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とんでもねぇ、あたしゃ神様だよ!

 公式動画配信やアップデートがなくなったからと言って、イベントも新しい装備も全く出ないか、というと全くそうではなかった。この「禁じられた一狩」は、実に考えられたシステムだったのだ。


 モンスター自体は、以前からいるモンスターでも、特に耐性付き装備を準備していないと、時間経過ごとに固定値の大ダメージを受け続ける設定となっている。また、その耐性付き装備は、前月のクエストからのドロップか、ガチャ装備となっているので、先月のクエストをガッツリ頑張るか、ガチャを引いて特攻武器をゲットすれば、その月は幸せでいられる様になっている。つまり、毎月頑張っていれば、翌月の耐性装備は自動的に手に入る仕組みである。


 また、よくありがちな仕組みだが、月ごとにミッションが決まっている。今月のモンスターのドロップ装備全部集める、などで普通に楽しんでいればどんどんクリアできていき、毎月かなり大量のガチャ石をゲットできる。ドロップ装備より高性能なガチャ装備を、無課金でもそこそこ集めることが可能となっている。


 しかも、ガチャ装備だけは、まだ新装備がリリースれ続けており、そこには新たなスキルが組み込まれているので、なんだかんだ言って、既存モンスター相手とはいえ、今までにない戦い方をトライできる余地がちゃんと残されているのだ。


 という状況なので、攻略サイトの掲示板には、「どうせ、もうすぐサービス終了なんでしょ」などとネガティブな書き込みは見られるものの、俺個人としては、がっつり楽しんでいた。会社休業ということもあり、ベッドに横になったまま深夜までアドベンチャラーを楽しむことができた。


 そんな風に、一週間ほど休業を楽しんだ頃、いつものようにベッドの上でアドベンチャラーをプレイしていると、スマホを持つ手に静電気的ななにかを感じて取り落してしまった。そのまま重力引かれたスマホが、顔にあたって鼻血でも出そう!と思った瞬間、俺は古民家風の薄暗い建物の中の椅子に座っていた。カフェかなにかだろうか、整然とテーブルと椅子が並んでおり、隅にはキッチンカウンターが設置されているようだ。


 キッチンカウンターの前に、老婆が見えた。状況がわからず混乱していた俺は、とりあえず、その老婆の側に行き話しかけることにした。


 「すみません。迷い込んでしまったようです。最寄り駅に向かうには、どうすればよいですか。」


 返事がない。どうやら聞こえていないようだ。お年寄り特有の耳が遠さということなんだと思われる。ここで大きな声を出すのもベタというか、なんとなく型にはまった感じで気恥ずかしい気がして、筆談でも…とも思ったのだが、よく顔をみると瓶底のようなメガネをしている。目も見えているかどうか怪しいということだろう。ここは一つ腹をくくるしかない、といった感じだ。


 「す・み・ま・せ・ん。ま・よ・い…」


 と大きな声で、区切りながら話しかけてみると、話しかけれていることは解ったが、聞き取れるほどの声の大きさでは無かった、ということなのだろう、こちらの喋りが続いてる中、かぶせるように返ってきた。


 「あんだって?とんでもねぇ、あたしゃ神様だよ!」


 ん?よく見たら老婆では無いようだ。先日、例の研究所から漏れたウイルスで亡くなられた、お笑い芸人界のレジェンド様ではなかろうか?となると、俺はゲームのし過ぎで、死んだ。っていうことなのだろうか。嫌すぎる。


 なににせよ、状況を把握するためには、少なくとも俺より前からココにいたであろうレジェンド様から情報を引き出さねばならない。とはいえ、ウイルスの専門家を国会に呼びつけて、恫喝した野党の幹事長のような事はできない。俺世代のおっさんは100%、このレジェンド様のファンと言っても過言ではないからだ。


 当然、俺も大ファンだ。子供の頃、家に帰るたびに、ぐらつく乳歯に紐をつけて、頑張って抜こうとするものの、なかなかできずに数日がたったある土曜日。レジェンド様が、お仲間5人で集合されているテレビ番組をみていて、レジェンド様のギャグが決まった瞬間、机をバンバン叩いて笑ってしまい、手を振り回した勢いで、乳歯が抜けた思い出がある。正直、レジェンド様御一行が、土曜日ではなく、水曜日に全員集合してくれていれば、俺の歯並びはきれいになっていたものと思われる。説明になっていたかどうかは分からないが、レジェンド様が、俺世代のおっさんのすべての元になっていることは、ご理解いただけたと信じている。

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