迷宮生物《モンスター》
迷宮生物とは、迷宮遺跡において真っ先に〈冒険者〉立ちはだかる即物的な驚異にして、迷宮遺跡内で生活を営む、迷宮遺跡の原生生物である。その生態は謎に包まれていて、未だ研究が進んでいない。
我々人類が知る進化の道筋とは明らかに異なる系譜を辿り、既存の法則や学説に当てはめ手考えるのは困難であり、体組織から行動まですべてが驚きと神秘に満ちていて、毎年新たな学説が公表されては学会を賑わし白熱な議論の話題に絶えない存在である。
基本的に迷宮遺跡内でしか生息していないという希少性に加え、〈暴竜〉など特定の迷宮生物由来の物質は人間社会に極めて甚大な影響を与えるので死骸はもちろん革や血液などは高値で取引される。生体の場合の研究価値は計り知れず、捕獲して生きたまま迷宮遺跡外に持ち出されることも多々あるほど。
そんな、迷宮生物の最大な特徴だが、その多くが各民族の伝承や神話、あるいは伝説に登場する幻獣に似た性質を備えていることだろう。まんま、伝承通りの力を有していたり、はたまた神話で語られる以上の超常の存在であったり等様々だが、まるで神話から飛び出たかの様な姿形をし超常の力を宿す神秘的な生命体なのである。
それ故に、神話や伝承、伝説といえのは迷宮遺跡に迷い込んだ祖先が、見たままの光景を伝えて誕生したとする「迷宮遺跡起源説」が提唱されるに至った。確かめようがないので、断言はできないが偶然の一致とはいえないほど迷宮生物と、民俗の幻獣の性質が似通っているので信憑性は高いといえる。
我々人類が生きる世界とは全く異なる迷宮遺跡内の環境に適応し進化した種族なのか、あるいは迷宮遺跡を創造した『誰か』によって造られた生命体なのか、その起源は謎に包まれていて、恐らく〈三つの基軸〉が解き明かされるまで明らかになることはないだろう。
本書は、そんな迷宮生物についての判明している生態や、学説を記載した学術書である。
国際冒険者協会連盟中央情報局迷宮生物情報収集課
課長 國丘 真二郎 監修