名もなき人生の一幕 1
両耳に音をはめ、列車を待つ
春一番が整えた髪を逆立てる
それが気にもならないほど
私の心身は重く、知覚を許さない
年を重ねるたび
音量は増してゆく
しかし音から得る高揚は
モルヒネの様に薄れ続ける
時の流れから意識が遠ざかり
刹那の安らぎが心を包む
よく眠れないのは
私にはとうの昔の話題だ
列車到着のアナウンスが
轟音の隙間から入り込む頃
英文の叙情詩が
ソウルと共に幕を閉じる
直後に滑り込んだ列車が
もう一度私の髪を乱す
そうして無愛想に扉が開き
列車は、私の人生を迎え入れた
このような拙文を読んで下さり、本当にありがとうございます。