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追放常連大魔導 無双の鍵は宴会魔術!! ~あまりにクビになりすぎたので、最強の嫁たちとパーティーを作りました~  作者: 王子ざくり


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ゴーマン家の天敵

『うわあ』と、思わず声をあげそうになった。

 どうしてこんな所に、こんな人が?


 モッド=フォン=ウォマニア。


 彼は『グイーグ』の将軍で、僕にとっても、僕の家であるゴーマン家にとっても、ほとんど天敵みたいな人物だった。厳密な意味でなく『いちいち突っかかってきてウザい』くらいの天敵だけど。


 何故そんなことになるかといえば、僕や僕の家族が彼とぶつかりあうたび、ただの一度の例外もなく圧勝してしまってるからだろう。だって、勝ってしまうんだから仕方がないし、わざと負けてやろうにも、そんなことする気が起きないくらい、彼の人間性は不快にして手段は姑息に過ぎた。


 僕の場合、彼とトラブルになったのは、主に学園に通ってた頃だった。


 たとえば、学園対抗の剣技大会。国内のあらゆる学園が参加するこの大会で、僕の学園は決勝まで進んだ。その決勝の相手校に、モッド将軍が軍の剣技教官を生徒として参加させたのだった。単純に嫌がらせで。しかもチームの中の1人とかじゃなく、5人中4人を。そのせいで、どの学校のチームもメンバーは全員10代なのに、その学校だけ平均37歳ということになってしまった。


 それなのに、優勝は僕の学校のチームだった。

 おまけに、チームのキャプテンは僕である。


 大会の直前、僕だけでなくチーム全員が母さんの指導を受けて大幅な実力アップをしたのが勝因だった。師匠曰く『大人げない大人が、可愛げない子供に返り討ちにあっただけ』なのだそうだが、こんなの、モッド将軍が面白いわけがない。


 そもそも、モッド将軍が最初にうちの家族に絡み始めたのがどういう理由でなのか。父さんは教えてくれないけど、恋愛関係なのではないだろうかと、なんとなく予想がついてる。特に、モッド将軍が父さんと同じ年齢でいまだに独身という情報を得てからは、ほぼ確信に近くなっていた。


 そんな彼が、こんな所にいる。

 お分かりだろうか――僕がいかに驚き、うんざりしたか。


 そして、モッド将軍がここにいるということはだ。

 モエラのお見合い相手は、彼の息子だということになる。


『え!?『お母さま』が来るって言ってたのに、おっさん!? どういうこと!?』という困惑を必死で隠してる様子のモエラに、モッド将軍は語った。それはもう得意そうに、いかに自分の息子が優秀かを。そして息子を持ち上げるための比較として、ゴーマン家がいかに無能なボンクラ揃いかというアピールを。


「うぶぶぶ。わしの息子は、今年で27歳になるのですが、いまだに独身でしてな。それというのも、あまりに女性からの誘いが多すぎて『誰かを選んでしまったら、誰かを悲しませてしまう。だから誰も選べない』などと言うのです」


 あれ? 息子って……考えてみればモッド将軍って結婚歴ゼロの未婚者じゃなかったっけ。養子だろうか。それとも愛人の子供? そんな疑問に僕が首を傾げてる間に、モエラは――


「はあ……お優しいご子息なのですね」


――心底、どうでもいいって顔になっていた。


「しかしですな。そんな優しさなどというものは、一歩間違えば柔弱のそしりを受けかねんものでもありまして、先日、私が自らですな『お前のその優しさは、女性にとっては残酷! 誰か1人のものとなって叶わぬ恋にキッパリ引導を渡してやるのも男の役目というもの! 覚悟を決めい!』と、こうビシッと言ってやりまして、そうしたら息子も『ああ、目が覚めたようです、父上。それでは振られる彼女たちが納得するような女性を探さなければなりませんなあ』と。そんな時にですな、ご紹介いただいたのが貴女――『セシリア姫』だったというわけなのですよ。うぶぶぶ」


 ちなみに『うぶぶぶ』というのは笑い声だ。

 モッド将軍は、本当にこういう風に笑う。


「うぶぶぶ。わしはグイーグ国の改革を進めておりましてな。宰相を勤めているゴーマン公爵が、子息に跡を継がせようとしておる。わしは、これはいかがなものかと。いやいや、同じ家から宰相が出続けるというのが問題というのでは無くてですな。ゴーマン公爵の子息のヨアキム君というのが、なんというかこう……目の前に霧がかかったようなというか、1を伝えるのに10を話さなければならないというか、そうですな――朝起きてから夜ベッドに入る直前まで寝ぼけたままというか、まあ、悪い青年ではないのですがなあ。うぶぶぶぶぶ」


 遠回しに『馬鹿』と言ってるわけだが。モエラに、僕の正体を伝えなくて良かった。もし僕がヨアキム=フォン=ゴーマンだと知ってたら、モッド将軍の言葉に、モエラは気分を悪くしてたに違いない。いまだって、人の悪口を聞かされて不快そうな表情が出かかっているのだ。これで対象が僕だったら、何か言い返して面倒なことになってた可能性だってある。


「その点、わしの息子は、父親が言うのもなんですが、才気煥発。学業はもちろん、剣の腕も王都の学園で表彰された程でしてな。容姿に関しても、女性に言い寄られること数多なことからもお察し頂ける通り、匂うような男っぷり。性格は……まあ、ちょっと優しすぎるのが難かもしれませんが、愛した女性を護るためなら、エィッ!ヤァッ!と鬼神の如く戦いますぞ。恐れを知らぬ大鷲の如く!!」


 そんな感じで、いつまでも続くかと思われたモッド将軍の息子アピールだったが、30分ほど経ったところで唐突に終わった。


 喉が、枯れてしまったのである。

 最後に、モッド将軍は訊いた。


「ところで、セシリア姫はお幾つでしたかなあ?」


「…………」


「仲介のモーマス男爵から年齢をうかがうのを忘れておりましてなあ。せっかくセシリア姫ご本人が居るのだから、直に聞かせて頂ければと」


「………26歳です」


「ほほう。息子が27歳ですから、ちょうど良かった。いやいやこれは楽しみだ。息子に伝えておきますぞ! 貴女が、いかに可憐であったか!」


 そうして、モッド将軍は帰っていった。


「…………しんどいわぁ」


 一人になった部屋で、モエラが呟く。モッド将軍がいなくなったら、すぐに姿を現すつもりだったのだが、あまりの気まずさにそれも出来なくなってしまった。


 おまけに――


「「「お疲れ様でございます~~~っ!!」」」


――モエラが自室に戻ると、メイドさん達が出迎えて労い、ちょっとしたパーティーみたいになった。


「聞きましたよ姫! 大変だったそうじゃないですか」


「いやー。何やりたいのか全然わかんないですよ、あの人。いきなり年齢とか訊かれたんだけど、あれって嫌がらせだったんですかねえ」


「それは、単純に無神経なだけでしょう」


 昨日は気付かなかったけど、モエラ、メイドさんとめっちゃ馴染んでる。お菓子とお茶だけの宴なのに、酒でも飲んでるみたいな盛り上がりだ。


「公爵のご子息のヨアキム様? 無茶苦茶けなされて可愛そう~『朝起きてから夜ベッドに入る直前まで寝ぼけたまま』ってどんな言われようよ~」


「「「わはははは~」」」


 ごめん。

 それ、僕のことです。


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