Eps5.夜が明けるまで
<帝都ルピナス>ラナンキュラス地方の中央に位置し、皇帝ルキウス・ユリアヌスによって統治され、神聖騎士団という聖騎士だけで編成された皇帝直属の部隊を持ち、強大な武力によって、広大な国力を持っている。
そして、ダオロス神を崇拝し、光系統の魔法を使用できる修道士を多く抱える<ダオロス修道院>、帝都に本部を持ち、各地に支部がある。
リリィと行動を共にすることを決め、夜が明けるまで数時間あるので、目的地となる帝都のことを彼女から軽く聞いていた。焚火を中央に置き、座って会話をしていた。
「寝なくて大丈夫?」
「はい、一人旅ですので、夜に野宿をする際は、あまり眠らないようにしているんです」
「リリィって何歳なの?」
「十五歳です」
若いとは思っていたが、そんな歳の少女が一人で、旅をしているなんて、何か理由があるのか気になる。
(さすがに初対面で聞くのは・・・)
何か事情があるかもしれないし、流石に踏み込んだ質問をするのは躊躇ってしまう。
(それにしても魔法か、まるで、ファンタジーの世界みたいだ)
ゲームやアニメといった中の話だと思っていたが、先程の自身の体から発せられた光、この体から外せない鎧、魔獣という存在、見知らぬ土地、リリィから聞く話、否定しようにも否定できるものがない。
「・・・・・・」
ふと、先程の自分の行動を思い返してみる。深く考えず助けに入ったが、一歩間違えれば、自分も死んでいたかもしれなかった。身に着けている鎧に気でも大きくなってしまったのだろうか、危ない行動だったと身震いする。
(でも、なんだか『ヒーロー』みたいだ)
寝落ちする前に、画面に映っていた特撮の動画を思い出す。仕事が嫌で、現実逃避のように思い出した子供の頃の夢、そんなのフィクションの中だけだと諦めていた。だけど、さっきの行動は、子供の頃に憧れたヒーローみたいだった。気持ちが高揚するのを感じる。
(もしかしたら、変われるのかな)
器用に生きられず、職場でも浮いていたそんな自分から
「ヨリヒト様、何か覚えていることはないですか?」
「え?あ、いや、全く覚えていなくて、ごめん」
「そんな、謝らないで下さい‼大丈夫です。時間が経てば思い出しますよ‼」
なんていい子だ‼苦し紛れについた嘘ではあるが、純粋にこちらの心配をしてくれる姿に罪悪感を覚えてしまう。
夜がだんだんと明けて日が昇る。そして、二人の旅が始まる。