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君へのラブレター(仮)  作者: 時雨
恋が実るまで
16/17


 バスが武蔵小金井駅に到着して、何事もなかったかのように、2人で降りる。そして最後の目的、祖母へ敬老の日のプレゼントを一緒に選んでもらうことであった。半ば忘れかけていたのは秘密。近くのデパートに2人で入り、婦人服売り場の2階へあがった。もう買いたいものは決まっている。帽子だ。ただ、どんな色・デザインがいいか、彼の意見を聞いてみたいと思った。2人で帽子コーナーを見ていると、2人して同じ帽子に目を付けた。薄紫色で、グレーの花飾りがサイドにちょこんとついている。私は自分の頭にかぶせてみると、彼は目を輝かせて「いいじゃん!」と言ってくれた。私も鏡にうつった様子を見て、なかなかいい感じと思っていたから、なんだか心が通じ合っているような気がしてうれしく思えた。


「これに決めた!」


いつも優柔不断の私だから、もっと時間がかかるものだと思っていたけれど、2人で選んで即決できた。これならきっと祖母も喜んでくれるだろう。すぐに帽子の会計を済ませて、お待たせと小走りで黒田くんのもとへ駆け寄った。彼は私の荷物を見て、「持とうか」と聞いてくれたが、つい「大丈夫だよ」と返してしまった。長女のくせで基本的に男性であろうと人に頼ることをしなかったので、それが裏目に出てしまって女性アピールができなかった。(のちにそのことを友人に話したら、それは頼らないとだめ、と叱られてしまった)


「今日はありがとう。すっごく楽しかったよ」

「俺も楽しかった。」

「また、次も誘っていいかな」

「ああ。」


ぶっきらぼうに返事をする彼だが、不思議といやではなかった。冷たくされたわけではないことが彼の態度でわかるから。彼は明るく返事をするタイプではないことも知っていた。いつも通りの彼なだけだ。だからそんな短い返事でも、私は気にもせず、ただ素直に次のデートはどこにしようかと、うきうきしていたのだ。しかも次のデートをするときは3回目になる。3回目のデートというのは平均的に、告白をする回のデートである。これは合コンや婚活パーティーで出会った人たちの例なので、私たちはそれよりも前に職場で仲が良くなっているので、本当ならばもうとっくに告白してもよい時期なのだ。だけど焦ってはいけない。やはり告白するなら3回目だ。告白と言っても、絶対に黒田くんは私の気持ちを知っているようなので、素直に付き合ってくださいとだけ、言えばよいか……、と一人になった帰り道に、そんなことを延々と考えていた。



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