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君へのラブレター(仮)  作者: 時雨
恋が実るまで
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『恋が実るまで』



 あれから数日が経ち、会社の部署で送別会をやろうという話になった。同じチームの先輩が2人やめるそうなので、それに向けて送別会を企画しようということである。当然黒田くんも同じチームなので、送別会に参加することになる。奈江は別のチームなので参加はしないようだ。ただ、このころ、奈江に一事件が起きていた。


「海ー!ちょっと話があるんだけど、いいかな?」

「いいよ。」


奈江から改まって話があると言ってきたが、何の話だろう。まさか気が変わって黒田くんとデートしてみようかな、とでも言うのだろうか……。完全に油断していた。心の準備がまだ全然できていない。私が彼を好きだということを打ち明けたほうがよいだろうか……。


「あのね、すごく言いづらいんだけど……」

「うん」

「部長に告白されたの……」

「っは?」


はたまた拍子抜けしてしまった。部長といえば、うちの部署を統括するリーダー的存在。年齢はたぶん45歳くらい、年齢の割にはおしゃれで話をするとまだ若さがあるような印象だし、仕事中も気さくに話しかけてくれるので、私は部長のことを嫌いではなかったし、上司としてはとても働きやすい人だと思っていた。結構みんな仲が良かったし、たまに部長のおごりでご飯もごちそうしてくれた。ほかの社員よりも親しみがあった。だからこそ、そんな部長からの告白を受けたという話を聞いて、理解が追い付くのに時間がかかった。奈江はまだ27歳独身で彼氏もいない、一方部長は中年おじさんで妻子もいる。それでは完全に不倫になってしまうではないか。いやいや奈江をそんな道に引き入れることは絶対許されない。だが奈江が入社したばかりのころ、部長のことを「声が素敵」とべた褒めしていて、結構気になっていた時期があったのも事実。一見両思いなのかと思ったりもしたが、奈江は追いかけられた途端冷めるタイプなので、今は部長のことを生理的に受け付けなくなっているであろう。奈江は今にも泣きだしそうな顔をしているもの。

確かに、思い当たることはあった。部長は奈江のことをよくからかったり、ちょっかい出したり、絡む回数が圧倒的に多かったので、単純に気に入っているのだろうなとは思っていたが、まさか本気だとは誰もが思わなかっただろう。


「それで、どうしたの?」

「もちろん断ったよ。でも、付き合うことはできなくてもいいから、食事とか行かない?ってメールで誘われたりして……」

「まじか……。上司だし、今まで普通に仲良くしていたから断りにくい気持ちはわかるけど、ここはやっぱり上司と部下であって、それ以上でもそれ以下でもないし、プライベートで会うつもりはないこと、ちゃんと伝えたほうがいいと思うよ。」

「そうだよね……!海ありがとう。海に話せてよかった。誰にも言えなくてずっと悩んでたから。」

「そういうことは一人で悩まないで私に話してよ」


なんとか私のアドバイスを受け取り、心を落ち着かせたようである。職場恋愛とはよくある話だが、まさか自分の一番仲が良い人たちがそういう対象になるとは……。不倫なんて絶対にしてはいけない。あんなのはドラマだけ許される世界だ。そんな話をして私たちは帰りに寄り道でもしようかと言って、デパートに寄って帰った。

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