Eps9.敵襲
「敵襲!?」
突然の事態に、周りには混乱が生じ、すぐさま騒ぎになる。
「・・・ん、どうしたんですか?」
周囲の騒音が大きくなったことにより、リリィも目を覚ます。
「リリィ大変だ!!魔族が攻めてきたって!!」
「ええ!!!!!」
混乱は収まらず、喧騒はさらに広まっていく。そこに、修道士の男性が声を張り上げ、全員が彼に注目する。
「皆さん、落ち着て下さい!!今から、聖堂に移動します。聖堂には、結界があり、安全です!慌てずに、移動してください!!」
その言葉を聞いた人々の反応は様々で、落ち着いて行動する人や我先にと聖堂に行こうと走る人もいた。その中で、高齢の人や体が不自由だと思われる人が目に映る。
「どけっ!!!!」
怒声を上げ、一人の青年がおじいさんを突き飛ばして、走り抜けていく。おじいさんは、バランスを崩し、地面に倒れてしまう。
「あ、大丈夫ですか!」
俺とリリィは、怪我がないか確認するために近づく。
「ああ、大丈夫だよ。ありがとうね」
おじいさんは、立ち上がろうとするが、足元がおぼつかないのか、よろけてしまう。
「肩を貸しますよ。掴まって下さい」
肩を貸し、立ち上がる。
「ヨシモト様、私、他のところも見てきます!」
リリィは、他に移動するのに苦労している人がいないか、見てくるようだ。
「うん。わかった!リリィも気を付けて!」
「はい、行ってきます!」
俺とリリィは別れて、行動をすることにした。
誘導に従い、道を進んでいくと、聖堂に着いた。
聖堂の中は、とても広く、奥の壁には高窓があり。とても綺麗なガラス細工が施されている。その下には祭壇があり、誰かは分からないが男性を彫った彫刻がある。こんな状況でなければ、ゆっくりと鑑賞していたいが、そんな余裕はない。
リリィも逃げ遅れている人を助けているし、俺も早く戻らないと!
おじいさんを席に下ろし、誘導を行っている修道士やシスターの中に、俺たちを招いてくれたシスターを見つける。
「シスター!」
「あ、旅のお方!」
「まだ、逃げ遅れている人はいますか?」
「は、はい、まだ、全員は誘導できていません・・・」
「俺もお手伝いします」
「本当ですか!!ですが・・・」
シスターは、申し訳なさそうな顔をする。
「気にしないでください!!恩返しのためでもありますから!!」
若干、驚いた顔をされるが
「感謝します。お名前を聞いても」
「ヨリモトです」
「私は、フローラと言います。ヨリモト様、逃げ遅れている方の手助けをお願いします」
「はい!!」
俺はフローラさんの言葉を聞き、その場から、駆け出すのだった。