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少しずつ、まずは書くことに慣れていきたいと思っております。



 聞き込みをしたところ、この依頼はすぐに何度でも張り出される、奇妙な依頼、だそうだった。

 割がいいので見かけた連中はすぐに取って向かうのだが、またすぐに同じ依頼が張り出される。……前の傭兵が達成報告をするよりも、明らかに早くだ。


 偶然依頼を受けたことがある人物にも話を聞いたが、報酬も確実に支払われるので、特に深く考えたことはないらしい。なお、この依頼は受ける人数が多くなればなるほど序層が混むので、小遣い稼ぎにはいいがたまに窮屈な思いをすることもあるのだとか。


 魔晶石というのは現代の魔法・魔術技術を支える根幹資源だ。高い魔力伝導力と魔力貯蔵量を誇り、かつ加工もしやすい汎用資源。新たな技術開発や、今なお小競り合いを繰り返す西側諸国が戦争の資源として使うことが多い。大霊洞はその一大産地で在り、他の追随を許さない圧倒的生産量を誇る。


 ほかの魔力噴出点でも同様の魔晶石は採掘可能だが、採集の難易度はこちらの方が低い。加えて枯渇はほぼしないときている。

 ちなみに、あの螺旋大塔は、その魔晶石を人工的に作成するための機構でもある。50年ほど前に作り出されており、魔晶石が自然で生成されるメカニズムを解明したある大天才によって設計され、建造されたのだ。


 産出量は傭兵や冒険者たちが汗水たらして掘り出す量からすれば微々たるものだが、一定の品質の魔晶石を一定量市場に供給できるというのは、きわめて大きなことでもあったという。


 本題は、魔晶石の使い道である。ギルドは顧客の秘密を守るため、依頼主についての記載は、依頼者本人の許諾がない限りは公開されない。よって誰が、どのような目的で手に入れようとしているのかはわからないのだ。


 悩んだ末だったが、セツナはこの依頼を受けることにした。

 魔晶石はぶっちゃけ、一部を除いて傭兵には必要のないものだ。偶然質の良いものが取れても、セツナは手放したところで気にならない。何人かからも聞いたが、難易度はともかくとして、かかる時間に対して得られる報酬の割は混雑さえしていなければ良いことの方が多い。Bランクの危険地帯であるのでシルバーランクといえど油断ができる地形などでは絶対にないのだが。


 また、ギルドへの信頼もある。この依頼はある意味で特殊だ。誰かが受けてもすぐに張り出されるということは、ギルドが何らかの優遇をしている可能性が高い。セツナが知らないだけで、何らかのシステムを依頼者が利用している可能性がある。いくら依頼主を問わないギルドとはいっても、反社会的行為につながるような依頼をずっと放置しているわけはない。使い道については、ギルドの特務職員が一度は確認しているはずだ。特にここは央都セントラル、三大ギルドによって運営される都市だ。この都市での犯罪行為は、まずギルドが許さない。


 と、ここまで考えたセツナは迷いを捨てて依頼を受けることにした。

 まだまだ窓口で応対しているギルドマスターに手続きをしてもらう。手続きは滞りなく行われ、ものの数十秒で認可の判が押された。早い。めっちゃ仕事が早い。普通のギルドなら数分はかかるはずだ。もうちょっとかかるものだと思っていたが。


 世界一の大都市のギルドマスターともなれば、こうも仕事が早いのだろうか。ちょっとだけ、セツナは気になった。


「はい。依頼受注承りました。またのご利用をお待ちしております。」


 しかし、手続きは完璧である。不備はどこにも見受けられない。……明らかに不自然だったが、セツナは今は考えないことにした。



*   *   *



 傭兵宿舎。大きめの都市ならどこでも存在する、傭兵ギルド所属者ならだれでも利用できる宿舎である。部屋は狭いが、最低限の機能は有している。防音などはないが、ライセンスが部屋のカギとなるような仕組みとなっており、盗人に入られる可能性が著しく低い。そのあたりの金庫よりも厳重なカギである。

 この世界は解錠系の技術を持つ者は少なくない。セツナだってCランクまでの魔鍵なら道具なしで解錠できる。しかし、宿舎に存在するこの手の鍵はギルドの機密技術が使われており、解錠技能だけではSSSランク(常識が通じない連中)でも原理的に解錠不可である、と聞いている。そのため、音以外のプライバシーは宿舎では守られる。どんな希少素材や装備を保管していても、一応は安全というわけだ。


 ……というか、これをまともに開けられる存在が居るとするなら、部屋の壁に穴をあけて強盗する方が楽だろうな、とセツナは聞いたことがある。


 一部屋6畳程度。トイレや水道、風呂などは共用スペースに。あるのはそこそこ大きめのベッドと、大きなアイテムチェストのみだ。セツナは数か月単位でこの部屋にお世話になる。事前に少なくない金額を払って部屋をとったのだ。少なくともこの町で、それくらいは稼ぐ必要はある。


 荷物……といっても背負ってきたバックパック一つしかないが、その中に入っているいくつかの素材や瓶を中にしまい込む。手持ちのものは多くない。必要なものは加工済みであるし、必要でないものはすでに路銀にするために売却済みである。随分と軽くなったバックパックを背負いなおしたセツナは、今度は冒険の支度をするべく、町に向かった。

 




 

☆SSSランク


常識の通じない方々。平均基礎ステータスがこれくらいある方々は、装備や魔法、魔術、その他によってSSSランクをはるかに超える実力をたたき出すことがざらにある。

これよりも上のランクの魔物などは平然と存在し、そしてそんなのを平然と倒すのが彼らである。



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