表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/16

Eps8.ダオロス修道院

 おじいさんから教えてもらった道を頼りに歩いていると、ダオロス修道院と思わしき建物を発見した。


「すいません」


 俺は、扉の前に居たシスターのような格好をした女性に話しかける。


「はい、どうなされました?」


 女性の声はとても優しく、不思議と心が落ち着くようだ。


「突然、申し訳ありません。実は・・・」


 リリィは、シスターに街に着いたものの路銀が少なく、宿泊場所に困っていることを正直に話す。


「なるほど、お困りのようですね」


 シスターは、少し考え、こちらを向いて話をした。


「お二人とも、少々お待ちいただいても宜しいですか」


 そう言って、扉の奥へと入っていった。俺とリリィは、少し待つことにした。


「お待たせしませた。お二人とも、こちらに」


 数分して戻ってきたシスターは、扉を開き、奥へと招き入れてくれた。


 △▼△▼△▼△▼△▼ △▼△▼△▼△▼△▼




 木製のドアを抜け、玄関ホールに入る。内装は白を基調としており、シンプルな作りになっている。


「この先を真っ直ぐ進むと聖堂となっています。礼拝の時間以外では、立ち入りできないので、気を付けて下さい」


 興味深そうに見回していた俺に、シスターはそう声をかけ、別の道を案内してくれる。歩いていくと、たくさんの人が生活をしていると思われる共同スペースのような場所だった。


「ここは、家なき方や難民といった様々な方が身を寄せ合い暮す避難所のような場所です」


「避難所?」


 見てみると、肌の色、なぜか頭の上に動物の耳がついている人までいる。


(あれ、本物?)


 リリィとシスターは、特に疑問もなさそうに話を続けている。正直、かなり気になるが、他の人のリアクションを見るにあたり前なこととして認識されている。一旦、心を落ち着けよう。


「魔族の襲撃で家を失ってしまった方や戦でこの国に逃れてきた方といった、理由は様々ですが、ここは、そういった方々が共に生活をしています」


「修道院では、保護も行っているんですね。とても立派です」


 リリィは、素直に賛辞を言った。


「ありがとうございます」


 シスターは、裏表のないリリィの言葉も聞いて、少し照れた様子で顔を綻ばせていた。


「あ、着きましたよ」


 立ち止まった目の前には、大きめのテントが一つあった。中には簡易的な寝床が二つに、中央に、木製の机と椅子が二つあった。


「食事は、パンとスープしか提供できないのですが、それでもよろしければ」


 シスターは、申し訳なさそうにそう言ってくれる。


「そんな、突然の訪問を受け入れてもらうだけでなく、食事まで、むしろこちらがお礼を言うべきことです。本当にありがとうございます」


「俺からも、ありがとうございます」


 俺とリリィは、お礼を言い、食事を受け取った。





「おかしい・・・」


 食事を済ませ、リリィは、疲れがピークに達したのか、すぐに寝てしまった。俺は、受け取った食事に手を付けられずにいた。


「全然、腹が減ってない・・・」


 朝からあれだけ動いていたのに、疲労どころか、腹も減っていない。自身の体に起きている変化を実感し、少なからず動揺している。


 この世界に来て、勢いで行動してきたが、自身に起きている現象、元の世界に戻るにはなど、考えなければならないことが、たくさんあることを一息つき冷静になった今、頭の中に思い浮かんでくる。


「この鎧もそうだけど、俺の体、一体どうなっているんだ」


 いくら考えても答えが出ない疑問に、言いようもない不安感が襲ってくる。これから、本当にどうすればよいか、頭を抱えた。


 その時


 カアーン、カアーンという鐘の甲高い音が鳴り響く。


「魔族が攻めてきたぞー!!!!!」


 部屋に大声が響き渡り、敵襲が起こったことを知る。この世界に来て、分からないことばかりの俺に、安息の時間はないのかと思わず言いたくなった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ