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「初めまして。ドライバー兼三葉様の執事の古館伊蔵と申します。お車にお乗り下さい」

 親戚なのかな?名字が一緒だ。

グレーのスーツに身を包んだ少し強面の初老の紳士に親近感が湧く。

日本人にもゴードンみたいなのがいた!

 新鮮な気持ちに浸っていると、車に乗せられて移動した。車に乗るのも初めてだから、窓の外に流れる街並みを興味深く観察した。

「今からは山の中に入ります。道がかなり蛇行しますので気分が悪くなったら早めにお申し出頂けると助かります」

「はい!」

山の中に家があるのかな?

なるほど、グネグネ道を緑深い方へと車は進む。

 そして到着したのは空港。

「あれが航空自衛隊基地です」

航空自衛隊の基地が併設された空港は、冒険者達で溢れ返っていた。

 皆、僕と同じく呼び島に向かうようで大きな飛行機はあっという間にいっぱいになった。  

 満席なのにどうするのかと思えば、伊蔵さんは僕のアイテムバッグを持つと自衛隊の輸送機に僕を誘導し、タラップ前で僕の冒険者カードを出すよう言った。

 運転免許証のように、証明写真と誕生日、免許取得日、住所、本籍地が書いてある白地に金と銀の線が入った僕のカードを自衛隊の人が確認すると直立不動で僕に敬礼して、そのまま、搭乗する運びに。

 初めての空の旅はわりと快適で飲み物や食べ物を迷彩服に身を包んだシャキシャキ動く自衛隊員達にサービスされてる内に無人島というには大きな島のヘリポートに無事到着。

しかし、さっき山の中にあった空港とは明らかに規模が小さかった。

「大きな飛行機はどこに着陸するんですか?伊蔵さん」

名字で呼ぶとややこしいから名前呼びすると伊蔵さんは目を細めて僕の頭を撫でた。

「呼び島空港は香川県側にあります。海沿いに宿場町があって、そこは「始まりの町」と世界中の冒険者達から言われてます。呼び島に住んでいるのはほんの50人程で、冒険者達は始まりの町からフェリーに乗って「呼び島」に来るのです。

 今日から私達は呼び島の住民です。では、寮に行きましょう」

伊蔵さんは、僕のアイテムバッグを持つとヘリポートから少し離れた場所にある駐車場へと僕と手をつないで向かった。

遠くからでも見えるその大きな赤いバスにはドライバーさんしか、乗ってなかった。

「ほわ~!ちっちゃ!!まだ、小学生だっけ?俺、喜多貴教ね。何故か『お兄さん』と皆に呼ばれる人気者だ!これ、俺のカード。三葉君のも見せて~」

喜多さんのは、黒地に金の線が二つ入った物だった。

「わあ、師匠のに似てる!」

「はは、俺達のじゃ、足元にも及ばないよ」

僕の冒険者カードを出して喜多さんに見せると喜多さんは強張った顔をした。

 おもむろに携帯型の真偽鑑定ライトを当ててカードが偽物じゃないか調べていたが、本物だとわかってくれたらしい。

 何故か頭を抱えている。

「マジか。うーん、とりあえずバスに乗ろうか?」

「はい!今日からよろしくお願いします!」

「いや~、いろんな意味でよろしくされるのは俺達だから、いやいや参ったな、マジか」

唸りながらドライバーズシートに座ると、僕と伊蔵さんが座席に座るのを待って、喜多さんはバスを発車した。

 寮とやらに着くまでの間、伊蔵さんがこの島の事を教えてくれた。

「呼び島は外周100キロメートル足らずの小さな緑深い島です。ここのダンジョンは56層とそれほど深くはありませんが、世界で唯一魔物をテイム出来るダンジョンなのです」

「それって、人がいっぱい来るって事ですか?」

世界中から冒険者達が押し寄せる島。

「そうですね。三葉様のお仕事は、そんな冒険者達の身の程知らずを懲らしめることです!」

「み、身の程知らず、とは?言葉通りですか?」

「ガハハハハ!!ナイス!伊蔵さん。まあ、明後日からやってみりゃ、わかるよ、三葉君」

 喜多さんは、それ以上何も言わずにご機嫌でハンドルを握って鼻歌交じりにドライブを楽しんでいた。

サンセイルにあったライル父さんの避暑地の別荘よりもゴージャスなお屋敷の前庭に無造作に停まったバスを降りて伊蔵さんの後を追いかける。

 喜多さんはこの広すぎるお屋敷に駆け込んで行ったっきり出て来ない。

 伊蔵さんはメイドさん達がロビーの両脇に整列してようがびくともせず、堂々と真ん中の空いてる場所を進んで行く。

 僕は異世界の別荘に興味深々でキョロキョロしながら付いて行く。

 いい匂いがお腹を刺激する。


 きゅ~くるくる


静かな廊下に思い切り響いた。

 は、恥ずかしい!さっき輸送機の中で食べたばっかなのに、何で?!


「三葉様が、お腹が空いてらっしゃる!」

「大変!夕飯まで後2時間もあるわ!」

「えぇい、こうなれば全員投入して夕飯の時間を繰り上げるか?!」

「え、あの!やめて下さい!!僕はさっきお昼ご飯を食べたばかりなので!!使用人さんを急がせないで下さい!!僕は大丈夫です!お料理は時間が掛かるものです!夜ご飯に食べるのを楽しみにしてるのでどうか、ゆっくり作って下さい。部屋で荷物の片付けもありますし、僕の事はお気になさらず」

すると皆が泣き出しそうな顔をした。

「あの、怒ってないよ?これからよろしくお願いします」

「「「「「「「「もったいのうございます!」」」」」」」

初めて身分に相応しい扱いを受けたが、身分が無い世界日本。

 どうなってんの?これ。

振り返ると伊蔵さんが年長のメイドさんの一人にお茶と和菓子を僕の部屋に持ってくるよう頼んでいた。

「伊蔵さん!いいです!」

「伊蔵様?まだ、明かしてないのですか!」

「怒るな、紫乃。お前が居るときにと思ったのだ」

イチャイチャしてる初老の2人に何の秘密だろうと緊張を高めていると思いもよらないことを言われた。

「三葉、実はな、私と紫乃は由乃の両親で、お前のお爺ちゃんとお婆ちゃんなんだよ。入院中はお見舞いに行けなくてすまなかった」

「あの街には住民として登録してないと入れないのよ。肉親でも駄目なの。村雨様のご好意で、迎えに行くのを許してもらったの。腑甲斐ない私達を許してね」

紫乃ばあちゃんは由乃お母さんに、そっくりだ。伊蔵じいちゃんは全く似てないけど僕を見る目が優しい。

「おじいちゃん、おばあちゃん?僕が孫で良いんですか?」

泣きそうになったが、これは聞いておくべきだ。

「僕、和重おじさんにお金いっぱい使わせたし、おじいちゃんとおばあちゃんにも迷惑かけるかもしれないから、よく考えた方がいいよ?」

 バキッ!!

伊蔵じいちゃんが壁を叩いてヘコませた。

「おのれぇー!和重ぃ!何考えとるんじゃああああああ!」

「和くんったら、ホホホ。伊蔵さんやっておしまいなさい。あらあら、泣いちゃった?大丈夫よ。伊蔵さんと私は貴方以上に貴方の事を知ってるし、ちゃんと話し合って貴方を引き取るのにしたのよ。三葉くんは、私達の可愛い孫よ。ずっと一緒にいましょうね。王子様みたいな暮らしはさせられないけど食べ物には困らない暮らしをさせてあげたいの。おじいちゃんとおばあちゃんに頼って?お願い」

でも、別の事で困らせるかもしれないし。

 僕は近づく紫乃ばあちゃんから逃げた。

「はい、捕獲!どうした?ワガママ坊ちゃま。この寮が気に入らないのかよ」

レスリング選手のように鍛え上げられた巨体の持ち主は外国の人みたいだった。浅黒い肌と染めたパステルピンクの髪を頭頂部で束ねてちょんまげにしている。

「鬼の伊蔵がたった5年間しか呼び島にいない孫の為に1年前に建てた豪邸何だぜ!」

え?また、お金いっぱい使わせたんだ僕が!!

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!いっぱい働いて返すから許して下さい!!」

借金させちゃったんだ。こんなお屋敷幾らで建てたんだろう?!きっと借金取りが毎日押しかけてくるようになるんだ。

「落ち着け!ガキ!思念がうるさいんだよ!ちょっと寝てろ!」

僕はその女の人の声を聞くと何故か眠ってしまった。

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