第二章 思い出
第二章 思い出
エリカ・ブットシュテットが、収容所で働き始め、二日が経った。
「まさか、エリカなのか…。いやそんなわけないよな。」
私は、所長室で一人そうつぶやく。
所長室の扉の叩く音が聞こえた。
「すいません。ラインハルトです。」
なんだ、ラインハルトか……。
私は机に付き書類を棚から出し、机の上に広げた。
「入れ、」
「失礼します。ヨアヒム・オイゲン・ゲート大佐」
「で、なんのようだ。ラインハルト…。私はこの通り忙しいのだが。」
「失礼ながら、ユダヤ人が親衛隊隊員に暴行するという問題が起きました。
現在親衛隊隊員は病室に、ユダヤ人は
暴行を受けた親衛隊隊員に足に一発撃たれた模様です。」
「それなら、よくあることじゃないか。
それは……。」
「それが、新人でして………、」
「まて、どうゆうことだ?。詳しく聞かせろ」
「わかりました。実は新人はなんというか…、その…。我々の中で一番弱く見えられていまして…。」
「そうか……。エリカ・ブットシュテットは…。年齢が20だと思うのに…。」
「大佐、何言ってるんですか……。16歳ですよ。」
「……………。」
16?……。16歳……。?
「とりあえず、病室に向かう。」
「わかりました…。大佐」
「ここの病室にくるのもお前が過去にユダヤ人に殺されかけた時ぶりだな」
「その節はすいませんでした」
エリカ・ブットシュテットは、自分の知っているエリカかもしれない。
1945……。ベルリン
「僕の名前も言っておこう…。
僕の名前はヨアヒム・オイゲン・ゲートだ。」
ボロボロのマンションの一室。
自分はエリカに自分の名前を名乗った。
「ヨアヒムで、いいからな……。」
外は土砂降りの雨が振っている。
「ヨアヒムお兄さん、お母さんはどうなったの?。」
「君のお母さんは、きっと仲間に救われたよ。」
嘘をつくしかない…。
この子には実の母が死んだなんて言えない…。
「そうなの?。」
エリカはこう聞いてくる。
「そうさ……、」
土砂降りのベルリン……。
周りは瓦礫だらけ……。
どうやったら…。
祖国は……、救われるのだろうか