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追放常連大魔導 無双の鍵は宴会魔術!! ~あまりにクビになりすぎたので、最強の嫁たちとパーティーを作りました~  作者: 王子ざくり


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渦巻く策謀

 父さんが言った。


「我が国は、コッパーに対して軍事的援助を行っている。そしてそれによって得た関係を更に強固なものとするため、将軍の息子とコッパーの姫を結婚させるという話が出た。彼個人ではなく、国の考えとしてだ――何故だか分かるか?」


 訊かれて僕は、紙を広げてみせた。さっき師匠が書いてくれた、相関図だ。今回の件に関係する国や人の名前が並ぶ中から、僕は指さして言った。


『コッパー』を。


「この表を見ていて、疑問に思ったことがあります。コッパーに対しては、我が国が支援を行っている。一方、この表では書かれていませんが――」


 指を動かした。

『ミジーン』へ。


ミジーン(かれら)に対しても、どこかから支援が行われているのではないか? そうでなければ、我が国の援助を受けているコッパーとの戦線を維持し続けられるわけが無い。ではミジーンを援助しているのは、一体どこの勢力なのか?」


「どこなのかしらねえ?」と、身を乗り出して母さん。


「ミジーンがコッパーを呑み込むことによって、益のある勢力はどこか? そう考えると、まずは大陸北側の諸国が外れます。彼らにとって、我が国は大陸南側と商売する上での上得意。だから、コッパーを援助する我が国に、わざわざ喧嘩を売ってまでミジーンを支援するというのは、ありえない。ほぼ同じ理由で、北方諸国もありえません。となると――残るは大陸東側」


「ふむ……東側がミジーンを支援する。その結果、ミジーンがコッパーに勝利し――それで? その後、どうなる?」父さんが、ガウンの合わせ目を押さえながら、座り直した。


「ミジーンがコッパーに対し支配的影響力を持つ。そのことで商路が整理され、北方に新たな商圏が生まれることでしょう。そしてミジーンの背後にいる東側とその商圏が合わされば、大陸北側全体を呑み込むことも可能。もちろん反発する国もあるでしょうが、多くは唯々諾々と従うことでしょうね。その過程で、コッパーから大陸南側に繋がる販路も出来上がるに違いありません」


「「それで?」」


「大陸東側と北側がひとつになる。これを逆に言うなら、それ以外――大陸南側だけが切り離されるということでもあります」


「魔王軍と戦争をしてる、大陸南側だけがね」


「はい、母さん。大陸南側は、東と北の連合の経済的隷属下におかれる可能性が高いかと」


「では魔王軍との戦争など、続ける気も起こらなくなるかもだなあ。戦線が崩壊して、南側全体が魔王軍に呑まれかねないかもだぞ」


「そこは父さん、彼らもちゃんと考えているはずです。大陸南側にも、これによって利を得る勢力があればいい。新体制下で南側の盟主となり、以前以上の権勢を得る勢力が――たとえば『カラメテ』とか」

「へえ。『カラメテ』!」

「我が国と戦争中の隣国『カラメテ』が!」


 驚く両親のわざとらしさは無視して、僕は続けた。


「ええ。『カラメテ』にしてみれば、我が国を追い落とせるという、それだけでもやる価値がある。加えて大陸南側の盟主となり他国から利益を吸い上げ、大陸北側東側連合に対しても、魔王軍との戦争を切り札に渡り合うことが出来る。となれば、もう乗るしか無い。この大波に――というわけで、結論を言いましょう。コッパーが獲られれば、我が国も獲られる。だから、我が国はコッパーに援助をするし、婚姻による関係強化も行う……ということでいかがでしょうか?」


 答えは、拍手だった。

 両親だけでなく、嫁たちからも。

 師匠以外の二人は、あっけにとられた表情だったけど。


「「………」」


 セリアもモエラも、まるで僕が気持ち悪い別の生物に生まれ変わってしまったみたいな顔をしている。


「も、もともと家族では、割と、こういう話をしていたから」

「ふ、ふーん」

「そうよね……イーサンって、頭いいっていうか、ポイントを外さないし。こういうところで、培われていたのね……そういう、なんていうか、素養が」


 話を進めよう。


「父さん。今回の結婚話は、父さんの指示によるものだということですけど……」

「ああ。指示というか、依頼だな」

「確かモッド将軍は、独身だったと思うのですが」

「このために、私の部下から養子をとってもらうことになった。人選は王家に任せてな――どうした?」

「意外なんだよ」師匠が言った。「モッドはイーサンっていうかヨアキム=フォン=ゴーマンを嫌っている。それ以前にゴーマン家自体を目の敵にしていると、あなたの息子は考えている。だからあんな『微妙に納得行かない』って顔をしているんだ」

「そ、そうか……」


 気まずそうに、父さんが顔を逸した。


「あ~な~た~」


 そんな父さんの背中を、母さんが撫でる。

 笑顔で。でも細めた目の奥を、寒々と光らせて。

 上から下へ。

 下から上へ。

 母さんの手が三往復もする頃、顔を伏せたまま、父さんが言った。

 目だけを、僕に向けて。


「あのな、ヨアキム……」

「あ~な~た~」


 顔を上げて、言った。


「ヨアキム……実は私とモッドは、学生時代からの親友なんだ」


 え?


「長じて私は宰相となり、やつは将軍となった。しかしだ。宰相と将軍が仲良くしているとだ。それを面白くないと感じる人間も出てくる。いや、出てきてしまったら終わりだ。だからある時期から、やつとは仲違いしたフリをして『嫌々ながら周囲の説得によって仕方なく交流を保っている』という態度をお互い演じることにしたんだ。それを表現するために、だな。その、ヨアキム……おまえが学園に入学するのを良い機会にだな……」


 ああ、なるほど。


「だからモッド将軍は、いちいち僕に突っかかって来てたんですね?」

「そうなんだ。いや、でも実はだな――」


 その時だった。

 家令が近付いてくると、父さんに耳打ちした。

 父さんが言った。


「モッドが、訪ねてきているそうだ」


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