぼのQ: ↑今だ!呼べ!!コイツだ!


「ん?世界配信になってるぞ?クローブ。ここに切り替えスイッチがあるだろ?ポチッとな。これで師匠とだけやり取りが出来る」

ズラリ並ぶコメント欄に困惑してると喜多さんがドローンを捕まえて、社内配信にしてくれた。

「師匠、クローブは監禁されたり、軟禁されたり、してて、部屋に帰ったのはさっきです」


[誰に監禁、軟禁されたか、わかってるのか?クローブ]


「部屋の位置は覚えてます」

「「それじゃ、駄目だな」」

伊蔵じいちゃんも喜多さんも渋い顔をしている。

「全員、なんか動物飼ってる匂いがしたから多分嗅いだらわかります。喜多さんもなんか飼ってますよね?」

「今、持ってるけど、どこから匂いがする?」


[おい!鬼気きき止めろ!ソイツを試すような真似はするな!!えらい事になるんだよ!]


僕が危険人物みたいな言い方やめて下さい。師匠。

僕は喜多さんのしてるトンボ玉のチョーカーに触れた。部屋の温度が一気に上がった。

「クッ!?顕界しそうになるだと!?クソッ!離れろクローブ!!」

「ああ、師匠のと一緒なんだ。【出て来ちゃ駄目!】」

部屋の温度が下がった。

温度変化をもたらす「お友達」は、ダンジョンの中でしか封魔具から出て来られないようになってるが、僕が持っている能力がお友達を刺激するらしく、師匠のお友達は顕現して猫にマタタビを与えたみたいに僕をずっとベロベロ舐めてご機嫌になっていた。

 その隣で師匠が「ああああああ、降格処分対象になったああああああ!」と喚いていたが、そんなこと習って無いし。


「配信止めます!師匠。今からダンジョン法を犯す前に座学させないと、ですから!」

配信のスイッチが切られて、強制的に座学の授業が始まった。

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