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晴の話

そのマンションの上方の階に、小さな頃からずっと引き籠っている晴という青年がいた。もう外の世界のことはぼんやりとしか思い出せない。それすらも、この長い年月の間に変わっているだろう。そう考えるたび、青年の作った殻は分厚くなっていった。


ただ、同時に外の世界への興味も育っていった。

気が滅入ってしまうからと、テレビもネットも制限していたけれど、唐突に突きつけられる世界のネタバレは、強く彼を惹きつけた。


・携帯はボタンが無くなったのに、もはや小さなパソコンらしい。

・好きだったゲームのキャラクターが街には沢山いて、捕まえることができるらしい。

・車はまだ空を飛び回っていないけど、小さなロボットは飛んでいるらしい。


外の世界の噂は、小さい頃思い描いていた未来に少し似ていた。本当なんだろうか。外の世界はモンスターにあふれ、ロボットが飛んでいるんだろうか。

閉めているカーテンをほんの少しだけ左右に開き、片目だけで外を見た。


「あ。」


窓の外で、白く美しい紙飛行機が飛んでいた。

その日は夏の暑い日で、何でも焦がしてしまいそうな太陽の光の中を白い紙飛行機が涼しそうに飛んでいた。

唐突に、青年は紙飛行機を捕まえてみたくなった。小さい頃にそうしたように、紙飛行機を飛ばし、捕まえて、また飛ばしてみたい。涼しそうに飛んでいる紙飛行機と一緒に外を走ってみたい。


地面に落ちる前に。間に合うかな。


放たれたようにドアを開けると、食事を用意しにきた母親と鉢合わせた。こんなに面と向かって母親と対峙したのは久しぶりで双方面食らっていた。


「……あ」

「あ…… かみ、 ひこうき、が」


ちゃんと聞こえてたのか分からない。彼は言い終わる前に飛び出していった。

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