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追放常連大魔導 無双の鍵は宴会魔術!! ~あまりにクビになりすぎたので、最強の嫁たちとパーティーを作りました~  作者: 王子ざくり


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パーティー結成!

 セリアが僕のパーティーに!?

 いくら思いつきでも、あまりに唐突すぎるだろう。


 ここは、冗談として流すか――思いながら、セリアを見ると。


「………」


 口元を手で覆い、彼女は考え込んでいた。

 言ったモエラも――


「そう……そうよね。絶対、そうなる……うん、そうなる」


――いつも見慣れた『仕事のできる人』の顔に戻っている。


 そして、2人同時に。


「「ありね」」


 と。


「それは……セリアにとって、メリットがあるってことなの?」


 訊ねると、彼女は頷き。


「そうね。多分、この流れで行くと、またパーティーを作って活動することになると思う――あなたがパーティーを作って、私をメンバーにしてくれるっていうなら別だけど」


「逆にイーサンにとっては、やらない方が損な話なんじゃないかな」


「いや、それは分かるけど……」

「いいえ! 分かってません」


 セリアみたいな、モエラの話だと伝説にまでなってる冒険者の指導を受けられるなんて、本来なら有り得ない話だ。でも、それでは理解が足りないと。モエラは、そう言ってるんだろうけど……


 セリアが言った。


「じゃあさ、イーサン。賭けをしようよ。明日、またここで会おう? その時、モエラが満足するような回答が出せなかったら、君は私のパーティーに入る。見事クリアしたら、私が君のパーティーに入るってことで」


「いいですけど……いいんですか? それで」


「いいよいいよ~。あはははは~」


 いつの間にやら酒になってたグラスをあおり、セリアが笑った。

 どちらにせよ、僕はセリアとパーティーを組んで活動することとなったわけだ。

 そのことに、不満はない。

 むしろ、僥倖だとさえ感じている。


 でも――


 このセリアが提案した賭けに、僕は思い出さずにはいられなかった。以前、師匠とやったゲームを。『じゃんけんヤらせゲーム』という、じゃんけんで負けたほうが勝った方にエッチなことをヤらせてあげるという、そういうゲームを……


 と、つらつら考えてるうちに、僕のグラスもお酒になってた。

 そうしたら、浮かんでしまったのだ。


 回答が。


 とっくに日は暮れて。

「かんぱ~い。ぶへへへへ~」

 いつしかモエラも酒を飲んでるけど、ギルドの仕事が終わったってことなんだろうな。


「ねえモエラ」

「なぁんでぇすか~?」


 明らかに、昨日の打ち上げのときより酔ってる。

 僕は訊いた。


「さっきの話だけど……『戦争』は関係してる?」

「してますねぇ~」

「じゃあ『信頼』」

「してるかな?」

「『冒険者ギルド』『義務付け』『根張り芋』」

「してますしてますしてま~す」


 すると、セリアも訊いた。


「じゃあ『効率』」

「もちろん、ありです」

「というわけで、イーサン――もう回答できる?」


 充分だった。

 頷いて、僕は答えた。


「いま、魔王軍との『戦争』で『根張り芋』の発注が大量に出ている。セリアの話だと、これはしばらく続きそう……ということは、戦争が続く限り『根張り芋』を運ぶ商人の流れは途絶えないということになる」


 逆に言えば、この流れが絶たれると、人類側の戦力維持に明確な支障が出るということだ。つまり魔王軍からしてみれば、襲えば確実に戦果に繋がる標的となるわけだ。


「商人から『根堀り芋』を買って軍に収めてるのは『冒険者ギルド』でいいんだよね?――で、この『冒険者ギルド』が、馬車が魔王軍に襲われた場合のことを考えて、運搬する商人に護衛を付けるのを『義務付け』るか、護衛の有無で買取額に差を付けるようになる。要するに『信頼』に値段が付けられるわけだ」


 護衛の任務を請けるのは冒険者なわけで、冒険者を雇うには冒険者ギルドを通す必要がある。更に護衛として認めるのは、ギルドを通して雇った冒険者だけだなんてことも、ギルドは言い出すかもしれない。


「商人としては、面白くないよね……護衛を付けるのは、それで安全が買えるんだから文句はない。でもこの場合、客が冒険者ギルドっていうのが問題だ。客から金を得るために、客に金を払う。商人にしてみれば、これは面白くない。商人ギルドと冒険者ギルドの間にある心理的な関係も含めれば尚更――そこでだ」


 僕は微笑って言った。

 自分でも、調子に乗ってるのは分かってたけど、いいだろう。


 セリアに手を差し出して――


「僕のパーティーにようこそ! セリア」


 セリアも、その手を取って微笑った。


「よろしくね! リーダー」


 冒険者ギルドに金を払うのが嫌なら、商人自身が冒険者になって、自分で自分を護衛すればいい。自分で護衛任務(しごと)を発注して、自分で請ける。そうやって、冒険者ギルドに払った金を回収してしまうのだ。


「という答えで、いいかな?」


 一応うかがいをたてると、モエラは、すっかり冷静な顔に戻っていた。


「正解です。というか、話は『根張り芋』だけでも無ければ『冒険者ギルド』だけでもない――そういうことになっていくでしょう。『根張り芋』を運ぶ流れが固定化すれば、『それに便乗して他の荷物も』となるのは確実です。やがて『根張り芋』の関係しない輸送においても常態化し――この流れは、戦争が終わった後も止まらないでしょうね。これまで数値化されてなかった『信頼』の価値が、はっきりとした値段に変わる。個々の付加価値だったものがシステムに組み込まれるといってもいいでしょう――いまは、そんな時代の変わり目なのかもしれません」


 ●


 翌日、パーティーの創立をギルドに申請した。


疾風(かぜ)の夜明け団』


 それが、パーティー名だ。

 メンバーは僕とセリア。


 そして、もう1人。


「よろしくお願いします。リーダー」


 カウンターの向こうで微笑む、モエラだった。



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