鬼 少女 戦慄 血
目の前の少女は、無邪気な笑顔で再びこちらをじっーと見ている。
俺は、その笑顔をじっーと見つめ返していた……決して変な気持ちとかじゃなく、呆然と見つめ返してた。
するとこれまた唐突に少女が口を開いた。
「勇者さん!私と一緒にきてくれませんか!」
「ふぇ?」
やばい、なんだ今の「ふぇ?」ってマジ恥ずかしいんだが、今まで生きてきて「ふぇ?」なんて言ったのは初めてだよ。
少女はひたすらにこっちを見つめてきていた、凄く真剣な顔で。
まぁ、勇者がどうのこうのは置いといて……あれ?置いといていいんだろうか……じゃなくて!
ついてこいというなら右も左も分からない状況だ、お言葉に甘えさせてもらうか。
「あぁ、いいよ」
「ほんと!?やったぁ!」
何故か大はしゃぎ、別にはしゃぐ要素なんかないだろうに、だが可愛いからほっとこう。
「じゃあ、ついてきて!」
少女はよほど嬉しいのかアラ○ちゃんもびっくりの速度で走り去っていった……あれ?走り去っちゃ駄目じゃないか!
「おい!ついていける訳ねぇだろ!」
もう少女の姿が見えないけど駄目もとで叫んでみる、すると。
「ごめんなさい……嬉しくてつい……」
またもやア○レちゃんもビックリの速度で走ってきた、あれ?この子人間だよね?後、俺の方へとまっすぐきたのでぶつからないかとひやひやした。
てか、高校生が小さい子泣かせてるって結構……てか、ヤバイんじゃ……人いないと思うから大丈夫か……?
「あー……俺もすまんかった、叫んだりして悪かった、でも出来れば歩いてくれると助かるんだが」
「うん、ところで勇者さん!」
「ついでに、その勇者さんって言うのをやめてほしいかな、慣れないよ」
子供の遊びだろうがなんだろうが、勇者って呼ばれるのはむず痒いです。
遊びなら多少は我慢するかもしれないが、この少女の場合は本気で言ってるような気がしてならない。
「それだったら何て呼べばいいの?でも、私も『魔王様』って呼ばれるのは慣れてないからそんな感じなのかな……」
「ま、魔王様て……とりあえず、俺の名前は萩原 浩介だから浩介って呼んでくれると嬉しいかな」
「変わった名前なんだね!勇者さん、じゃなくてコースケさんは!」
「変わった名前なの……?まぁいいや、ところで君の事は何て呼べばいい?魔王様?」
冗談で言ってみると、少女はぷくーっと頬を膨らませた……これは誰が見ても可愛いって思うな、なんか小学生の体型でそんなことやられると自分がロリコンじゃないかと思ってしまうよ
「そう呼ぶなら私も勇者さんって呼ぶ……」
「あぁっとごめん、冗談だよ」
「ミム……」
「ミムちゃん……でいいんだね?」
何かゲームで主人公の名前決めるときみたいな訊ね方だな、まぁいいか
「うん」
「わかったよ、ミムちゃん……ところでミムちゃんは何故あんな場所に……?」
ミムちゃんと呼んであげると途端に機嫌を直したようで、俺の質問に答えてくれた
「うーん……鬼ごっこ?」
「何で疑問系なんだよ……まぁ、いいか」
元からだけど、俺の口癖「まぁ、いいか」になってるな……まぁ、いいか……あ……
「あ、鬼さんだ」
「え?どこどこ?」
「ほら、真正面だよ、ちょっとコースケさんは隠れてて?」
「……?りょうかい」
隠れないといけない意味がわからないまま俺は木の陰に身を隠す
鬼の正体も実はわかってない
だが、ミムちゃんの指差した方向を見ていると鬼の姿が見えてきた
そう、【鬼】の姿が見えてきたのだ、彼女の何倍も大きい鬼が
「え……み、ミムちゃん!?」
俺は慌てて彼女に声を掛けるが、反応しない
鬼は自分の巨体を支えてるその足で、ミムちゃんを叩き潰そうとしていた
小さな女の子が目の前で死の危機に晒されているというのに俺の体は動かず、傍観していた
次の瞬間、何かは分からないがとてつもなく大きな音が聞こえ、砂煙が舞い上がりそして地震かと思うほど大きな揺れが襲い掛かってきた
俺は揺れのせいで尻餅をつきながらも、鬼がいた方向を見ていた
砂煙が晴れ、目の前の状況がわかるようになってくる
そこに立っていたのは、背をこちらに向けているミムちゃん
そのミムちゃんの目の前には何かとてつもなく重いものが降ってきて出来ただろう穴
穴の周りには夥しい量の【血】
俺はその光景に戦慄しながら、もう一度ミムちゃんを見る
ミムちゃんも俺の方をみる
彼女の顔には血が、彼女の着ている服にも血が……付着していた
「――――っ!」
俺は悲鳴を堪えきれず、少しだけ声にしてしまった
ミムちゃんにも、それは聞こえていたが彼女は情けない俺を笑う訳でもなく、軽蔑する訳でもなく
ただ、ずっと無表情だった
そういえば、ミムちゃんの容姿を書き忘れていました・・・
いまさら文章中に組み込むのも難しいので、序話を修正して容姿を追加しておこうと思います
興味があれば、ご覧下さい