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序章 全ての始まり

 皆さんこんにちは。作者のカーレンベルクです。予定していた通り、ファンタジー小説を掲載させていただきます。前作はまだ完結していませんが、早くファンタジーを読みたいと言う方もいると思います。よって、前作と並行しながらで掲載が遅れがちになると予想されますが、少しばかり完結に先んじて二作目を執筆するという結論に至りました。あくまで前作優先とさせていただくため、前作の更新については全く問題はございません。ご安心ください。

 ― 序文 ―


 かつて、人類が今とは比べ物にならないほど強力な技術を持ちえた時代があった。


 闇の歴史に閉ざされ、決して我々の前に現れることのない異世界、ルテティア…


 今から八〇〇〇年も前のこと、人々は持てる力の全てを使い、その世界で互いに争っていた。


 地は揺れ、八つの国の軍隊が激しく狂ったように、血を求めてぶつかった。


 やがて力の弱い国から順に倒れ、滅びてゆき、最後には西と東の二つの大国が、世界の陸地を二分した。


 両国の王は激しく争い、神顔負けの戦争を繰り広げた。


 その後、二つの国がどうなったかはわかっていない。


 殺しあい、憎しみ合い、彼らは散っていった。


 …


 …


 過去は未来を照らすために、なくてはならぬもの。


 全てが終わった時、それすらもなくなった。


 聞こえるか、この風のけたたましい泣き声が。


 あらゆる生物の嘆きとなって、世界を渡る。


 しかしそれは姿なき者…


 石ですらもやがては削られ、砂となる。


 誰も知るすべはなくなったのだ。


 人は忘れる…


  ~ 賢者ムルツァの勅令書、第223節より一部抜粋 ~






 ― 序章 ―


 古代の空に夕暮れが現れた。


 雲は赤く染まり、西の帝国イシュムルドは、世界最強最大と言われた宙を舞う魔導艦隊に乗る黄血王、レメ二セス8世と将軍グランメルク、加えて450師団にも及ぶ魔導兵士と指揮官を連れて、東の帝国を打ち負かそうと、上空を約5000隻で航行していた。


 魔導艦隊は櫂を魔力で動かし、凸型の陣形を組んで前進していた。


 また、船には魔導兵たちが乗りこみ、戦いの準備をしていた。


 「陛下。」


 「どうしたグラン。」


 銀のイバラの装飾が美しい鎧を着けたグランメルク将軍が、軍の先頭を突き進む様子を優雅に眺め、袖のあまったローブに身を包んだ老人に言った。


 「間もなく敵艦隊に接触します。 今のうちに全軍にご指示をお願いいたします。」


 「敵の数は?」


 「はい。魔導戦艦1000隻、護衛艦1250隻、援護船隊510隻。 他輸送船団120隻の約3000隻で編成された、250師団ほどの戦力です。」


 レメ二セスはほくそ笑んだ。


 「3000か。 それに護衛艦の比率が戦艦に比べて少ない。 この戦もらった。」


 「しかし陛下。 油断はなりません。」


 「わかっておる。 この戦に勝てば、わしは世界の王となる。 気は抜かん。 全軍に命ぜよ。 このままの陣形を維持せよと。」


 「はっ!」


 将軍は出て行った。






 兵士たちはあわただしく動き出した。


 イシュムルドに対するは、東の強国アルダフメシアの皇帝メドトフ=マルナと将軍ヴァルン・アスバス。


 迫るレメ二セスの脅威を粉砕するため、皇帝は壮大な賭けにでた。


 全艦隊を結集し、今や破竹の勢いの西の帝国に決戦を挑んだのだ。


 「この戦に勝てなければ、帝国はおしまいだ。 覚悟はできているか? ヴァルン。」


 「もちろんでございます。」


 将軍の返答に、皇帝は安堵の表情を浮かべ、あわただしく指令室に入ってきた兵士を見た。


 「何事か?」


 「陛下、将軍。 たった今、先頭を行くわが軍の第170艦隊師団が、敵艦隊を視認したとの報告が入りました。 今すぐご命令を。」


 「ついにこのときが。 よし、戦闘開始!」






 かくして戦争の火ぶたは切って落とされた。


 争いを望む者も、そうでない者も、死の嵐の中に巻き込まれる運命である。


 「敵艦隊、確認!放て!」


 アルダフメシアの軍艦に向けて、イシュムルドの魔導師たちが、火の玉の雨を降らせた。


 結界がそれをはじき、剣を盾で防ぐような耳触りな音を立てる。


 魔道兵たちが艦を守るために、防御魔法を唱えているためだ。


 それでも、時折結界のわずかなすきまに魔法が通り、艦の被害は広がっていく。


 幾千にもおよぶ火柱の黒い煙の線跡が、敵の船に伸び、艦隊に張られている魔法の結界を打ち破ろうとするのだ。


 しかしながら、アルダフメシアも反撃する。


 氷の刃を魔導師たちが絶え間なく投げつけ、動く空の牙城を落とさんと息巻いている。


 「大仕事になるな。 だがこれも今日で終わりだ。」


 レメ二セスが、大仕事と言うのにはわけがあった。


 しばらくして、各部隊の伝令兵たちが、彼のいる指令室に向けて、長蛇の列を作り始めたのだ。


 「第41艦隊より、戦艦マリゲンス、敵艦グル二アの攻撃により舵破損! 隣艦メージュ・ピレーに衝突し左舷が炎上しています!」


 「第9艦隊、敵の包囲をうけ、援軍要請です!」


 「第24艦隊司令ツォイロフ、片目を艦内破片により負傷。 および現在指揮不能!」


 「第78艦隊、敵別働隊の奇襲を受けている模様!」


 「第603船団より、寝返り工作発生!」


 伝令兵たちは次々に戦況を報告し、レメ二セスのほうも、これはこうしろと即座に答えをだす。


 これだけの大艦隊を指揮する王は、いかに素早い対応が混乱を防ぎ、勝利につながるかを知っていた。


 「地上のほうはどうなっておる?」


 「はい。 ウティカ将軍は善戦しております。」






 一方、地上でも激しい争いが続いていた。


 太陽の絵に良く似た紋章を青い旗の布地にはためかせ、イシュムドのウティカ将軍は前方に見えるアルダフメシアの武装した軍隊に向かって進軍していた。


 ウォォォォォーっ。


 敵の雄たけびが聞こえる。


 それもものすごい数の兵士が、視界で確認できるだけの平野の隅から隅までを埋め尽くし、剣を振りかざして襲ってくる。


 やがて両軍は激突。


 「ひるむな! 隊列を崩さず前へ!」


 ウティカの号令に、最前列の重装備の歩兵たちが盾と剣を構える。


 イシュムルドの兵士たちの戦いぶりは知を感じさせるものだった。


 盾で敵兵の前進を抑え、何層にもわたって密集し、疲れたり倒されたりした兵士は指揮官の合図一つで前列が後列と交代。


 絶え間ない温存攻撃にうってでた。


 しかしそんな兵士たちにも厄介なものがあった。


 「上空より、敵艦隊接近! わが軍の右翼と後方部隊を襲っています! ヴあっ!」


 「おい、しっかりしろ!」


 倒れた伝令兵の心配をしているひまもなく、アルダフメシアの戦艦が数百機、魔術で攻撃を仕掛けてきた。


 「アメル・アン・カルティデン!」


 魔術師たちの声が大地にとどろく。


 「全軍退避! 退避しろ!」


 山のように連なる炎が兵士たちにかぶさり、軍は爆音とともに分断される。


 






 …


 数時間後。


 「陛下。 わがイシュムルドは、アルダフメシア皇帝メドトフの旗艦の包囲に成功しました。 残存兵力は敗走し、わが軍の視認圏外です。」


 「ふ。 フははははははは! そうか! では旗艦を撃沈しろ。」


 「はい。 世界の王よ!」


 「ははははははっう、うえええええーっ! げほゲホッ!」


 悲劇は突然に起こった。


 「陛下! 大丈夫ですか? しっかりしてください!」


 「う、うううッ!」


 王の瞳にうつったのは、部屋に飾られた、二人の賢者が左右対称に丸いオーブを掲げて祈る石のレリーフ。


 そのオーブをつかむように、震える手を伸ばす王レメ二セス。


 「うプッ!」


 べチャリという音が床を汚し、その手は自らの吐いた血でまみれた。


 「わしは、世界の王だ!」


 「陛下ーっ!」


 頭を金に染まった冠とともにもたげる王を、将軍は抱えた。


 王の手は、最期まで天にのびたままだったという…


 その指にあったのは、イシュムルドの太陽の紋章が刻まれた青い指輪。


 のちにこの指輪が、古の記憶をひも解く鍵となることは、当時の誰ひとりとして予想し得なかった。


 未来は不安定で、その先は闇ばかり…






 その後、帝国は姿を消した。


 それから8000年後の世界で、人々はある程度の技術を取り戻しつつあった。


 しかし古代のような空を舞う戦艦には到底及ばない。


 人は忘れる…

 



 


 これはあくまで序章にすぎません。あらすじと違うと思われた方、ご安心を。次話からあらすじの通りに物語は進行してまいります。

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